ショップ探訪⑤葉山自轉車市場 その3
GITANE VOGUEのレストア
1 はじめに、GITANE VOGUEとは?
これは今回私が勝手に名付けた、このフレームに対する名称です(笑
今年の5月26日(日)に神奈川県逗子市で行われた
フリーマーケットの「VELO MARCHE 逗子」で
偶然私が手に入れたフレームを指します。
購入時、510㎜前後の比較的小さいフレームサイズで
アイコニックカラーであるブルーの下地塗装に
フランスの自転車ブランド「CYCLES GITANE」の黄色いグラフィック。
付属するシートピンは中々お目に掛れない、SUGINO。
フォークコラムはJIS規格で日本製である事を暗に主張し
本体にはナガサワ製のラグが施され
ボトムケースには日立製作所の刻印。
ロックナット取り付け部にMAVIC製BBを取り付ける為の
テーパー加工が施され
そしてフォーククラウンには
競輪や、当時のトップロードマンがこぞって愛用した
故高比良 博氏のフレーム工房「VOGUE」の刻印が施された
ミステリアスなVOGUE製フレーム。
日本に馴染みの薄いフランスの自転車ブランドのカラーやグラフィックが
何故日本で気鋭の工房で製作されたフレームに施されているのか…
そしてよく見るとフレーム前後、フォークとシートステーに
これまた日本でなじみの薄い「MAVIC1000SSC」のステッカー。
この
GITANEのフレームカラーとグラフィックを纏った、VOGUEのフレーム。
確か’88年頃にベルギーの「ヒタチ・マーク・ロッシン」
(当時ベルギー法人の日立がスポンサードしていたチーム)で
RossinカラーのVOGUEで走ったのが、市川雅敏選手。
それとシンクロしているよなぁ…このフレーム。
私は中学1年の終わりのこの頃に
サイクルスポーツ誌を購入し始め
その時にヒタチ・マーク・ロッシンに所属し
ロッシンカラーのVOGUEで活躍する日本初のプロロード選手の
市川選手の特集記事が組まれ、覚えていたのです。
また、ディレーラーは当時確かMAVICがスポンサーで
’85年頃に市川選手は確か、SUGINOに所属していたはず…
そして今回このフレームを入手した
フリーマーケット会場であるVELO MARCHE 逗子に
まるでお膳立てされたかの如く(笑
故高比良氏の同級生や、日本のフレームビルド界のレジェンド等が
その場で一堂に会し
「これは多分VOGUEの故高比良氏が製作した、市川選手用のフレーム」
と「ほぼ」特定された、由緒正しいフレームである事が
判明したのです。
その詳細は、下記のリンクに記してあります。
そして今回、VELO MARCHE 逗子を主催する
葉山自轉車市場さんにお話をし
車体の来歴や時代背景等を勘案して
私に取って未知のコンポである
MAVIC1000SSCのコンポを軸に、組み立てる話がまとまり
その作業をヨーロッパ車、とりわけフランス車界隈の造詣が深い
葉山自轉車市場さんにお願いする事としました。
2 傾向と対策(ヘッドパーツ周り)
このフレーム、サイズに対しフォークコラムが延長されていました。
今回レストアするに当たり、ここが一番のネックでした。
使用当時と同型のヘッドパーツを特定、取り付けをしなければ
ヘッド周りの処理の収拾が付かなくなります。
適当なヘッドを用いて、フォークコラムの長さを加工するのは
是非とも避けたい。
オリジナルのヘッドを特定し、入手が出来れば
自ずと付属するスペーサーを用いれば
ドンズバで付くはず。
なぜならば、この特徴こそがこのフレームの一番の長所であり
さらには、故高比良氏の想いを正に汲んでいるフレームだからです。
そして、レストアをするに当たり、資料の収集も行います。
盟友Silicate melt氏から教えて頂いた、サイクルスポーツ誌のWeb記事
上記記事中で紹介の写真。
このフレームは、この写真に写っているマシンそのものか
予備車と思われます。
フレーム購入前にこの記事を一度紹介されて
この画像を見ていたんですよね。
サイスポかニューサイクリングのバックナンバー辺りで
何かこのフレーム、見たことある様な気がするんだよなと
デジャヴ(既視感)を見つけた時に感じていたのですが
この画像を改めて見て、そのモヤモヤが晴れました(笑
ここで、アウターケーブル、バーテープやサドルの色は
黄色と特定出来ました。
クランクは多分アームに溝がある事からMAVIC600ないし630と思われます。
しかし、サドルはturboか、チネリか?判断に迷うところです。
市川選手本人にお聞き出来れば一番良いのですが。
また、この段階ではヘッドは何を使用していたのかは分かりません。
なので、文献を手あたり次第読み漁ると…
そしてサイクルスポーツ誌1988年1月号P59
TOP RIDER’S MACHINEに今回の軸となる
市川選手使用のマシン紹介がありました。
この時点で氏はヒタチ・マーク・ロッシンに所属し
時系列としては少しズレており
また本マシンは練習用との事ですが
GITANE VOGUEを使用していたKASチームから変わらず
コンポーネントはMAVIC1000SSCを使用しているので
大いに参考になりました。
そしてここで、ヘッドの形がある程度分かりました。
そして検索や電話での問い合わせをして
名古屋のカトーサイクルプラスのおじさんのところへ赴き
ヘッドの入手に至ったのです。
ちなみにこの時の訪問記は下記に
そして、並行して入手した他のパーツと共に
ヘッドが組み上がりました。
少しづつ形になり始めて来ました。
最初、ITA規格のヘッドを取り付ける上で
JIS規格化加工をするに当たっては
ヘッドに傷が付く可能性がある事から
フォークコラムの外径を削り
ITAヘッドをそのまま取り付ける事を検討しましたが
思いの他、フォークコラムの肉厚が薄い事が判明したので
結局ヘッドを削りITA→JIS同規格化する事となりました。
柏木さんが慎重に作業をしてくれたお陰で
目立つ傷は付きませんでした。
3 他のパーツの入手
パーツ集めを開始した頃は、運が良かったのだと思います。
1か月位でオークションとフリマアプリで大概が揃ってしまいました。
先日、VELO STATION MIURAの
オープンデーに赴いた際同席した、MAVICコンポをアッセンブルした
TOEIにお乗りになる常連の方とお話しましたが
ハンドルを入手するのに1年掛かった、とおっしゃっていました。
そうなんですよね。
マイナーな分野故、時間を掛けた戦いに臨まなければいけない
レストアの世界。私が一番危惧していたのはそこだったのですが
意外に短期間にポンポン揃ってしまい、少し怖い位でした。
ブレーキセット、ディレーラーセット、ハブセットがデッドストック状態で一度に入手したりなど…詳細はこちらをご覧ください。
4 そして完成(ただし暫定バージョン)
VOGUEで製作されたスペシャル仕様のフレームチューブは
プレステージ以外は
丹下No.1メインでダウンチューブのみNo.2の構成が主だったと聞きます。
今回のフレームもシートチューブ内径がΦ26.8なので
その可能性が大ですね。
ちなみに今回使用した国内メーカーパーツの物は他に
同じくSUNTOURのボスフリーと
SUGINOのシートピンとフィキシングボルトの計4点。
シマノのパーツについては一切使用していません(驚
フィキシングボルトはSUGINOの物で賄いました。
どうももしかしたらこのチェーンホイールって何となくSUGINO製なのかもなと思いました。
↑※8月19日追記
先日8月9日にCORSA CORSAにお伺いし
代表の江口氏とこの話になり
MAVIC630前後のチェーンホイールは
どうもofmegaのOEMの可能性有との事でした。
また昨日8月19日に葉山自轉車市場の柏木氏に聞くと
どうもofmegaとSUGINOは提携して、SUGINOがofmegaに
チェーンホイールをOEM供給していたみたいだとの話を聞きました。
今後この辺りについて、確認をしたいと思っています。
何故かと言えば、この頃のMAVICコンポって調べてみると、けっこうOEMが多いんですよね。
ブレーキなり、Wレバーなり…
Modoloも日本のSAKAEがハンドルバーをライセンス生産していたり
あの界隈って、SUNTOURみたいに各専門メーカーが寄り合い所帯みたいにひしめいて
一つのコンポとして世に出していたみたいですから…
プーリーガイドを
ディレーラーのパンタグラフ側のネジを緩める事により
スライドして可動する仕組みになっています。
つまり、大きい歯数のスプロケットを取り付ける際には
プーリーガイドを任意の位置にスライドさせて
スプロケットとの干渉を避ける事が出来ます。
ただ今回、デッドストックのリアディレーラーから
組み立て途中で中古の物に交換したのですが
プーリーガイドをスライドさせる為に必要なパーツ
部品番号で言うところの、801 032のパーツが割れ
一部欠損している事が判明したので、当初は薄いシムを共締めする
応急処置をしましたが(これでも十分対処でき、効果があります)
結局部品取りとして入手しておいたMAVIC801から交換しました。
(入手しておいて正解でした)
※8月9日追記
MAVIC・SSCの32Hリムを入手し、車体に取り付けました。
前輪
そして後輪も
※8月18日追記
リアフォークエンドのアジャスターが固着している事が判明し
その補修作業をしていました。
これ、実は新品をフレンド商会善福寺店で購入したのですが
そしてもう少し詰めてから、そう遠くないうちに
とうとうあのお方に見せる時が来るのかも知れません…
おしまい。