クレジット売掛金
販売業をしていると、お客さまから「クレジットカードで支払いたい」と申し出を受けることがあります。
クレジットカードは、そのカードを発行した信販会社(クレジットカード会社)が事前にカードを発行し、カードの所有者であるお客さまから後日商品代を回収し、販売者へ支払うためのものです。
つまり、商品販売時にお客さまから「クレジットカードで支払いたい!」と申し出を受けた際には、商品をお客さまへ引き渡し、代金はお客さまからではなくカード会社から受け取るということです。
代金は、一定期間分を後日まとめて受け取るため、カード会社に対する売掛金となります。ただし、このときの売掛金は、通常の売掛金と区別するためにクレジット売掛金勘定(資産)として処理します。
また、クレジット売掛金を受け取る際には、カード会社に対して手数料を支払う必要があります。これは支払手数料勘定(費用)として処理します。
もう少し詳しく商品と代金の流れを確認しておきましょう。
8/7に、うさぎ商店がりす商店へ商品10,000円を販売した際に、りす商店から「カードで支払います」との申し出があったとしましょう。このときうさぎ商店が了承すると、りす商店はすぐに商品を持ち帰ることができます。
りす商店がすぐに商品を持ち帰ることができるのは、事前にカード会社(信販会社)と契約し、それを示すカードが発行されているからです。契約内容は、りす商店がカードで支払った場合には、カード会社が支払いを肩代わりし、後日りす商店がカード会社に商品代を支払うというものです。
そのため、りす商店は、カードで支払った瞬間に後日カード会社に商品代を支払う義務を負います。反対にカード会社は、後日りす商店より代金を回収する権利を得ます。
一方でカード会社は、商品を販売したうさぎ商店に商品代を支払う義務を負います。また、うさぎ商店は、カード会社より代金を回収する権利を得ます。
通常、商品代を後日受け取る権利は、売掛金で処理します。ところが、カードで支払いがおこなわれた場合、商品を受け取る人と代金を支払う人が異なるため売掛金では処理できません。
そこで、クレジットカードを使った売掛金はクレジット売掛金勘定(資産)を設定し、通常の売掛金と区別します。
また、クレジット売掛金は、カード会社に対する手数料を支払ったうえで債権の残額を受け取ります。
『商品代を受け取るのに手数料を支払う必要がある』というところに、違和感を感じる方がいるかもしれません。
そんな場合ときは、カード会社の役割に注目しましょう。
商品を販売する側にとって、売掛金で商品売買をおこなうことは、日頃の取引が多ければ多いほど便利な方法です。
ところが、初めての取引や年に数回の取引しかないお客さまに対して売掛金を管理し回収することは、非常に手間ひまがかかるうえ回収できなくなるリスクも伴うので引き受けたくないというのが本音です。だけどその一方で、販売機会を逃したくない…という複雑な思いがあります。
商品を購入する側は、今すぐ手元におカネはないけれども、2週間後なら用意できるといった場合、今商品を手に入れることをあきらめなければいけません。
こういった販売側・購入側双方の問題を一気に解決するのが、信販会社(カード会社)です。
特に販売側は、カード会社に代金を回収してもらうことで、売掛金を管理したり踏み倒されるリスクをカード会社に肩代わりしてもらっています。商品代から差し引かれた手数料は、その手間賃なんですね。
仕訳のタイミングは、①商品販売時にクレジットカードでの支払いがあったとき ②決済があったとき の2つです。
①商品販売時にクレジットカードでの支払いがあったとき
【例題4-7】①
9/10に、商品150,000円をクレジット払いの条件で販売した。なお、信販会社への手数料はクレジット決済額の5%を計上する。
商品をクレジット払いで販売しているので、収益の発生=売上を記入します。
商品代はクレジット払いなので、資産の増加=クレジット売掛金を記入します。ただし、信販会社への手数料がかかっているため、これを差引いた金額となることに注意します。
手数料は『決済額の5%を計上』とあるのでこれを計算し、費用の発生=支払手数料を記入します。
最後に、手数料を差し引いた残額をクレジット売掛金に記入します。
②決済があったとき
クレジット売掛金は、後日カード会社との間で決めた決済日に、手数料を差し引いた残額が入金されます。
【例題4-7】②
10/1に信販会社から9/10の販売代金について、手取り分が当座預金に振り込まれた。
信販会社に対する売掛金が資金化されているので、資産の減少=クレジット売掛金を記入します。
入金先は当座預金なので、資産の増加=当座預金を記入します。
☆・☆・☆
クレジットカード払いのしくみは、なんだか複雑に感じますが、通常の掛けでの商品売買時より登場人物が1人多いだけです。理解のためのポイントは
・カード会社の役割は何なのか?
・誰が誰に対する債権(代金を回収する権利)を持っているのか?
を把握することです。ここを押さえれば、本試験でしっかりと点数に繋げることができる論点です。仕訳を丸覚えするのではなく、ていねいに確認してくださいね。
今回はここまで。
お疲れさまでした。
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