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同じ名前のまだ会えてない人

2020年1月、その2カ月後によもや海外に行けなくなる日が来るとは思わなかったあの時、ここ数年の年間行事になっていたニュージーランド旅行で、その時は、北島をほぼ1週するドライブ旅行をしていた。

オークランドから高速を飛ばして1時間ほど北上したところにあるMatakanaという町のローカルマーケットをブラブラして(日本のガイドブックにも結構載ってたりする規模感もオシャレ感も日本人好みだと思う)、宿へ向かう途中で、派手なピンクのジェラート屋さんの看板に引き寄せられてちょっと休憩。

マタカナのローカルマルシェ
ピンクのジェラートの看板が目立つ。行く人がいたら、ここはおすすめ。

ところが、大きな入口を入ると、ユニークなメガネをかけたカラフルな女性ふたりが編み物をしている。あとでよく見たら、The Knitting Truckという看板も出ていてどうやらそっちの方に先に入ってしまったらしかった。ジェラート屋さんはその奥にあったんだけど、入口もちゃんと別にあったのでした。

それはさておき、特に編み物に興味があったわけではないけれど、だから、私がぽかーんとした顔をしていたんだろうと思うけれど、話しかけられて、編み物はいいわよ、バッグにいれておけば、バスの中でもどこだってヒマを潰せるからね、と勧められつつ、そこにディスプレイされていたリネン生地に小さな花の刺繍のはいったワンピースに目が留まった。ゆったりとしたフリーサイズだったので、試着するまでもなくサイズは問題なさそうだったし、sea salt colour (海の塩色)という名前がついたその生地の色も素敵で、普段は刺繍の入った服なんて買ったこともないのに、刺繍のモチーフや色、配置も絶妙で、即決で購入した。

レジに持っていくと、そこは編み物のおばさまのお店なので預かって販売しているとのことで、a.Rhaode Tailorという屋号で、地元に住んでいる日本人でアユミという名前の女性が作っているのよ、と教えてくれた。私もアユミという名前なんだけど、と言うと盛り上がって、じゃ、アユミに日本から来たアユミが買って行ったわよって言っとく、と言いながら、アユミさんのメールアドレスも教えてくれた。

なぜだかその日の夜、見ず知らずのアユミさんにワンピースを買いました、とメールをしたら、その夜のうちに返事が返ってきた。ニュージーランドの方と結婚してここに住んでること、自分のデザインで服を作っていることなんかを書いてくれた。で、今度ニュージーランドに来た時は、アユミさんの旦那さんが船を出してマグロを釣ってくるから一緒に食べましょう!という、ニュージーランドの海で釣ってきたマグロをビーチでバーベキューでローカルの人たちと食べるなんて(ちょっと妄想入ってました)旅としては最高じゃない、と思って、行きます!お邪魔します!と返信。

Snells Beach  幻のマグロはここの海に…。

2021年1月(日本の冬。ニュージーランドの夏)は、マグロだわと思っていたら…行けないまま年月は過ぎての今。物事にはタイミングというものがある。マグロは幻と化したままなのか、果たしてチャンスは来るのか。

今となっては、わざわざ旅行計画をそのために立てることになってしまい、よく考えなくてもそんなに知り合いでもないし、アユミさんは覚えていないかもしれないし、でも、クローゼットのワンピースを見るたびに、次の年に彼女に会えていたらと思わずにはいられない。会ったこともないし、声をきいたこともないのに、思い出して会いたいと思う人がいる。



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