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完璧なプロンプト:プロンプトエンジニアリングのチートシート
はじめに:なぜプロンプトエンジニアリングが重要なのか
1.1 「指示」の時代へ
GPT-3のような大規模言語モデル(LLM)が初期に注目を集めた頃、多くのユーザーはシンプルな質問やコマンドを入力するだけでした。しかし、これらのモデルがより高い能力を持つようになるにつれ、入力(プロンプト)の明確さ・構造・文脈が結果を大きく左右することが明らかになりました。
あいまいさの削減:モデルが何を求められているのか明確にすることで、的外れな回答を減らす
精度と関連性の向上:適切な情報や制約を与えると、より正確かつ有用な回答を得やすい
創造力や専門領域のポテンシャル発揮:必要なコンテキストや条件を示すことで、モデルが得意とする知識を最大限に引き出せる
1.2 プロンプトエンジニアリングの進化
当初、プロンプトエンジニアリングは“試行錯誤で上手い質問を見つける”といった感覚的なスキルでした。しかし時間が経つにつれ、明確なパターンやベストプラクティスが見いだされ、1つの手法として認知されるようになっています。主要なポイントとしては、
役割付与:「あなたは○○の専門家です」とモデルに設定する手法
コンテキスト設定:必要な背景情報や状況を提示する
明示的指示:トーンや回答形式などを具体的に指定する
段階的な精密化:回答を得た後でプロンプトを調整し、結果を洗練していく
2. プロンプトエンジニアリングの核心原則
以下に示すのは、「完璧なプロンプト」を構築するうえで役立つ、チートシート的な原則です。
2.1 原則1:明確さと具体性
あいまいさを排除:解いてほしい問題や聞きたい内容をはっきり示す。数学問題なら数式や最終的な解答形式を明示するとよい。
具体的な言葉の使用:「もの」「いろいろ」ではなく、より正確な用語や指示を使う。たとえば「オンラインヨガスタジオを対象とした30~50代向けのマーケティング戦略」といった形にする。
例
「あなたはファイナンシャルアドバイザーです。中リスクの範囲で、3年スパンの投資プランを、テック株と不動産にフォーカスして bullet ポイント形式で提案してください。」
2.2 原則2:コンテキストが重要
背景情報の提示:扱うテーマが複雑または専門的であれば、関連データや状況設定を伝えておく。
関連情報に絞る:不要な情報を詰め込みすぎると、モデルが混乱する可能性がある。
例
「次の5年間、サブスクリプション型SaaSのデータを分析するイメージで、離脱率85%、ユーザー獲得コスト30ドル、月1万ドルのマーケティング予算があると仮定してください…」
2.3 原則3:役割の設定
“専門家になってください” と指示:モデルに「弁護士として」「教師として」「データサイエンティストとして」行動させると、該当領域の知識が優先される。
複数の役割切り替え:最初は金融アナリスト、その後心理学者、といった流れでモデルの視点を変えることも可能。
例
「あなたはベイズ統計に詳しいデータサイエンティストです。以下のデータセットを使って、ユーザー離脱率を推定するためのベイジアンアプローチを説明してください。」
2.4 原則4:出力形式の指定
形式を明示:bullet ポイント、表形式、ステップバイステップ手順など、期待する回答のスタイルを具体的に伝える。
長さやスタイルの制限:「100語以内でまとめて」「1段落で簡潔に」なども有効。
例
「5つのアクション項目を番号付き箇条書きで示してください。それぞれのキー要素を強調してください。」
2.5 原則5:反復的な修正
追質問や指示の修正:結果が期待と違う場合、「トーンをもっとカジュアルに」「文章を短く」「専門用語を使って」と再度指示する。
Chain-of-Thoughtアプローチ:モデルが推論過程を(可能な範囲で)示すようにし、ステップごとに誘導することも一つの方法。
例
「シンガポールに支店を設立するメリットとデメリットを教えて」
「経営者向けに、コスト面と法的な観点を強調した形で再構築してください。」
2.6 原則6:限界を知る
事実確認の重要性:モデルは説得力ある誤答(いわゆる“幻覚”)をする場合があるため、常に根拠をチェックする。
複雑すぎる要求は分割:1つのプロンプトに多くの要素を詰め込みすぎると混乱するため、小分けにして指示したほうが明瞭。
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