VTuberデザインブックの事例で学ぶ大型個人企画に必要な10の仕掛け
VTuber向けの大型企画やサービス開発、コミュニティ運営や事務所運営、企業案件紹介などを手広く手掛けている小栗さえと申します!
今年の夏にデザインに悩める全VTuberに送るデザイン参考書『VTuberデザインブック』を発刊させて頂きました。
企画の規模については以下にまとまっていますが、25名のメンバーと3ヵ月の制作期間を経て、1,000部以上の冊子を売り上げた大成功の企画に終わりました。
今回はこの大型プロジェクトがどのように成功したのか、他にも大型企画を何件もこなしてきた中で毎回気を使っていた重要なポイントを10点お伝えしたいと思います。
01. 企画を書き出して整理しよう
頭の中では完璧な企画になっていても、書き出して整理すると意外と考慮もれや言語化が難しい部分など出てくると思います。また他人を巻き込むときに、口頭の説明や整理されてないテキストだけで相談を持ちかけると間違って伝わったりトラブルの元になりますので、必ず書き出しましょう。
この段階ではある程度情報が整理されていればスライド化まではしなくても大丈夫ですが、類似のプロジェクトなどがあれば参考資料として添えておくと必要品質や規模感が伝わりやすくなります。
■ 企画趣旨
駆け出しVtuberやデザインの知識や引き出しが欲しいVtuberに向けて、実用的なデザイン資料集を提供する。
■ 冊子内容
・「ロゴ」「サムネ」「キャラデザ」「配信レイアウト」などのVtuber関連素材を一般募集し、優秀なデザイン(要審査)をピックアップしてまとめる。
・サムネデザインや動画編集のコツなど、Vtuberが共通して心がけるべきデザインノウハウをまとめる。
・Vtuber向けに作られているフリー素材提供者と協力し、素材のプレビューやダウンロードURLをまとめる。おススメフォントなども。
■ 規模感
運営体制:小栗さえ(企画制作進行&LP担当)、デザイン得意な方1名、同人誌デザインや組版に長けている方1名、PV担当の方1名、その他制作補助や有志の方いれば!
印刷仕様:A4、40ページ、フルカラー、200~400部(メロンやBOOTH委託も考慮)
■ 想定される作業
・企画進行管理
・印刷発注管理
・企画ロゴ、告知用サムネ作成
・冊子デザイン、組版
・応募フォーム作成や審査結果のお知らせ
・素材募集管理・審査、書籍の組版
・LP作成、PV作成、プロモ依頼
・SNSでの告知宣伝
・現地頒布
・委託、販売管理
・関係者への冊子送付等後処理
■ 予算
現状の印刷仕様だとグラフィック社で6~10万円弱。
上記範囲なら小栗さえ個人で負担予定、大きく上回る場合は別途出資者を募ります。
■ 報酬
原則として営利目的でなく福祉的な活動になりますので、人件費は回収できない想定です。
関係者及び素材提供者には冊子と電子データ版を送付します。
C100後、委託販売も落ち着いた頃に、利益に応じて運営メンバーや素材提供者に還元します。
■ スケジュール感
夏コミ合わせになるので、7月入稿を目標にするスケジュール感で動ければ。
企画を固めて公に動き出すのが3~4月頃、制作期間が5~6月頃になります。
■ プロモ
LPおよびPVを作り、VtuberPost、PANORA、MoguLive、vronにニュース配信(プレスリリース)を依頼する予定です。
参考:冬コミC99Vtuber合同誌(MinaBook)
販促LP(小栗さえ作):https://obakeshop.github.io/c99-minabook/index.html
販促PV(八瀬すずかさん作):https://www.youtube.com/watch?v=j5lVQr-hhog
VTuber デザインブック 初期の企画ラフ
02. プロジェクトのコアメンバー集め
企画の概要を整えたら、プロジェクトのコアメンバーを招集します。
まずは2-3名に企画概要を説明して参画してもらい、複数人の視点からプロジェクトを精査したり、プロジェクトに外せない作業をお願いできる体制を作っていきます。
ここで招待する人は日頃から付き合いがあったり、信頼関係のある人にお願いしていくとコミュニケーションコストが少なくスピード感を持って企画を進められると思います。逆にプロジェクトに必要なコアメンバーを集められないうちは、あまり大きな企画をやることはお勧めしません。
03. 破綻しない計画を練ろう
コアメンバーが集まったら、企画の要件を具体化していきます。
なぜこの企画をやりたいのか、プロジェクトのゴールはどこか、コストや広報面の戦略、体制やスケジュールなど細かい要件を言語化したり、決めていきます。ちなみにこの時点で完璧な設計をする必要は無く、計画はある程度やってる最中に変わるものと考えておくと気が楽になります。
もし企画を初めて立てる場合は、必ず企画をやり遂げた経験のある人に見てもらいましょう。2択のように思える判断も実は100択の内から選んでいたりして、素人の知識と想像力ではまず正解にたどり着けないと思っていた方が安全です。
近くに経験者がいない場合、専門家にお金を払ってでも見てもらいましょう。これから信頼のおける大切なコアメンバーを含め、沢山の関係者を巻き込むことになることを考えれば、数千~数万円でプロジェクトの根本的な破綻を防げるなら安く思えるはずです。
04. 制作メンバー募集は妥協しない
コアメンバーが揃ったら、企画参加者や制作協力者を集める準備を始めます。ここは無理に身内で固めず、制作に本当に必要なメンバーをしっかり集めきる気持ちが大切になります。
飛び込み営業のようで最初は恥ずかしいと思いますが、プロジェクトを成功させるためには初対面の方や自分の影響力では断られそうな人にも頑張ってアタックをかけましょう。
そしてその招きたい方々を説得する企画資料作りをすることになりますが、関係値の薄い方に企画資料を見てもらうには様々な工夫が必要です。
コツとしては企画を視覚的にイメージできる形にし、企画に込める感情をエモく言語化してください。協力範囲や報酬は具体的に、企画が頓挫しないことを信頼してもらうための根拠や覚悟も見せる必要があります。
05. リスクは序盤に背負う
企画者として企画の規模をステップアップさせていくためには、どこかで新しいチャレンジをする必要があります。新しいチャレンジにはリスクがつきものですが、契約が発生したり約束がいっぱいある中でリスクを負うことは難しいため、なるべく序盤に試しておけるとベストです。
ちなみにVTuberデザインブックでは、これまでチャレンジしたことなかったクラウドファンディングでの資金調達にチャレンジしました。
結果としては305%達成と予想を大幅に上回る調達額で終了し、ユーザーからの期待が可視化されたこともあって、プロジェクトの士気も大きく向上しました。
06. プロジェクト運営チームを作る
プロジェクトには制作チームの他にプロジェクト運営のチームが必要です。プロジェクト運営チームの仕事としては、メンバー調達、制作資金調達、スケジュール管理、マーケティング、販売流通、カスタマーサポートなどの様々なタスクや雑務があります。
小さなプロジェクトだと主催者がすべてやるケースもありますが、規模が大きくなってくるとどうしても一人では回らなくなってきますので、コアメンバーにもお願いしてなるべく複数人で回せる体制を作っていきましょう。VTuberデザインブックのケースで言えば、運営チームは私を入れて7名で運営していました。
07. コスパの良い広報戦略を練ろう
事業として行わない規模の企画では、プロモーションコストが重くのしかかります。プロモにお金をかけられない場合でも、アイデア次第では低コストで大きな宣伝効果を得ることも可能なので、ここはプロジェクトメンバーと知恵を出し合って、色々な施策を試してみましょう。
VTuberデザインブックの場合は、クラウドファンディングやクラファン開始と成功によるニュースリリース、掲載作例募集による企画の拡散、販促動画と特設Webサイトによる広報、直前配信による宣伝などを行いました。
08. ニュースサイトを使おう
企画の規模やニュース性によっては、VR系やVTuber系のニュースサイト(MoguraVR、PANORA、VtuberPostなど)にニュース記事の原稿を送ると無料で掲載されることもありますので、チャレンジしてみるのもおススメです。
コツとしてはニュースサイトが取り上げるだけの価値があることをアピールする一文や数値データを添えておくと掲載が獲得しやすいです。
PANORA:『VTuberデザインブック』発売のお知らせ
ニュース原稿と依頼文
09. メンバーのモチベアップも重要な仕事
多くの個人企画では、メンバーの稼働はボランティアまたは成果報酬でお願いするケースが多くなります。
そのような参画の仕方の場合は仕事に責任を負わせられないですし、対応の優先度も下がりがちになるので、どれだけモチベ高く参画し続けてもらうかが重要になってきます。
VTuberデザインブックのプロジェクトでは、各担当者の進捗をなるべく制作サーバー上で見える化しプロジェクトが進捗しているというイメージ付けをしたり、クラファンの成功やユーザー作品の募集、動画やWebサイトなど広報素材の完成など、外からの反応や期待を獲得できるようなイベントが定期的に起こるようなスケジュールで制作を進めました。
今回は幸運にもアプリスタイル株式会社様からVTuberスタイルのコラム連載枠を頂けるという強い追い風があり、終始高い士気を維持することができました。
10. 絶対に頓挫させない覚悟を持つ
プロジェクトがある程度走り出したら止めるのは大変ですが、そうはいってもメンバーの体調不良(最近はコロナとかも)やライフステージの変化によるプロジェクト脱退などは起こりえます。参加人数が多いほど、制作期間が長いほどこういうトラブルは起こりますので、最悪全部自分で巻き取るか、お金(外注など)で解決するイメージは常に持っておきましょう。
そのために資金調達や売上の目処を考えておくというのも、プロジェクト運営には必要になります。コアメンバーにも同じような覚悟をもってもらえていると大分安心できますので、そういう意味でもコアメンバーとの信頼関係は重要です。
さいごに
まだまだプロジェクト成功のための小さなコツは色々ありますが、上記で説明した内容さえ押さえておけば、大きな事故や失敗は少なくなります。
この記事を見て、新しく大型企画にチャレンジする人や、成功するプロジェクトが少しでも増えれば幸いです!
*小栗さえ*
VTuber向けの大型企画やサービス開発、コミュニティ運営や事務所運営、企業案件紹介などを手広く手掛けています。
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小栗さえの発信や活動については全て個人に帰属するものであり、所属している会社と連携したものではありません。
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