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中世後期からルネサンス初期 花開く舞台芸術の足跡

こんにちは、芸能事務所トゥインクル・コーポレーション所属 パントマイムアーティストの織辺真智子です。

11世紀から16世紀にかけてのヨーロッパは、中世後期からルネサンス期にかけての時代であり、政治、宗教、社会のあらゆる面で劇的な変化を遂げました。芸術の世界でも、それまでの中世的な様式から近世へと大きな転換が見られました。特に演劇と舞踊の分野では、宗教色の濃い表現から世俗的な表現へ、民衆的な芸能から宮廷文化へと移行していきます。

本記事では、当時のヨーロッパにおける芸能の変遷を、演劇と舞踊を中心にざっくりと見ていきましょう。

中世後期の激動

11世紀から15世紀にかけて、ヨーロッパでは政治的・宗教的な対立が続きました。スペインではキリスト教勢力とイスラム勢力の抗争、十字軍によるシリア・パレスチナ方面での戦いなどが繰り広げられました。東ヨーロッパでは、チュートン騎士団によるバルト海沿岸の征服が行われ、バルト諸民族のキリスト教化が進められました。

14世紀末には、カトリック教会の分裂により、ローマとアビニョンに二人の教皇が並立する事態となり、宗教的な統一が揺らぎました。15世紀に入ると、フランス、イングランド、スペインで強力な君主が台頭し、百年戦争やオスマン帝国の台頭など、ヨーロッパの政治情勢は大きく変化していったのです。

演劇の世俗化 - 教会から広場へ

中世初期のヨーロッパでは、演劇は主に教会で上演される宗教劇が中心でした。聖書の物語や聖人の生涯を題材とした神秘劇や聖史劇が、ラテン語で上演されていました。しかし12世紀頃から、これらの宗教劇は教会の外でも上演されるようになり、徐々に俗語への翻訳が進んでいきました。

13世紀には、世俗色の強い演劇が台頭してきます。人間の一生や道徳的選択を寓意的に描く道徳劇や、笑いを誘う道化芝居や茶番劇が人気を博しました。14世紀以降は、職人ギルドによる大規模な神秘劇の上演も盛んになり、演劇は民衆の娯楽として定着していきます。

15世紀末になると、宗教改革の影響で各地で聖史劇の上演が禁止されるようになり、国際的な演劇文化は衰退しました。その一方で、演劇は宗教的な主題から世俗的な主題へと移行し、古代ギリシャ・ローマ演劇への関心の高まりとともに、新たな表現の可能性が開かれていったのです。

コメディア・デラルテとバレエの革新

16世紀半ばから17世紀にかけて、イタリアで生まれたコメディア・デラルテは、即興演技と典型的な登場人物で知られる喜劇で、ヨーロッパ中で人気を博しました。それまでの宗教色の濃い演劇とは異なり、世俗的で大衆的な娯楽性を追求したコメディア・デラルテは、職業俳優の出現と女優の登場を促し、演技の洗練化に貢献しました。その革新性は、モリエールやシェイクスピアをはじめとする劇作家たちにも大きな影響を与えました。

一方、バレエの起源は15世紀イタリア・ルネサンス期の宮廷舞踊に遡ります。16世紀半ばにはフランス宮廷に伝わり、1581年の「バレ・コミック・ド・ラ・レーヌ」の上演で近代バレエの幕が開けました。ルイ14世の時代には、王自らが出演するなど絶大な人気を誇り、高度な舞踊技術と表現力を兼ね備えた総合芸術へと発展しました。バレエは、古代から続くパントマイムの伝統も取り入れ、感情表現の豊かさを増していったのです。

舞踊芸術の宮廷化

中世前期のヨーロッパでは、民衆的な舞踊が広く行われていました。奇祭や収穫祭など、人々の生活に根差した場で、輪舞や列舞などの集団舞踊が、身分の違いを問わず楽しまれていました。

しかし14世紀以降、宮廷を中心に洗練された舞踊文化が花開いていきます。特にイタリア・ルネサンス期の宮廷では、バッサダンスに代表される優雅な舞踊が発展し、ヨーロッパ各地の宮廷に広まっていきました。舞踏教師による指導のもと、貴族たちは高度な舞踊技術を習得するようになります。

15〜16世紀には、印刷技術の発達により舞踊の技法書が出版され、舞踊はより体系化されていきました。パヴァーヌやガリアルドなどの宮廷舞踊は、やがて民衆の間にも浸透していきます。宮廷における盛大な舞踏会は、社交と政治的駆け引きの重要な場となりました。

演劇は民衆へ、舞踊は宮廷へ

11世紀から16世紀にかけてのヨーロッパでは、中世後期からルネサンス期にかけて、政治・宗教・社会の大変動とともに、芸能の世界でも大きな変革が起こりました。演劇は教会から広場へ、そして宗教的主題から世俗的主題へと移行し、民衆の娯楽として定着しました。舞踊は民衆的な場から宮廷へと移行し、洗練された芸術形式へと発展しました。中世からルネサンスへの移行期に起こった芸能の変革は、ヨーロッパ文化の多様性と創造性を示す、輝かしい証と言えるでしょう。

コメディア・デラルテやバレエといった新しい芸能は、その後の西洋芸術に大きな影響を与え、現代にまで続く伝統を築き上げました。次の記事では、この新しい芸術たちについて、それぞれ、もう少し詳しくご紹介できたらと思います。 お楽しみに!

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