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もしもあの時あの選択をしていれば・・・選ばなかった道は今も続いている。

もしもあの時、宝くじを買っておけば・・・。
というのはただの妄想なのでそれは脇に置いておくとして、ではなくて、もしもあの時、OOOを選んでいたら今頃どうなっていただろう、という人生の選択の場面で選ばなかった選択肢のこと。

起こらなかったことは考えても本当に仕方がないのだろうか。選んだ今が思うような結果ではないから(少なくともそう思えてしまうから)、ただの恨み節か言い訳にしかならないこともあるだろうけれど、そうとは言い切れない場合もある。

随分昔、ある人が語ってくれた話が忘れられない。
彼女には20代の中頃、付き合っている人がいて結婚を申し込まれていたのだけれど、本当に好きな人が別にいた。結婚を申し込んでくれた人は、とても穏やかで多分経済的にも不自由なくずっと暮らせるだろう優しい人だった。別の人には妻がいて到底現実的な関係ではなかったけれど、彼はそれはそれは彼女のことを情熱的に愛してくれていて、彼女は身も心もその人にのめり込んでいた。そして彼女は、プロポーズを断り、先の知れぬ関係でもいいと続ける方を選んだ。でも、愛情の限りを尽くした相手が彼女の気持ちに応えることはなく、ある日ようやく彼女の方から関係を絶った。未練を残したまま。

彼女が語ってくれた時、その出来事から30年以上が経っていた。30年以上後の彼女は、そのどちらでもない人と20年以上も結婚生活を続けていた。社会人になる息子さんと都内で暮らしていて、でも、ご主人とは長く別居をしていた。彼女自身は、結婚してからかなり重い病気にかかったり、大きなケガをしたりで辛い時期をかなり過ごしたようで、ご主人は、山梨だか長野だかに長いこと単身で住んでいたが、からだを悪くしていたようで、彼女は戻ってきてまた一緒に暮らそうとずっと話しかけていたのだ。彼女曰く、結婚生活には3人いた、と。3人目は20代の時にのめり込んだその人。ご主人はその見えない誰かに気づいていた。

彼女は言う。あの時、おだやかな人と結婚をするべきだった、今ならそれが分かる、と。ご主人に戻ってきて欲しい、一緒に暮らしたいと思っているという彼女は、あの時選ばなかったもの、選んでいたら持てていたかもしれない穏やかな人生を生き直そうとしているかのようだった。

選ばなかった道が消えてなくなるわけではない。ずっと平行して走っていたのかもしれない。そしてある時、選んでいた道に合流する、形を変えて。選ばなかった道は、あの時選ばなかっただけで、その人の本当の道だったとしたら選ばれにやってくる、または、タイミングがくれば自分がその地点に到着する。電車に乗って目的地の駅で降りるように。

それまで出会った人も筋書きも、あくまで彼女の人生という劇場の中の登場人物と脚本でしかないのだろう。誰だって構わない。彼女の人生がどんなものになるのか、それだけが本質。

選ばなかった道は今も続いているし、彼女がかつて愛した人が主役となる道もどこかで続いている。もしもあの時、はどこかで続いているのが人生のように思える。

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