少し不思議な話(壁)_静岡中心街での話
こんにちは奥山さんと言います。
これも静岡市街地での話です。
かなり前の出来事なので、詳細はうろ覚えになってしまったのですが、心霊でも人コワでもない、私自身がその場で実際に見た、今でも忘れられない「光景」についての話です。
縁あってこれを見られている方の中に、静岡駅前地下街爆発事故をご存じの方はほぼいないと思います。
事故の詳細はネットなどで検索して頂ければ詳しく分かりますので省略しますが、事故発生後の消火活動時に起こった2次災害を含め、ガス爆発の為に、死者・負傷者が多数出た、全国的にも報道された大変な事故でした。
当時、子供だった私は、地元で起こった大きな事故ではあったものの、ほとんど行ったことの無い、静岡中心街での出来事の為、連日報道されてはいたのですが、私には現場となった場所すらピンとこず、どこか違う地域か、国での出来事の様に思っていました。
それからしばらく経ったある休日、当時、芸能人やアニメキャラクターが印刷された商品パンフレットやチラシを集めると言うお金の掛からない事が趣味だった私は、静岡の街中に行こうと思い立ち、一人で自転車で出掛けました。
ネットも携帯電話もグーグル先生もない時代、うっすらと、とにかく東海道線沿いを西に走れば街中に着くと言う、ぼんやりとした情報を頼りに自転車を進め、何とか、今はパルコになった、当時西武デパートだったビルに着き、家電コーナーや、当時あったレコード店などデパート内を廻り、私にとってのお宝をたくさん手に入れることが出来ました。
さて、次はどこに行こうかと、デパートの前に停めた自転車にまたがろうとした時です。
記憶違いで無ければ、建物の壁一面、白いビニールシートに包まれた街中にそぐわない建物が道路を挟んですぐ目の前にありました。
「?えっ?…あっ!これは!!」
あの事故現場となった地下街と、そのすぐ上に建つ被害を受けたビルが、おそらく、誰が取り壊す費用や賠償金などを出すのか、責任の所在を係争中で決まっておらず、取り壊される事無くそこに存在していたのだと思います。
私は好奇心から
「中はどうなっているのだろう?」
と思い、自転車から降り、入り口らしき所に近づき、ぽっかりと四角く空いた、ドアがあったであろう所から中をのぞくと、ひっそりとした、少し黒いすすで汚れたコンクリートむき出しの空間が目に入ってきました。
入っていいのかな?と思いつつ、ゆっくり中に入ると、記憶では壁に、ここを保全する費用にする為なのか「見学するなら50円支払って下さい」と言う看板と段ボールで作られた箱が置いてありました。
当時も今も、おこずかいの少ない私は、50円が惜しく、引き返そうと思ったのですが、行ったのがお昼時だった為か、中には誰も居ませんでした。
心が咎めたのですが、好奇心がまさり、私は50円を払う事無く、足音を潜ませながらゆっくりと中に進んでいきました。
人に見つかったらどうしよう、と、ドキドキしながら部屋の中を見回しながら歩いていくと、次の部屋の前に、立ち入り禁止と書かれた立札とカラーコーンが設置されていました。
それまでの部屋は、おそらく事故の為に壊れ落下しそうになった天井のボードや照明、中に有ったであろう机やイスなどの用品はきれいに片付けられていた為、特に危険と感じることはなかったので、立ち入り禁止のこの先にはどんな光景があるのだろうか?と、今思えば不謹慎な気持ちで立札の先の部屋に入っていきました。
私がそこで見て、今でも記憶にあるのが、分かり易く表現すると、少年マンガの主人公が、敵のボスキャラに殴られて勢いよく吹き飛び、コンクリートの壁に叩き付けられた時に、背中を中心に、ヒビが入ってコンクリートの壁が半円状にへこむ、まさにあれが実際に目の前に現れたのです。
爆風のすさまじさを目の当りにし、改めて多数の亡くなった方もおられると言う事に気付き、急に怖くなった私はそっとその場を離れました。
それからしばらくたって、ビルも、地下街もきれいに作り直され、今では当時の面影は全くありませんが、あの日見た光景は、今でも忘れる事が出来ません。
ちなみに、この時手に入れた、当時のアイドルが印刷された家電のパンフレットや、夜の楽しみ「宇宙企画」のチラシなどは、今でも実家の押し入れにしまわれています。