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お笑い初期衝動

143.わかりにくい×わかりやすい


“湯呑みを使ったコント”というくくりで、ショートネタを2,3本やることに決めた。

これは、再三述べてきた通り、ウッチャンナンチャン(以下ウンナン)がレンタルビデオ店に来るお客の設定で、3パターンのショートネタをやっていたのを参考にしたわけだが。

そのウンナンのコントでは、3パターンのうちの1つが、『北の国から』の登場人物がレンタルビデオ店に来たみたいな感じのことをやっていた。
誰もが知る国民的ドラマを、うまくリンクさせた技ありな演出だ。

ウンナンの完成度の高さに圧倒されながらも、これをよくよく冷静に分析すると、「なるほどそういうことか」と、僕はあるポイントに気がついた。

リンクさせているものが、誰もが知る国民的ドラマであることがミソだと感じたのだ。


湯呑みを使ったショートネタを2,3本という一風変わったことをやろうというときに、そこから更に設定・演出全てにおいて奇をてらうでは、お客さんが置いてけぼりになりやすい。
では、どうすればいいか。

“わかりにくい×わかりにくい”のかけ算ではなく。
わかりにくい×わかりやすい”のかけ算を意識するのが正解への近道。
その方程式だからこそ、お客さんがついてきた上で、変わった発想もいきてくる。

ウンナンのコントから、そんなふうにヒントを得た。


それを踏まえ。
僕は湯呑みを使ったショートネタのうち1本を、『捨て湯呑みと飼い主』というタイトルにした。

というような、どこかのアニメで見たことあるようなシーンの中に、湯呑みを絡めてみることにした。
捨て犬の“犬”を、湯呑みに置き換え、僕はこんなセリフで始まるコントを考えた。

「今日でお前(=湯呑み)とお別れだ。父さんも母さんもお前を飼うことには反対してるし、兄さんはコップしか使わないし…。」

そして、アニメのお約束的な展開と同様、「やっぱりお前(=湯呑み)を捨てるなんてできないよ!」などと言って、湯呑みを抱きしめたところで、熱いお茶でやけどをし、冷まそうとフーフーする。

かなりざっくり言うと、『捨て湯呑みと飼い主』はこんなショートネタだった。

湯呑みをまるで生き物のように扱うという、変則的な擬人化とでも言おうか。
今振り返ると、正直よくこんな難しい作りのネタをやってたなぁと思う。

では、こんなわけのわからないものが、なぜ養成所のネタ見せでウケたのか。
それは、“わかりにくい×わかりやすい”のかけ算を意識したから、というのがやはり大きな要因だったと言えるだろう。




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