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とある日の放課後

クラスメイトが「このプリント(遅れ)はどこに出せばいいのか」と聞く。教員室の入り口から4列目の云々と説明するよりは行った方が早いので、よっしゃ行くかとつれていく。

家庭科の、厳密に言えば他の技術やらの机群の前まで来たところで、黒いボックスを指さす。ありがとう、と言ってもらえる。

ここにくるまでの間に声をかけてきた教員の姿を探すが、見当たらない。少し離れた手洗い場にいた。さっきの話だけど、と文化祭の決算の話をする。大量に売れ残ったとある服の扱いは、顧問との話し合いの結果一旦買い取りになったらしい。12万円の売れ残りを生徒活動費から補填するのも違う気がするので、至極適切だと思う。

担任兼修学旅行瀬戸内班担当教員と話す。アンケート18/101しか回答なかったですよ、と愚痴る。
「まあ意識高い奴の意見ってことだな」もっともである。
出来るかも怪しい修学旅行の話をするのは、なんとも空虚だ。

教員室の中央付近で弊部部長と顧問が話をしている。中3の学年旅行と部活の大会の日程が被ったので、その話の流れで首を突っ込む。僕はお手数おかけします、とでも言うように申し訳なさそうにしているが延期になって大会と被ったのはコロナのせいである。

ついでに、練習会どうなりました?と聞く。いやー、県協会が厳しくてー、などと言葉を交わす。

後ろで、仕事柄よく話す生徒委員会主任が教養総合の調査票をパラパラと眺めている。

 何してるんですか?
「(自分の教養総合の)顧客がいるかなぁと思って」「君が僕のでないことだけは覚えてる」
 なんて講座でしたっけ。大体僕文系なんで。
「ひどいなぁ。文系の人こそ今後触らない理系のことやっときゃいいのに」
 僕音楽選択じゃないですけど音楽理論にしましたよ。

 ここで先程の顧問が絡んでくる。

 「音楽にしたんだ」
一応ピアノやってるんですけど、音楽理論は学んだことなかったので。
ハイスクール漫才も悩んだんですけどね。

 「ははは、(気を遣わなくても)いいのに」
 「奥村僕にもそう言う気の利いたこと言ってよ」

生徒委員会主任、数学教員の恨み節である。講座のタイトルが思い出せなかっただけなのだが。微分数学と…なんだっけ。

 「高校生になるとそういう能力も必要だぞ」
プライベート(学業、講座選択)とオフィシャル(仕事)は分けることにしてるので。
 「ならこの前のは分けられてないじゃん」

休校決定の後の部活の可否に生徒委員会はどのくらい関われたのか、と聞こうとしたら「どの立場で聞いてる?」と言われじゃあ新聞で、と言ったら「じゃあ話さない」と逃げられ、なら個人的にと言ったら「もっと話さない」と言われた件である。いつまで引きずるのか。

突然、「そういえばさ、奥村決算どう?」と突然真面目な声色で話し始めた。

早く終わらせたいのはやまやまなんですが…
「この前の生徒委会議でも出たんだけどさ、良心だけに頼ってると厳しいんじゃないかと思って」
と、いいますと。
「前の年度の決算が出てないうちは次の年度の組織がお金使えないとか、システム面で規制していかないとどんどん長引いちゃうんじゃないかなって」
僕も催促はしてるんですが…

ここで"ハイスクール漫才"教員が茶々を入れる。

「奥村がさ、高2局長を怒鳴るみたいなのないの?(笑)」
「いい加減にしてくださいよ!!みたいなさ、」
「それでほかの高2がしゅんってしてさ」
「たぶん何も言えないと思うよ」

 中身はともかくとして、教員のこういうところは大好きだ。

 じゃあ職会行かなきゃいけないんで、と雰囲気で僕にわからせ、その場を立ち去る。

 本来の目的である二応の印刷のために教員を探す。見つけた。

山内さん!今日日直ですよね、
「そうです!」
二応開けてもらっていいですか?
「うぉー、了解」

僕に声を掛けられたタイミングでほぼ察していたような気はするが、一応驚いたような顔をして鍵を持ってきてくれる。

中に入ってしばらくすると、となりの部屋を開ける音がする。見に行ってみると、かの高2会計局長が何かを探している。聞けば、コインカウンターがないらしい。

こういうやつ

まあ、あの部屋では見つからないのも無理はない。そう思っていた矢先、「あ!」印刷機の奥にあるのを発見した。外で早くしてほしそうに待っていた教員は苦笑い。しかし、よくもこんな大きなものを見失ったものである。

さて、自室に戻り早く印刷を終わらせなければならない。と思ったが、机の上がとてもそんな状況ではない。紙は散乱し、小さなプリンターがPCの前に置かれていた。とりあえずそこを整理するところから始めることにする。

文化祭の紙やらなにやらを次から次へとゴミ箱へ。その山の中から、「印刷代行は予算本来の業務なのか!?」と荒っぽく書かれたB5の紙を発見した。僕もそう思う。

ようやく片付いたので、プリンターから予定していた書類を一枚印刷し、それをでかい印刷機に読み取らせる。裏紙を差し込み、40枚印刷に設定して稼働させる。
印刷を始める、しかしどさっどさっと聞きなれない音がする。寒すぎて紙がくっつき、5枚くらいまとめて1枚と認識している。そのため4枚は白紙というか表というか裏というかが印刷されない状態である。100枚くらい裏紙を投入したはずだが、あっという間になくなってしまった。出てきた紙の束から印刷されなかった紙を取り除き差し込む。これを繰り返す。

そんなこんなで16:30になり、「16時半になりましたので、校内に残っている生徒は帰宅してください」とのアナウンスがかかる。せめてもの抵抗で16:40くらいまでごちゃごちゃやっていたが、特にとがめられもしなかった。

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