お笑い初期衝動
132.お笑いノウハウを学ぶには
さて。僕1人でメリハリをつけるには、どうしたらいいだろうか。
ネタ見せで、他の人のネタを見る。
ネタライブで、他の人のネタを見る。
レンタルビデオで、誰かのネタを繰り返し再生する。
研究としては、これらの至ってアナログな方法だった。
ネットがまるっきり普及していないこの時代は、研究材料自体が少ない。
しかしだからこそ、研究材料に触れる機会は貴重であり、その時にいかに集中して見るかが重要だと僕は考えていた。
養成所では、ネタ見せにくる芸人の数がかなり多いので、基本自分のネタが終わったらいつでも帰ってよかったのだが。
貴重な研究の場だと思い、大抵僕は、最後の人が終わるまできっちり他の人のネタを凝視するようにしていた。
昼2時から始まるネタ見せは、遅いときは夜8時を過ぎる。
見てるだけでも相当な疲労だったが、そこは若さと信念でもって、もちこたえることができた。
僕は芸人を志す前の素人のときは、所謂"お笑いマニア"というタイプではなかったため、他のライバル芸人達よりも勉強不足なのではないかと元々コンプレックスがあったのだが。
これについては、養成所に通いだしてから思うところがあった。
結論から言うと、勉強不足はさほど問題ではなかった。
お笑いをたくさん見てきた人なら、その分、お笑いノウハウをたくさん持っているのかと思いきや、必ずしもそうではなかったのだ。
養成所に入ってすぐの頃。同期の芸人と喋ってると、みんな明らかに僕よりもお笑い番組を見てきている人達だとわかったのだが。
いざネタ見せが始まると、とんでもない技術の持ち主は1人もいなかった。
これはなぜだろうと、当時僕なりに考えました。
いろんな要因はあろうが、僕の頭の中で出した答えはこうだった。
お笑いというものは、楽しいなぁ~とただ漠然と笑って見てるだけではダメ。
それでは、あくまで一娯楽の範疇にとどまり、学びの域に達することは少ない。
「今のはなぜおもしろく感じたのか」「もっと冷めた目線で見ていても笑っただろうか」など、もう一歩踏み込んだ視点で見れるかが、実は極めて重要で。それをやれた者が、きっと、いち早くノウハウをつかむことができるのだろう。。
つまり、同期の他の芸人がたくさんお笑いを見てきたといっても、それはあくまで娯楽として見てきたもので、学びとして見てきた訳ではなかったのだ。
素人のうちから、わざわざ学びの目線で見ないのも当然で、だからテクニックにさほど差がなかったのだ。
そんなふうな自分なりの考えもあり。
学びの度合いを上げて、1つでも多くのノウハウを発見するべく、僕は、他の人のネタの一瞬一瞬をなるべく真剣に凝視するようにした。
すると。
ほんの少ーしずつだが、技術的な“気づき”が生まれていった。
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