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注意!?カフェインと相性の悪い薬の飲み合わせは?
普段から薬を飲んでいるけどコーヒーを飲んでもいいの?コーヒーと他の薬の飲み合わせは大丈夫?そんな疑問を抱く方もいらっしゃるかと思います。
今回は、コーヒーに含まれるカフェインと、他の薬との飲み合わせについて薬学的に解説したいと思います。
さて、カフェインが体に吸収された後は、どのようにして体から消えていくのでしょうか?答えは肝臓で代謝を受け、尿と一緒に排泄されます。
代謝というと少し難しいですが、要はカフェインが肝臓の働きによって薬理作用の示さない別の成分に変えてから外に出ていくということです。
具体的には、肝臓のCYP1A2という酵素(タンパク質の一種)により、カフェインはいくらか形を変えて、最終的に尿酸として尿中に排出されます。
では、仮に、このCYP1A2の働きが悪くなった場合どうなるでしょうか。
カフェインはそのままの形で残るので、長い時間血液中に留まり(半減期が伸び)、血中濃度が高くなってしまいます。その結果、カフェインが過量になり副作用を引き起こしてしまう恐れがあります。
さて、他の薬との飲み合わせの話に戻しましょう。
カフェインと同じように多くの薬は肝臓で代謝を受けます。薬は様々な種類の酵素によって代謝されますが、薬の中には主にCYP1A2で代謝されるものがあります。これらをCYP1A2の基質といいます。カフェインもCYP1A2の基質に含まれます。
CYP1A2の基質同士の飲み合わせは注意が必要です。なぜなら肝臓で働くCYP1A2の量は限られているからです。
カフェインと他の基質となる薬が同時に体の中に入ることでCYP1A2を奪い合う形になります。そうすることで両者の代謝スピードが遅くなります。これを競合阻害と言います。競合阻害が起きると、カフェインと基質となる薬のそれぞれの血中濃度が上昇してしまいます。
また、競合阻害以外にも注意が必要な薬があります。CYP1A2に結合することでその働きを邪魔する薬です。競合阻害は奪い合う形でしたが、この阻害は、いわば酵素にロックをかけるイメージです。酵素の働きにくくすることでCYP1A2の基質となる薬(カフェイン含む)の血中濃度を高めます。中でもフルボキサミンによる阻害作用は強力であり、特に注意の必要です。
飲み合わせの中には、逆にCYP1A2の量を増やす(誘導する)薬も存在します。この場合は代謝スピードを早めるので、CYP1A2の気質となる薬の血中濃度を下げて効果を弱めます。代表的なものは喫煙です。
ちなみに、酵素誘導は元々は身体を守るために生体に備わった機能です。薬物などに反応し、酵素を増やすことで肝臓での解毒を促します。環境中のダイオキシンによっても酵素誘導が起こす事が知られています。
少し視点は変わりますが、CYP1A2が関係する飲み合わせ以外にも気をつけるべきものがあります。それは市販の風邪薬や頭痛薬、栄養ドリンクです。これらの薬には眠気覚ましや痛み止めの作用を強めるためカフェインが含まれています。コーヒーを飲む場合は1日にカフェイン総量として400mg(一般的な成人の場合)を超えない範囲にしておきましょう。
カフェインを含まない痛み止めとコーヒーの飲み合わせは特に心配する必要はありません。
最後に注意すべきなのは喘息の治療に使われるテオフィリン製剤(テオドール、テオロング、ユニフィル)です。テオフィリンとカフェインはとても似た化学構造をしており、カフェインの一部は代謝によりテオフィリンに変化します。テオフィリンは治療域と副作用域の幅が狭く、血中濃度のコントロールがシビアな薬です。カフェインを一度に大量に摂取すると吐き気や不整脈、痙攣などの副作用が起きて危険です。
以下に代表的なCYP1A2の基質、阻害剤、誘導剤を挙げました。(成分名で表記、()内は先発品の商品名。)全てを網羅しているわけではありません。飲み合わせについてはまだまだ未知の部分も多いのです。
CYP1A2の基質
クロザピン(クロザリル)、オランザピン(ジプレキサ)、デュロキセチン(サインバルタ)、ミルタザピン(リフレックス)、チザニジン(テルネリン)、ラメルテオン(ロゼレム)
→カフェインと基質の血中濃度が上昇する恐れがある。
CYP1A2阻害剤
シメチジン(タガメット)フルボキサミン(ルボックス)、ニューキノロン系抗菌薬(エノキサシン、ノルフロキサシン、シプロフロキサシン)、メキシレチン(メキシチール)、プロパフェノン(プロノン)
→カフェインの血中濃度が上昇する。
CYP1A2誘導剤
オメプラゾール(オメプラール)、カルバマゼピン(テグレトール)、フェニトイン(アレビアチン)、ダイオキシン、喫煙
→カフェインの血中濃度を下げる。
もし、これらの薬を既に飲んでいるよ、という場合は注意して欲しいです。まずは今の生活習慣を極端に変えないことです。急にコーヒーを飲まなくなり、治療薬の効き目が悪くなる。という事もあり得るからです。不安がある場合は医療機関に相談しましょう。また、最近コーヒーを飲み始めて治療中の病気の調子が悪くなったという場合はすぐに医療機関に相談した方がよいでしょう。
さいごに
薬同士や薬と食事やサプリメントの良くない飲み合わせは意外と出くわします。特に複数の医療機関で薬をもらっている場合に多いです。お薬手帳を作って、是非最寄りの薬局で相談してください。お薬手帳は急な入院時にも便利です!!!よく使う鞄に入れておいて欲しいです。
参考文献
ファルマシアvol50 No.7 2014
医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド 日本医療薬学会編集