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立替金と預り金

会社では、取引先や従業員のおカネを立て替えたり、預かったりすることがあります。

商品売買のところで確認しましたが、『他人が負担するはずのおカネを立て替えておくこと』を立替払いといいまして、立替金勘定(資産)で処理をします。今回は、従業員の代わりに立替払いした場合を確認していきます。

立替金

従業員の代わりに立替払いをした際には、従業員立替金(じゅうぎょういんたてかえきん)勘定(資産)で処理します。通常の立替金勘定とは区別して管理しているんですね。

従業員の代わりの立替払いというのは、例えば、従業員が支払うはずの会食代金や生命保険料等を会社が立替払いした場合などです。

仕訳のタイミングは、①おカネを立て替えたとき ②立て替えたおカネを返してもらったとき の2つです。


①おカネを立て替えたとき

【例題8-8】①
従業員が負担すべき会食費3,000円を現金で支払った。

『従業員が負担すべき』とあるので、資産の増加=従業員立替金を記入します。

例題8-8①1


現金で支払っているので、資産の減少=現金を記入します。

例題8-8①2


②立て替えたおカネを返してもらったとき

【例題8-8】②
①の立替払いしていた従業員負担の会食費3,000円を現金で受け取った。

立て替え分が入金されているので、資産の減少=従業員立替金を記入します。

例題8-8②1


現金で受け取っているので、資産の増加=現金を記入します。

例題8-8②2


上記以外にも、従業員から『お給料の前借りをしたいんですけど…』といわれた場合も従業員立替金勘定で処理します。『前貸し』という言葉の印象から、貸付金勘定で処理しないよう注意してくださいね。

預り金

一時的におカネを預かった際には、預り金(あずかりきん)勘定(負債)として処理します。特に、従業員から預かる所得税や社会保険料については、所得税預り金(しょとくぜいあずかりきん)勘定(負債)、社会保険料預り金(しゃかいほけんりょうあずかりきん)勘定(負債)として処理します。

ここで、少し社会のしくみについて確認しておきましょう。

所得税と社会保険料

会社が従業員の給料を支払う際には、給料に課税される所得税(しょとくぜい)と従業員が負担しなければならない社会保険料(しゃかいほけんりょう)を給料から差し引いて預かっています。また、それらは決められた期日までに、会社が従業員の代わりに収めているんですね。

※社会保険料とは、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料のことです。

本来であれば、所得税や社会保険料は、給料を受け取った従業員が自分で所得税を計算して納めたり、個別に社会保険料を納付すべきです。ところが、これらを1人ひとりが行ったとすると、納付する個人もそれを受け取る国もとても手間ひまがかかります。そこで、ワタシたちの国では、給料を支払う会社が従業員の代わりに全ての処理を行うという制度を採用しています。

この制度のことを源泉徴収制度(げんせんちょうしゅうせいど)といいます。また、この制度で徴収(取立て)される所得税を源泉所得税(げんせんしょとくぜい)といいまして、この徴収方法を特別徴収(とくべつちょうしゅう)といいます。

特別徴収っていうくらいなら、普通はあるのん…?と思う方がいらっしゃるかもしれません。

えぇ感、してますね。

実はその通りでして、自分で所得税を計算して納付することを普通徴収(ふつうちょうしゅう)とよんでいます。

さらに会社は、従業員負担分の社会保険料を納付する際に、同額相当の社会保険料を一緒に納めています。このときの会社が負担する社会保険料を法定福利費(ほうていふくりひ)勘定(費用)で処理します。

この辺りのお話は、お勤めをしている人でも知らない方がほとんどです。知っていることを社長にお伝えしたら、ご自身の想像以上に喜ばれるかも!?しれません。

それはさておき。

所得税預り金と社会保険料預り金の仕訳のタイミングは2つです。①おカネを預かったとき ②預かったおカネを納付したとき です。

①おカネを預かったとき

【例題8-9】①
当月の従業員給料100,000円から所得税の源泉徴収額10,000円と従業員負担の社会保険料15,000円を差し引き、残額を普通預金から支払った。

給料を支払っているので、費用の発生=給料を記入します。

例題8-9①1


所得税の源泉徴収分を預かっているので、負債の増加=所得税預り金を記入します。

例題8-9①2


社会保険料も差し引いて預かっているので、負債の増加=社会保険料預り金を記入します。

例題8-9①3


残額を普通預金から支払っているので、資産の減少=普通預金を記入します。

例題8-9①4


②預かったおカネを納付したとき

【例題8-9】②
従業員の給料から差し引いていた所得税の源泉徴収額10,000円、社会保険料15,000円に、同額の会社負担分の社会保険料を合わせ、普通預金より納付した。

預かっていた所得税の源泉徴収分と社会保険料を納付しているので、負債の減少=所得税預り金と社会保険料預り金を記入します。

例題8-9②1


会社負担の社会保険料も合わせて納付しているので、費用の発生=法定福利費を記入します。

例題8-9②2


合算額を普通預金から納付しているので、資産の減少=普通預金を記入します。

例題8-9②3


今回は所得税や年金の話に加え、会社の立場から仕訳を考える必要があったので難しく感じたかもしれません。ですが、誰もが関わる社会のしくみなので、個人的にはみんなが理解しておくべきだと考えています。

今は資格取得のためのベンキョーとしてご覧になっていることと思いますが、ぜひ時間のある時に社会構造としての税金・年金にも目を向けてみてくださいね。

今回はここまで。

お疲れさまでした。


◎次の記事◎


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