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ミスター「ゼロ」#1 『前夜』

みなさん、こんにちは。
結果的にミャンマーに魅せられた男、オリバーの安谷です。
この物語は、株式会社オリバーインターナショナルで勤務するわたくし安谷が、ミャンマーから特定技能実習生を日本に招聘する業務で、生まれて初めての海外生活で七転八倒するお話です。
海外戦闘力「ゼロ」安谷の奮闘を包み隠さずお伝えする事で、海外赴任を控えている方、外国人とのコミュニケーションに自信のない方、全てに自信がないと落ち込んでいる方ななどに、謎に勇気をお届けできたらいいなと思っております。


朝の爽やかオリバー安谷(※写真はイメージです)

海外旅行経験「ゼロ」 語学力「ゼロ」 度胸「ゼロ」

2023年某日、午前7時。
まだ誰もいない朝の静かなオフィス。

僕は、のんびりスターバックスラテ(ノンファット)を嗜みながら、仕事ができるサラリーマン風の雰囲気に、一人酔いながら軽快にメールチェックをしていた。
今日もいっちょやりますか!!っというポジティブな姿勢で、今夜幹事を務める合コンの段取り確認をしていた。

というのも、30歳を超えてから後輩たちから飲み会のお誘いが多くなり、飲み会(合コン)セッティングを行う機会が増えていた。
慕われているというより、うまく使われている気配を感じながらも、
「後輩の為に人肌脱いで段取りしてあげるか!」(=既婚者だと逆にモテると雑誌に書いてあった)という気持ちから、株式トレーダーのような細部を見逃さない鋭い視線を、合コン相手のLINEメッセージに送っていた。

「今週も完璧に仕事(合コン)をこなすぞ!」

朝からレッドブルとリポビタンDを混ぜて飲んだかのような、謎の湧き上がるエナジーと使命感に燃えたいたその時、スマホがブルブルッとバイブして着信を知らせた。

「精神集中を遮断するのは誰だ〜!?」と、心の中で毒づきながらスマホ画面を見ると(社長)の表示。

普段社長はチャットでの連絡が多く、電話は珍しかったので「もしかして、俺何かやらかしたか??」とドキドキしながら、慌てて通話ボタンを押した。

安谷「あ!社長、お疲れ様です。(トーン高め+フォルテッシモ)」
社長「安谷君、お疲れさま。今忙しい?」
安谷「いえ!大丈夫です。いかがされましたか?」
社長「安谷君、半年前の会食の時に海外生活興味あるって話していたよね?覚えてる?」
安谷「えっ そうでしたっけ(忘れかけ)あーー確かに確かに!(適当)」
社長「だよね。来月からミャンマーに行くこととかできるかな?」
安谷「あーーはいっ・・・えっ?・・・・出張ですか?」
社長「出張というか、どちらかというと駐在だね」
安谷「駐在?・・・・ミャンマーで仕事をするってことですか?」
社長「そうそう。ちょっと検討してもらっていいかな?」
安谷「なるほど・・・・・・・!!??!!!??」

以降のやり取りは諸事情で割愛させて頂くが、
海外旅行経験「ゼロ」 語学力「ゼロ」の安谷。
異国の地において赤子同然、いやっ!赤ちゃんは圧倒的な可愛さがあるので、赤子以下の戦闘力の安谷に、まさかまさかのミャンマー赴任辞令は、
社長の悪ふざけではなくリアル本気(マジ)のオファーだった。

絶望感に苛まれるオリバー安谷(※写真はイメージです)

妻に相談してみよう

辞令から約1週間。
業務を上の空でこなしながら、混乱した頭で自分の置かれている状況を整理しよう試みたが「明日真剣に考えよう」で1週間、具体的な動きも何もできず、何一つ決断できずにいた。

この段階では、辞退ことも十分にできる状態ではあったが、時間経過とともに「安谷ミャンマーに赴任する報」は、すでに多くの従業員が知るところになり、なんとなく後に引けない空気が社内に漂い始めていた。
また、海外赴任を羨ましがる人もおり、海外赴任辞令を受けても全く動じない安谷を演じる気持ちよさもあった。

社長「決心はついたかな?」
安谷「もちろんです!いやー今からワクワクしますよー」

同僚A「ミャンマー行くんだって?すごいじゃん!英語とか喋れるの?」
同僚B「海外駐在かっこいいよねー 憧れるよー」
安谷「結構やりがいありそうだしさー 語学力なくてもパッションで何となかるっしょ!」

と、シングルロールのトイレットペーパーよりも薄い覇気で余裕感を演出していたが、徐々に自分の中で「海外赴任」の現実と自分の能力との差ギャップが、アイフォン15Proのカメラ解像度よりも上がってきた。

結果→「俺マジ無理じゃね?」

「俺、本当に海外行くのか?」
「しかもミャンマー?」
「そもそもミャンマーってどんな国なの?っていうか何語なの?」
「挨拶がミンガラバー? 未知感ありすぎるし覚えられる気がしないよ」
「ってか危なそうなニュースばかりだけど、本当に住んで大丈夫なのか?」
「なんで社長に、海外マジ興味あるっすっ!言ったのかな」
「もとい、海外経験ゼロの人間を海外に赴任させるってどうなの?」
「今から辞めますって言っても大丈夫かな? いやっダメかな?」

っと、長時間に及んだ『安谷脳内役員会議』の結論

「妻に相談してみよう」

心配して妻が泣いてとめてくれる事を完全に期待しながら、サラリーマン人生最速の電車乗り継ぎを行い、千の風になって帰宅路を急いだ。
車窓に映る自分の焦り顔を眺めながら、人生激動前夜の予感を感じて少し吐き気を感じていた。

つづく

次回 ミスター「ゼロ」#2 『夜空ノムコウ』


安谷プロフィール
36歳 男性
オリバーインターナショナルエージェンシー勤務
海外経験ゼロ 埼玉県出身 趣味はアニメ鑑賞