貸倒引当金Ⅰ-設定と取り崩し-
貸倒引当金(かしだおれひきあてきん)は、将来おカネを回収できなくなるリスクに備えるものです。
設定の際は、決算時に残っている債権の中で翌期以降に貸倒れる可能性のある金額を見積もって債権をマイナスする勘定を設定し、まだ発生していないけれど近い将来発生するであろう金額を当期の費用として計上します。
債権をマイナスする勘定のことを評価勘定(ひょうかかんじょう)といい、貸倒引当金勘定(その他の勘定科目)で処理します。また、同時に将来発生するであろう金額を貸倒引当金繰入(かしだおれひきあてきんくりいれ)勘定(費用)で処理します。
実際に前期の債権が貸倒れとなった際には、貸倒引当金勘定を取り崩します。
このように、事前に貸倒引当金を設定し、翌期、債権が貸倒れた際にはその引当金を取り崩すことで、会計期間が異なった収益と費用を間接的に対応させることができます。なお、貸倒れる可能性のある金額のことを貸倒見積額(かしだおれみつもりがく)といいます。
貸倒見積額は、債権の期末残高に貸倒実績率(かしだおれじっせきりつ)とよばれる過去の貸倒れが発生した比率を掛けて計算します。
貸倒引当金の設定
【例題13-3】①
決算にあたり、売掛金の期末残高500,000円に対し貸倒れを見積もった。なお、貸倒実績率は2%である。
決算に貸倒れを見積もっているので、貸倒引当金の設定であることが分かります。貸倒実績率が2%なので、売掛金の期末残高500,000円に掛けます。そうすると10,000円となるので、費用の発生=貸倒引当金繰入を記入します。
ちなみに、計算するときは2%を小数になおさず計算式のまま電卓をたたきましょう。小数変換時のケタ違いや勘違い等のポカミスを減らすことができるのでおすすめです。
相手科目は、費用と同時に計上する債権をマイナスする勘定=貸倒引当金を記入します。
このような流れで貸倒引当金を設定し、翌期に起こるかもしれない貸倒れに備えます。では次に、実際に貸倒れた場合の処理を見ていきましょう。
実際に貸倒れたとき
【例題13-3】②
前期に発生した売掛金が8,000円が貸倒れとなった。ただし、貸倒引当金の残高は10,000円である。
売掛金が貸倒れとなっているので、資産の減少=売掛金を記入します。
貸倒れた売掛金は前期の発生分で、前期債権には貸倒引当金が設定されていて残高10,000円あります。そこで貸倒れた金額分だけ貸倒引当金を取り崩します。設定時と反対の借方に貸倒引当金を記入します。
貸倒引当金残高を超えて貸倒れたとき
では、例題13-3①②のあと、また新たに前期発生の売掛金5,000円が貸倒れた場合の仕訳を考えてみましょう。
貸倒引当金勘定の残高が2,000円あるので、まずは残高分を取り崩します。
貸倒引当金残高を超えた場合は、前期の見積もり以上に貸倒れが発生したということです。こういった際は、残高を超えた金額を当期の費用として貸倒損失勘定(費用)で処理します。
【13-3】③
前期に発生した売掛金50,000円が貸倒れとなった。ただし、貸倒引当金の残高は28,000円である。
売掛金が貸倒れとなっているので、資産の減少=売掛金を記入します。
貸倒れた売掛金は前期の発生分で、前期債権には貸倒引当金が設定されていて残高28,000円あります。貸倒引当金を取り崩すため、設定時と反対の借方に貸倒引当金を記入します。
貸倒れた売掛金は、引当金残高を超えているので、費用の発生=貸倒損失を記入します。
ここまで
・貸倒引当金の設定
・当期発生の債権が貸倒れたとき(前回)
・前期発生の債権が貸倒れたとき
・前期発生の債権が貸倒引当金残高以上に貸倒れたとき
の処理をみてきました。混乱しやすい論点なので、じっくりと確認してくださいね。
今回はここまで。
お疲れさまでした。
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