夕飯をたかりに来る幼馴染は俺に胃袋を掴まれていた
井上 和さんで書きました
食運さんの企画作品です
推しの胃袋掴んでみたい……
推しにご飯まだ〜って言われたい
あぁ存在しない記憶が……
よしなにしてくださいな
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○○~、ご飯まだ~??
リビングのソファーに寝っ転がり
漫画を読みながら声をかけてくる女の子
この女の子は幼馴染の井上和
親同士が幼馴染で
ご近所さんという事もあって
家族ぐるみで仲が良い
アルバムを見返してみると
俺の記憶には無いのだが
保育園時代から気が付いたら一緒に
写真に写っていた
和は同じ保育園に通ってはいなかったけれども
和の弟が俺と同じ保育園に通っており
運動会などがあると一緒に来ては
俺たち家族とご飯を食べていた
○○
はいはい
今作ってるから少し待ってな
高校に通っているが部活はしておらず
帰宅部のため学校の授業が終われば
すぐに帰宅している
俺が帰宅部なのは少し事情があって
両親が共働きであり早朝から夜までは
不在となるため
俺が家事や料理を担当しているから
○○
さて
今夜は和の好きなピーマンの肉詰めと
後はサラダとスープを作るか……
和は高校に入ってからというもの
頻繁に俺の家に遊びに来ては夕飯を食べている
キッチンに立ち食材の仕込みと調理をしていると
リビングでゴロゴロしていたはずの和が
こちらを見ていた
和
○○〜
今日の晩御飯は何を作るの〜?
○○
あぁ……
今日は和の好きなピーマンの肉詰めを作ってるよ
ちょうどピーマンが安かったからね
和
やった!
○○って本当に料理上手でなんでも作れるよね~
○○
まぁ……
小6から料理してるからね
母さんに教えてもらったおかげで
ある程度の品なら作る事は出来るよ
最近はもっとレパートリーが欲しくて
レシピ本も読み漁ってるし
そう和と談笑しながらも手際よく料理を作っていく
和
本当、将来結婚するなら
料理上手な旦那さんがいいよね~
毎日おいしい料理が食べられるんだし!
○○
……
俺はお前が料理をするという選択肢を
持たないことを感心するとともに
幼馴染として不安すら覚えるぞ……
料理が好きな俺とは正反対で
料理が大の苦手である和
学校では成績優秀、容姿端麗、運動もそこそこ出来る
弓道部に入っていて優秀な成績を収めている
学年一のマドンナ扱いされている
しかし
なぜか料理だけは一向に上達しない
というか勉強をしようとしないため
ろくに料理を作る事が出来ないのだ
○○
ほんとに料理さえできるようになれば
完璧なんだがなぁ……
和
いいのいいの~
料理できない分○○が作ってくれるし
ここに来れば食べられるんだから問題なし♪
○○
いずれ1人暮らしになった時に後悔すると思うぞ……
和
別に○○と一緒に暮らすつもりだから
問題ないし……((ボソッ
○○
ん?
なんか言った?
和
な、なんでもないよ?💦
てか○○はすごいよね
成績優秀だし運動も料理もできるし
まぁ……顔は普通だけど笑
○○
一言余計だ!
ほっとけ!!!
ほら、もうすぐ出来るぞ
他愛もない会話をしながら料理をすること30分
夕飯が完成した
両親が帰宅するのはもう少し遅くなるはずだから
俺と和で先に食べることに
和
いただきま~す
和はいただきますの直後
間髪を入れずにピーマンの肉詰めを頬張る
和
う~~~ん
しっかりお肉の旨みがピーマンの苦味を抑えてて
美味しい~!
和は満面の笑みを浮かべながらご飯を頬張っている
なんやかんや言いながらも
俺は美味しそうにご飯を食べてくれる
和を見るのが好きだった
そんな幸せそうな和を眺めてから
俺も改めて夕飯を食べる
○○
いただきます
最初にスープを飲んでみる
簡単な卵スープだが
とても落ち着く味に仕上がっている
合格点だな
次にピーマンの肉詰めを食べてみる
○○
うん
今回はピーマンをじっくり焼いてあるから
いい感じに決まってる
前回作ったやつよりかは美味しいな
そんな独り言をつぶやきながら
食べる俺を眺めて
和が口を開く
和
でもさ
そんなことを言いながらも○○って
満足そうな顔をしてないよね
こんなに美味しいのに何か不満でもあったの?
さすが幼馴染
顔には出していないつもりだったが
今回作った品に俺が満足していないことが
分かったようだ
○○
うん……まぁ
美味しいのは美味しいんだけどさ
これをお店で出すとしたら
こんなクオリティーでお客さんが
満足してくれるんだろうかって
いつも考えててさ
和の親父さんが作ってくれた料理は
もっと深くて感動さえ覚える味だったから
そう
和の親父さんは料理人であり
俺が料理に目覚めるきっかけを
作ってくれた人でもある
和の親父さんはお店を切り盛りしており
昔から何度も通っているけど
そこで食べる料理はどれも美味しくて
食べ終わった時には
満腹感と幸福感を覚えるほどだった
その気持ちが忘れられなくて
俺もいつかは料理の道へと進み
和の親父さんと同じように
料理で人を感動させられるような
料理人になりたいと思っている
和
確かにお父さんの料理も美味しいけど
私は○○のだって引けを取らないくらい
美味しいと思ってるけどなぁ
うまく言葉には言い表せないけど
○○のご飯からは食べる人を
思いやる優しさがあふれてるっていうか……////
私は……○○の味……好きだよ……?////
現にもう胃袋掴まれちゃってるし((ボソッ…
いつもは勝手にご飯を食べに転がり込んできて
美味しいを連呼しながら気が済むまで
食べ散らかすだけの和が
今日は恥ずかしながらも真剣な表情で
そう伝えてきた
最後の方はよく聞き取れなかったけど
○○
和にそんな感想言ってもらえたのは初めてだな
今の言葉は作る立場からするとすごく嬉しいよ
親以外に初めて料理を褒めてもらえたので
嬉しくもあり少し気恥ずかしかった
俺は中学の頃から和に片想いをしていた
高校に入ってから
和が料理を頻繁に食べに来るようになって
もっと美味しい料理を作って
和を喜ばせてあげたいという気持ちが大きくなり
和に気づかれないように
こっそりと料理の勉強をしていた
おかげで中学の時と比べて
格段に腕を上げていたのだが
それでも自分自身を満足させる料理を
作る事が出来ずにいて少し心が折れかけていた
和
……○○はほんとにすごいよね
うちの学校は進学校だから
料理なんて専門で習うことも無いのに
努力してここまで美味しい料理が
出来るようになってさ
私なんて学校で習った事をひたすら復習して
良い成績を維持し続けること以外何のとりえもない
○○
いや……
それだけでも十分すごいやつなんだが……
和
ううん
こんな程度じゃ○○には釣り合わないし
勝ててもいないよ
だって○○はそれ以外のことで
こんなに努力をしてちゃんと結果を出してるから
いつも天真爛漫な和が
今日はやけにおとなしい気がする
それに
釣り合わないってどういう事だ?
成績では俺より良い成績で現に俺に勝ってるんだし
容姿もよくて才色兼備なすごいやつとしか
思えないんだけど……
和
私ね……
ずっと……○○のことが好きだったの////
ううん……今も大好き////
だから……○○のそばにいても恥ずかしくない
女の子でいようと思って
勉強とか頑張ってきたの……////
○○
( ゚∀゚)・∵ブハッ!!
へぁ!???!?
突然の和の告白に俺は思わず吹き出し
変な声が出てしまった
和
中学時代にバスケを頑張る姿とか
一緒に委員会活動を楽しくする姿とかを見て
○○と一緒って楽しいし落ち着くし////
バスケを頑張る姿カッコいいなぁ////
って思ってた////
高校も同じ学校を受験して
合格できたのも嬉しかったし
今もこうやって同じ時間を過ごせることが
とっても幸せなの////
和の告白を聞く俺の顔は
自分でもはっきりとわかるくらい赤くなっていた
それは和も同じだった
和
○○、顔真っ赤だねっ////笑
○○
そう言うなら和だって耳まで真っ赤だよ笑
和
うるさいっ////
和
でもね……
私がもっと好きになったのは
○○の手料理を食べてからなの……
○○
俺の手料理……?
和
うん……
私が初めてご飯を食べに来た日の事覚えてる?
そう言われ
初めて和がうちにご飯を食べに来た日のことを
思い返してみる
忘れもしない
中学3年生の部活動を引退後
委員会活動で帰宅が遅くなった日の事だ
確か……
文化祭の準備で寒い日に夜遅くなって
和の両親がすぐに迎え来られないからってことで
ウチでご飯を食べて送っていったんだよな……
そんなことを思い返しながら
俺は和に返事をした
○○
うん
はっきり覚えてるよ
中学3年の時文化祭の準備で
帰りが遅くなった日だろ?
和がうちに来て
俺が晩御飯作るって言って親子丼を作ったんだよな
和
そう
その時初めて○○が家で毎日のように
料理をしてるってことを知ったの
○○の作ってくれた親子丼
とても美味しくて……
温かくて……
優しかった……////
和曰く
その時食べた俺の手作り料理が
和の中にある俺が好きという感情を
一気に爆発させたらしい
和
正直
お父さんの料理をたくさん食べてきた私は
並大抵の料理では美味しいと思う事はあっても
それ以上の感情が出ることはないって
思ってた
それくらいお父さんの料理はすごいし
美味しいから
○○
確かに
和の親父さんは有名日本料理店を
何件も渡り歩いてきた凄腕だけあって
作る料理はどれも美味しいの域を
超えてるからなぁ……
あの料理を食べていつか同じようにって
思った俺もどうかしてるのかもしれないが
和
でも
○○の親子丼は美味しかったし
確かに優しさを感じたの
食べた人に満足してほしい
美味しく味わって幸せになってほしいっていう
○○の優しさがあった
○○
それは和に満足して欲しかったからな
好きな人に美味しい料理を食べてほしいって
思うのは当然だろ?////
和
え?それって……////
○○
あぁ
俺は和が好きだよ
勉強も運動もできて
天真爛漫でいつも楽しそうに笑っててさ
俺は和の事がずっと好きだった
初めて親子丼を食べてもらった時の
和の本当に美味しそうな顔は
今でもしっかりと覚えてるよ
それで和にもっともっと美味しい料理を
食べさせてあげたいと思って
そこからまた料理の勉強を必死に始めたんだ
それは料理人になりたいっていう夢を
かなえるためでもあったんだけど
和の美味しくご飯を食べる幸せそうな顔が
もっと見たいと思ったからさ////
俺はこれまで心の中で抱いていた
和への思いを口にした
和は俺の言葉を聞いて目に涙を浮かべている
俺はそのまま言葉をつづけた
○○
和……
和の事が好きだ
俺と付き合ってくれないか?
和
……////
私、○○みたいに料理できないよ?
そんな私で本当にいいの?
○○
料理ならこれからいつでも教えてあげるよ
料理が出来るか出来ないかなんて関係ないよ
俺は和が好きなんだからさ////
和
うれしい……////
私も○○と一緒にいたい////
和は涙を流しながらも満面の笑みを浮かべていた
こうして俺の料理と俺のことが大好きな幼馴染は
晴れて恋人となった
付き合い始めてからの俺たちの日常は
あまり大きく変わることはなかったけれど
その中でも唯一変わったことがある
和
○○~
晩御飯まだ~?
○○
お前はうちに転がり込んでくると
その言葉を発さなければ
それ以外の言葉が出ない呪いにでもかかってるのか?
和
えへへ~
だって○○のご飯は美味しいからさ~
相変わらずの間延びした声でそう返事する和
○○
褒めてないからな?
まったくもう……
今夜は少し冷えるからな
ビーフシチューとコーンスープでも
作ろうかと思ってる
和
おぉ……
今日も美味しそうなメニューですなぁ~
ねえ○○、私も料理手伝っていいかな?
○○
もちろんだよ
むしろ手伝ってくれると助かるよ
和
やった!
○○と料理するのって楽しいから
デート行くのとは別の違った
幸せな時間なんだよね~
そういいながら俺のクローゼットから
エプロンを取り出して和はエプロンを装着した
○○
待て待て待て待て!!
なんで俺のクローゼットの中に
お前のエプロンが収納してあるんだ!?!?
部屋主の俺が知らない間に
いつの間にかクローゼットに収納されたエプロン
マジでどうなってんだ・・・?
和
この前○○のお母さんに相談したら
クローゼットに入れとけばいいよって
言われたから勝手に入れちゃった♪
○○
入れちゃった♪
じゃねえよ!!
はぁ……まあいいや
観念した俺は身支度を済ませた和とともに
キッチンへ向かう
告白した後から和は料理を勉強してみたいと
俺の家に転がり込んでは
少しづつ料理を作るようになっていった
和
いつか私の愛がたくさんこもった手料理を
○○にご馳走するんだから
楽しみにしててね?
○○
あぁ……あの親父さんの血が流れてる和の料理だ
楽しみに待ってるよ
天真爛漫才色兼備な幼馴染の俺の彼女は
今日も元気に夕飯をたかりに来て
一緒に料理を作っている
____fin
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