電子記録債権・電子記録債務
ここまで、商品を売買をしたさいの代金のさまざまな受け渡し方法をみてきました。特に会社間では、掛取引や手形といった一定期間分をまとめてあと払いする方法が多く用いられるんでしたね。
これらの方法は、毎回の取引が便利におこなえる一方で、不便な部分があることも知っておかなければいけません。長い間利用されてきた方法も時代の流れが早い現代に、そぐわないところが目立ってきたからです。
具体的には、会社を長く経営していくための安定的な資金繰りや管理のための手間に注意をはらう必要があるからなんですね。
例えば、たくさん売り上げをあげるためには、事前にたくさん仕入れをする必要があります。販売するよりも仕入れの方が先なので、あと払いにするなら代金の支払日までに商品をしっかり販売して資金を作るか、十分な資金を確保した上で仕入れをしないと、商品ばかりが手元にあっておカネがない!という状態に陥ってしまいます。
会社は常に、仕入れと売り上げに加えて現金の出入りのバランスを保っていく必要があるんですね。
また、掛けや小切手・手形での支払いには、決済日の管理や残高の確認・取り立ての手配が必要なので、取引先が増えれば増えるほど煩雑な事務負担が大きくのしかかります。
※参考 近頃の手形事情
こういった事情から、これらの債権・債務を電子化してコストを抑えながら資金繰りをより柔軟に行うためのしくみが作られました。
これを『でんさい』といいまして、掛取引や手形を電子化したモノになります。
電子化することのメリットはいくつかあります。
債務者にとっては、事務手続きが簡素化され印紙代が不要になるうえ、複数にわたる決済手段が一本化されるところが魅力です。
債権者にとっては、小切手や手形等の現物管理や取り立て手続きがなくなり、さらには債権の譲渡(じょうと)や分割もできるのでとても便利になります。
この電子化された債権を電子記録債権(でんしきろくさいけん)勘定(資産)、債務を電子記録債務(でんしきろくさいむ)勘定(負債)で処理します。
※電子記録債権と電子記録債務の譲渡や分割は、2級でベンキョーします。
でんさいの流れ
電子化された債権・債務は、電子債権記録機関で記録と管理をしてもらいますが、これらの登録は取引銀行を通じておこないます。また、このときの登録のことを発生記録請求とよんでいます。
支払い義務のある債務者側からの請求が基本となっていて、これを債務者請求方式といいます。また、債権者側からの請求も可能でして、これを債権者請求方式といいます。
どちらから発生記録請求をしたとしても、債権・債務の発生は、取引銀行を通じて通知されます。
上記のスライドは債務者請求方式でしたが、債権者請求方式の場合は、発生記録の請求が黒しばさんからはじまり反対の流れ(左回り)となります。
そして支払期日がくれば、それぞれの会社が取引している銀行同士で自動的に決済してくれます。これは何よりも便利ですね。
仕訳のタイミングは、①債権・債務が発生したとき ②債権・債務が決済したときです。
例題で見ていきましょう。
債務者側の処理
①債務が発生したとき
【例題6-3】①
しろくま商店は、黒しば商店に対する買掛金100,000円について同店の承諾を得たのち、電子記録債務の発生記録の請求を行った。
買掛金の発生記録請求を行っているので、債務者請求方式ですね。負債の減少=買掛金と負債の増加=電子記録債務と記入します。
②債務が決済したとき
【例題6-3】②
黒しば商店に対する【例題6-3】①の電子記録債務の支払期日が到来し、当座預金から引き落とされた。
電子記録債務が当座預金から決済されたので、負債の減少=電子記録債務と資産の減少=当座預金を記入します。
同じ取引を債権者側から見ていきましょう。
債権者側の処理
①債権が発生したとき
【例題6-3】③
黒しば商店は、しろくま商店に対する売掛金100,000円について、取引銀行を通じて同店に対する電子記録債権の発生記録の通知があり承諾した。
取引銀行からの通知により売掛金が電子記録債権に変わったといっているので、資産の減少=売掛金と資産の増加=電子記録債権を記入します。
②債務が決済したとき
【例題6-3】④
しろくま商店に対する【例題6-3】③の電子記録債権の支払期日が到来し、普通預金に振り込まれた。
電子記録債権が資金化されたので、資産の減少=電子記録債権と資産の増加=普通預金を記入します。
『でんさい』の処理はシンプルですが、どのようなタイミングで仕訳をするのか?をきちんと理解しておくことが必要です。しっかり確認しておいてください。
今回はここまで。
ではまた。
◎次の記事◎
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