今日は数学のお話
今日は以前mixiに載せた記事をこちらにアップします。整数論のお話で、すべての0以上の整数は4つの自然数の平方の和で書けることを証明します。(自然数に0も含めることにします。)
ちょっと例をみてみましょう。例えば14という数を4つの自然数の平方の和であらわすことを考えてみましょう。
14=3×3+2×2+1×1+0×0
で確かに成り立ちます。以後3×3(つまり3の2乗)を3^2などと書くことにします。
それでは本論に入りましょう。
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任意の0以上の整数は4つの自然数の平方の和でかける。例を見てみましょう。
7 = 2^2 + 1^2 + 1^2 +1^2
15=3^2 + 2^2 + 1^2 + 1^2
5=2^2 +1^2
(0^2は省略)
等々です。これを証明したいと思います。
今回は次の補題と系を準備します。
補題
Sを四つの平方数の和でかけている自然数全体とする。
するとSは乗法に関して閉じている。
すなわち
a , b ∈S ならば
ab ∈S
証明
(x1^2+x2^2+x3^2+x4^2)(y1^2+y2^2+y3^3+y4^2)
=(x1 y1+x2 y2+x3 y3+x4 y4)^2 + (x1 y2-x2 y1+x3 y4-x4 y3)^2
+(x1 y3-x2 y4-x3 y1+x4 y2)^2 + (x1 y4+x2 y3-x3 y2-x4 y1)^2
であるからである。
(これを導くには2次拡大C/Rのノルムを使うのだが、いまは述べない。代数を処理できるコンピューターソフトを持っている方は検算してみるとよいかもしれない。)
例
(1^2 + 2^2 + 3^2 + 4^2)(5^2 + 6^2 + 7^2 + 8^2)=30*174=5220
である。
一方、
70^2 + 8^2 + 0^2 + 16^2 = 5220
であるので確かに補題が確認できる。
そして次の系が従う。
系 任意の素数が4つの自然数の平方の和でかけるならば、任意の自然数は4つの自然数の平方の和でかける。
証明 任意の自然数は素因数分解をもつからである。
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さて上で、任意の素数pが4つの平方数の和で書けることを示せば十分であるということを示した。従って今後これを目標とする。
2=1^2+1^2
なので、p=2のときは示された。よって以後pは奇素数とする。
ここから先は平方剰余の相互法則のときに定義したルジャンドルの記号(a/p)を用いる。
(a/p)=1 ⇔ x^2≡a (mod p)が解をもつ
(a/p)=-1 ⇔ x^2≡a (mod p)が解をもたない
という定義であった。詳しいことは平方剰余の記事をみてほしい。
さて
(-1/p)=1 のとき、 すなわちpが4で割って1余る素数のときは
x^2+1 = ph --(1)
と書ける。(hは自然数である。)
(-1/p)=-1のとき、 すなわちpが4でわって3余る素数のときは
(1/p)=1 であり( x^2≡1 (mod p) は自明な解 x=1 をもつから。)
(p-1/p)=(-1/p)=-1 であるから
1からp-2の間の自然数kで
(k/p)=1 , (k+1/p)=-1 となるものが必ず存在する。
(-k-1/p)=(-1/p)(k+1/p)=(-1)(-1)=1
であるから
x^2≡-k-1 (mod p)は解をもつ。
以上より
x1^2≡k (mod p)
x2^2≡-k-1 (mod p)
をみたすx1, x2 が存在する。この合同式を辺々足しあわせることで、
x1^2+x2^2≡-1 (mod p)
となり、よって
x1^2+x2^2+1=ph ---(2)
と書けることがわかった。
(1),(2)ともにh=1なら証明が完了するのであるが、一般にh>1である。
そこで次の定理が要となるのである。
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定理1
x1^2+x2^2+x3^2+x4^2=ph (h>1)という自然数による表示があれば
ある自然数
t1, t2, t3, t4, h'
(0<h'<h)
であって
t1^2+t2^2+t3^2+t4^2 = ph'
となるものが必ず存在する
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この定理が証明できたとすれば、全ての証明が終わることがわかる。
なぜならこの定理を有限回繰り返して使うことにより
hをどんどん小さくしていって、ついには h=1 にいたるからである。
(無限ループに陥らないところが、大切である。)
次回は、この定理1を証明しよう。
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定理1の証明.
まずx1^2+x2^2+x3^3+x4^2=ph (h>1) ---(3)という表示がある.
x1,x2,x3,x4をhで割って, 絶対値において最小の剰余をとる。
(例えば通常は5を3で割った余りは2であるが, 5を3でわった余りの絶対値を最小にするなら, あまり-1である。これを絶対値において最小の剰余という。)
x1≡y1, x2≡y2, x3≡y3, x4≡y4 (mod h), |y1|≦h/2 (y2以降も同様) ---(4)
とする. すると
y1^2+y2^2+y3^2+y4^2≡x1^2+x2^2+x3^2+x4^2≡0 (mod h)
よって
y1^2+y2^2+y3^2+y4^2=hh'とおいて
(x1^2+x2^2+x3^2+x4^2)(y1^2+y2^2+y3^3+y4^2)
=(x1 y1+x2 y2+x3 y3+x4 y4)^2 + (x1 y2-x2 y1+x3 y4-x4 y3)^2
+(x1 y3-x2 y4-x3 y1+x4 y2)^2 + (x1 y4+x2 y3-x3 y2-x4 y1)^2
に代入すれば
z1^2+z2^2+z3^3+z4^2=ph^2h' ---(5)
という表示を得る.
z1=x1y3-x2y4-x3y1+x4y2≡x1^2+x2^2+x3^2+x4^2≡0 (mod h)
z2=x1y2-x2y1+x3y4-x4y3≡x1x2-x2x1+x3x4-x4x3≡0 (mod h)
z3=x1y3-x2y4-x3y1+x4y2≡x1x3-x2x4-x3x1+x4y2≡0 (mod h)
z4=x1y4+x2y3-x3y2-x4y1≡x1x4+x2x3-x3x2-x4x1≡0 (mod h)
なので
z1=h t1, z2=h t2, z3=h t3, z4=h t4
とおけば
t1^2+t2^2+t3^2+t4^2=ph'
となる. ここで(4)より
hh'=y1^2+y2^2+y3^2+y4^2≦4(h/2)^2
よってh'≦hとなる.
補題
h' < h である.
何故なら、もしh'=hならば y_i=h/2 (i=1,2,3,4) となり, hは偶数で
x_i はh/2の奇数倍でなければならない.
x_i=(2m_i+1)(h/2)
とすれば(3)に代入して
Σ(2m_i+1)^2*(h/4)=p
を得る. Σ(2m_i+1)^2≡0 (mod 4)でhが偶数であるからpは偶数でなければならないが
いまpは奇素数なので矛盾が生じる.
よってh'< h でなければならない.
Q.E.D.