オファー
おいもをチンしていたときのことです。
ソファで待機していると、キッチンの方からバチッ、バチッと不穏な音が。
慌てて電子レンジを覗くと、青い火花を散らしながら暴れるおいも。
うそでしょ何これ、怖い、怖すぎる!ママーッ!!
なりふり構わず電子レンジのコンセントを抜いた。
訪れた静寂に、一瞬自分は死んだのだと思った。
ただ料理をしていただけで、こんなにも恐ろしい目に遭うことがあるだろうか。
こんな悪魔とは一緒に暮らせない。
私は夕方ゴミを出したばかりのゴミ置き場へ急ぎ、
電子レンジ、否、悪魔を封印した。
早く回収されてほしい、もう顔も見たくない。
その夜は目を閉じるとあの火花散る音と青い光が蘇って、あまり眠れなかったのを覚えている。
教育について様々な議論がなされているが、電子レンジにアルミホイルを入れてはいけないということは、小さいうちからもっと強く教えておくべきだと思う。
この一人暮らし新人時代のかわいそうな出来事を話すと、友人らは何やらざわついた。
アルミホイルの件はともかく、電子レンジが燃えるゴミじゃないことぐらい分かるのでは
マンションに一人そういう人が住んでいるとあらゆる規制が厳しくなり迷惑
バカ
最低
低学歴
おやおや
さっきまで悪魔に襲われた私に対し、かわいそうにと耳を傾けてくれていた友人らの表情は、いつになく険しかった。
ひとりは立て続けに
「乾電池はどうやって捨ててる?」
と、私が答えに困るであろう意地悪質問を畳みかけてきた。
私は考えた。
燃えないのか?
しかし、もし間違った捨て方をしてたとしてもあんなに小さくて、せいぜいエアコンのリモコン、1回きりの話。
今はeneloopユーザーだし、そこまで責められる話じゃないだろう。
私は堂々と「燃えるゴミ」と答えた。
友人らの罵声は加速した。
電池を分からないように捨てるのが一番危ない
ゴミ置き場やゴミ収集車が火事になったかも
どうせ絶縁しないといけないことも知らないだろう
バカ
最低
失敗作
みんなどうしたの、さっきまであんなに楽しくおしゃべりしてたのに。
分かったよ、私が悪かった、分かったから、もうやめてよ、もう、やめて...やめて!!
ウワーッ!!
私が叫ぶと、友人らは青い火花を散らしながら、バチバチと音を立てて暴れながら消えてしまった。
ここだけの話、その様子がインターネット上で拡散されそれを見たアベンジャーズからオファーが来ているのですが、
電子レンジなどを使わないというエコな取り組みを通して私なりのやり方で地球を守っているため、お断りした次第です。