お笑い初期衝動
123.三角関係
田中三球の加入で、僕・代走みつくに・田中三球の3人によるトリオが突如として結成された。
"結成"というと、おめでたい響きに聞こえるが。
僕の正直な思いは、「代走みつくにさんとコンビでの活動をしたかったのに…」であった。
そのため、僕の中では、明るい未来が思い描けるような希望に満ちたものでは全くなく。
むしろ、残念な結成にすら感じるものだった。
では、なぜわざわざこのトリオが結成されることになったのか。
実のところ、「残念な結成」というのは、あくまで僕からの視点であり、他の2人は全く違う思いだったのだ。
まず、田中三球の意図は何だったのか。
彼とは半年程コンビを組んでいたのもあり。
田中三球の性格・考え方・笑いの好みなど、僕は誰よりもよくわかっていた。
ズバリ言うと、田中三球の考えはこうだった。
「奥山ツンヂとコンビを再結成したい」
田中三球は、再結成を僕に一度断られているものの。何とかして僕に近づき、コンビを再結成できないかという願望があった。
そのため、僕のいないところで代走みつくにさんを口説き、「まずは奥山ツンヂと同じグループに」ということだったのだ。
もっと露骨に言うならば。
田中三球にとって、代走みつくにさんは実はどっちでもいい存在で。
彼にとっての本丸は、あくまで奥山ツンヂだったのだ。
ただ、上記のような説明だと、田中三球が代走みつくにさんを出し抜く嫌な奴にも読み取れるかもしれないので。
ここで、しっかり僕からフォローしておきたい。
我々は人生かけて芸人を志したのであり。
それが成功確率の極めて低いいばらの道である以上、手段を選んでる場合ではなく。
時に裏の意図が伴う言動になるのは、しょうがないことなのだ。
今回僕が述べてる内容は、誰が悪いとかいう話ではないことを、どうかご理解頂きたい。
では続いて、代走みつくにさんの思いはどうだったのか。
当時は、僕がみつくにさんの心情を理解するに至ってなかったように思う。
なので、みつくにさんについては、「今冷静に振り返るとこうだったんじゃないか」という、あくまで僕の憶測であることを前提に読んで頂きたい。
代走みつくにさんは、僕とコンビでの漫才をネタ合わせしたときに、「本当にこのコンビでいいんだろうか…」と先行きを不安に感じただろうと思う。
台本を書いた僕自身が、ネタ合わせの中でイマイチな手応えだったわけだから、相方からしたら、より冷静に「イマイチだな…」と感じたことだろう。
そういう心情のときに、田中三球から「俺も入れてほしい」と声がかかったわけだ。
これらの状況を踏まえ、代走みつくにさんの立場になって、今冷静に考えると。
みつくにさんは、こう思ったんじゃないかという気がする。
「奥山よりも、田中と組むことに期待した方がいいかも」
あくまで憶測の話とはいえ、そう思われてても全くおかしくはない。
実際、みつくにさんは、僕に相談することなく田中三球を加入させたわけだから。
では、ここまで説明した3者の思いを改めてまとめよう。
奥山ツンヂ:代走みつくにさんとコンビで活動したかった。
田中三球:奥山ツンヂとコンビを再結成したい。
代走みつくに:奥山よりも田中と組むことに期待しよう。
なんと、僕達は三角関係のようなトリオだったのだ。
新しく結成されたトリオだというのに、一枚岩では全くない。各々の思いはバラバラだった。
そしてやはり、こんなトリオがうまくいくはずがなかった。
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