愛着

嗚呼

雪平鍋



あの暑い夏の

ホームセンターで五百円

出逢った私の雪平鍋



独り暮らしのあの部屋で

インスタントラーメンを作り


うどん素麺冷や麦きしめん

そりゃもうなんでも茹で


冬には土鍋扱い

時にはこじゃれてチャイを煮立て



最高か



どうしようもない日も


いつも私の片手にあって


一緒だった


幾度の引っ越しにも強制連行




此度少し値の張るものを買って

新旧交代を試みるも



失敗



誰が捨てられよう



私の全てを見てきた貴方を誰が



断捨離てなに



濃い愛着

もうそれは私の肌の一部で



嗚呼

雪平鍋



取れそうで取れない

その取っ手のグラグラ感

その取っ手にしかないフィット感



磨き続けて傷だらけの安物ボディ



愛しき分身




その古ぼけた佇まいは

私そのもの




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