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曇り雲と一頁 #2

”巻きタバコと鬱陶しい独り言”

夜、自転車で隣町のコンビニへ。シャグはここまでこないと買えない。平日の深夜。ここは堆肥の匂いで満たされている。嫌いではない。祖父を思い出す。喫煙所は角。フェンスとコンビニの壁に挟まれたところにある。駐輪場に置いた自転車の籠からバッグを取って、フィルターとローリングペーパーを探る。煙を吐き出してハッとした。目の前にボロボロの自転車があったからだ。随分と錆びている。持ち主に愛想尽かされて、ずっとここに佇んでいるからだ。長い時間走っていない自転車の直立不動をそこに感じた。フレームに焦点を移してみると、驚いた。僕が乗ってきたママチャリと全く同じメーカーのものだ。後方にある私の母の自転車と目の前にある野良自転車を何度も点検するように見比べた。ハンドルの曲がり具合、籠の大きさと位置。チャリンチャリンの色。タイヤの厚さ。荷台の色。全てが一致することを確認して偶然に驚嘆した後、短い重複感を味わった。

私がここにきたのだ。感心したのはむしろこの錆にまみれた彼の方かもしれない。直立不動に油断が垣間見えた。だが話しかけてこようとはしない。私の感動も過ぎ去っていた。ゆっくり一服を終えて、バッグを籠に放り入れ手入れの行き届いた母の自転車に跨る。彼を最後に一度だけ数秒眺めた。そっぽを向いていた。やはり彼には錆以外の愛想がないのだ。



自販機がどこでもドアに見えたことはないか。開けるとその先はどこにでも通じているから、日本全国を容易に移動できる。絶界自販機なんてものをどこかの記事で見かけた。あんなところまでいってコーラを買う中高生はいない訳だからあの自販機は本来の役目は果たせていない。ならなぜだろう。どこでもドアだからだと考えた方が自然だ。あの崖から見る水平線が好きな人が自販機移動斡旋業界にいるのだろう。夢のある団体だ。

あくびって不思議なんだよ。あくびだよあくび。ほら今あくびしてない?
僕は遂にあくびの正体を暴いたと思うんだ。あの瞬間にここに思い至ったね。僕があくびをしたら壁の向こう側から他のあくびが聞こえたんだ。僕はこう思うね、多分さ、見えない電流が僕たちの間を走っているんだよ。そして僕たちは集団として一つなのさ。ヒトという種がある種の演算装置なんだよ。僕たちは見えない電流で並列にも直列にも配列されていて、あくびは計算結果の報告なんだ。情報を吐き出しているのさ。もっと考える余地があると思うんだけど、でもこの説に頼ってしまえば僕がよくあくびをする理由も明確なんだ。だってよく考えるからさ。

シャンティまみれのナイフを掴ませた。ぬちゃってしたでしょ?マスクじゃ表情わからないよー。ねえ、ぬちゃってしたっていってよ!!!!


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