沈黙のピアノ
カナはピアノが大好きだった。が、ある日突然、ピアノの音が聞こえなくなった。耳は聞こえる。ピアノも壊れていない。が、鍵盤を叩いても音が出ない。
街の調律師に聞いても原因は不明。カナは街を歩き、公園で異変に気付く。子どもたちの笑い声、鳥のさえずり、あらゆる音が消えていたのだ。
時計台に目を向けると、針は止まり、音楽も聞こえない。カナは時計台の中へ入った。
そこには見慣れない機械があり、そこから声が聞こえた。
「私はノイズ。この世界から不要な音を消し去る者だ。」
ノイズは音楽を騒音とみなし消していたのだ。
「音楽は騒音なんかじゃない!」
カナは反論した。
「音楽は人の心を癒し、勇気を与える。喜びや悲しみ、様々な感情を表現する大切なものなんだ!」
カナの言葉に、ノイズは姿を消し、時計台から美しいメロディーが流れ始めた。街に音楽が戻ってきたのだ。
カナは再びピアノの前に座り、鍵盤を叩いた。美しい音が響き渡る。
カナは心から音楽を奏でた。
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