俺が片思いしている幼馴染は告白の返事を俺に委ねてくる

筒井あやめさんでかきました


しおりさんの企画作品です

よしなにしてくださいな

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あやめ
「今日C組の△△くんに告白されたんだよね」


高校からの帰り道
隣を歩く幼馴染のあやめ
何気ない会話を息するように
俺にそう伝えてきた


○○
「△△って......ああ、あいつか
あいつは確か......」


俺が△△の人物像を思い浮かべている間
あやめはじっと俺の顔を見つめながら
静かに様子をうかがっていて


あやめ
「......それで○○、どうすればいいと思う？」


頃合いよく俺へ質問の答えを求めてくる
この手の質問は初めてじゃない
だから今回も''いつもと同じ答え''を
あやめに伝える

○○
「......断った方がいいかな」


そう、断った方がいい
△△じゃ、あやめの相手として
相応しくないから


あやめ
「なんでそう思うの？」


あやめがその理由を聞いてくる
だけどそれは△△に
特別興味があるからとかじゃない
小さい頃から2人の間でそういうやり取りを
ずっと続けてきたからだ
そして今回も俺はあやめにその理由を説明する


○○
「......△△は女好きなんだ
それで前の彼女とも二股がバレて別れてるんだよ」


これは嘘じゃない
本人がクラス内で自慢していたことだ


あやめ
「あー、そうなんだ……
それは嫌だなぁ......
わかった、明日断るね」


よかった
これでまだあやめと一緒にいられる


あやめ
「○○ありがとう
やっぱり○○に聞いて正解だったよ」


○○
「......うん、どういたしまして」


満面の笑みを浮かべ感謝を伝えてくる
あやめの姿にチクリと胸が痛む
だって俺はあやめにお礼を言われるようなことなんて何もしてないから



ーーーーー



一人じゃ何も決められなかった
優柔不断な少女は時が経つことで
誰もが見惚れる女性になった

それなのにあやめは俺のことを小さい頃と
変わらずずっと慕ってくれている
そして俺はそんなあやめとの関係を利用して
今日も自分に都合のいい''答え''を教える

全てはあやめの為
そんな心にもない大義名分を掲げて

ーーーーーー

俺とあやめの関係は物心が付いた時には
既に始まっていた

親同士が親友で家も近いということもあって
どこに行くのも俺達はいつも一緒だった

幼稚園に上がる頃には
ある程度の人格も形成されていて
俺は物怖じしないしっかり者
あやめは優柔不断な奥手
という感じに成長した

この頃のあやめは
自分で何かを決めるのも
行動を起こすのも苦手で
誰かが手を引いてあげないと
何も出来ない女の子だった

そんなあやめのことを
あやめの両親はすごく心配だったようで
俺にあやめのことを見てやって欲しいと頼み
あやめには
「困ったことがあったら○○に聞きなさい」
と何度も言い聞かせたそうだ

そんなこともあり
あやめは何でも俺に聞いてくるようになった
どこに行くにも何をするにも何でも聞いてくる
普通ならそれくらい自分で考えなよ
と言ってしまうようなことまで
だけど不思議とあやめに聞かれると
嫌な気持ちには全くならなかった
それどころか「○○ありがとう」
と言われる度にすごく嬉しい気持ちになった

小学校に入学してからもその関係は続いた
この頃からあやめには
理由を伝えるようになった
これはこれ
それはそれだけじゃ
いつまで経っても自分で
決めることが出来ないと思ったからだ

その甲斐あってあやめは一度説明したことは
自分で決められるようになった
それに自分からも理由を
聞いてくるようになった
理解すると成長が早いらしく
あやめはどんどん自分で考えて
行動するようになっていった

小学校高学年になると
あやめはほとんどのことを
自分で決められるようになり
俺に何かを聞いてくることも少なくなった
小さい頃と違って
俺がいなくても友達と一緒に
遊ぶようにもなった
あやめと一緒にいる時間は
以前に比べたら少なくなったけど
他の人には見せない笑顔で
○○と呼ばれる度に俺とあやめの関係は
何も変化していないんだと
実感することができた

そして中学校に上がって少し経った頃
久しぶりにあやめから質問された


あやめ
「B組の□□くんに付き合って欲しいって
言われたんだけど......」


言いづらそうにそう伝えてくるあやめを見て
ついにこの時が来たかと思った


小学校高学年
思春期に入った頃から
男子達のあやめを見る目に変化が起き始めた

あやめを異性として意識した視線
優しく話しかけてくる男子
いじわるをしてくる男子
あやめと関わろうとするほとんどの男子の目にあやめへの好意の色が混じっていた

でもそれは当然のことでもあった
あやめは誰が見ても可愛いと
答えるような容姿の女の子に成長していたから
それに元来のか弱い印象と控えめな性格が
相まって庇護欲をそそるとして
あやめの男子からの人気は
異常と言えるほど高く
同時にいつもあやめの近くにいる
俺へ向けられる妬みや嫉みの視線も凄かった


あやめ
「それで○○
私はどうすればいいのかなぁ？」


普段よりも緊張した面持ちのあやめが
俺にそう問いかけてくる


''それはあやめが考えるべきことだよ''


頭の中にあやめに伝えるべきセリフが浮かぶ
この質問は今までのものとは違う
俺が教えるべきものじゃない

わかってる
それはわかってるけれど......


○○
「......断った方がいいよ」


口から出たのは否定の言葉
俺はあやめに自分の望む答えを押し付けた
すると当然のようにあやめからは
その質問が返ってきた


あやめ
「......なんで○○はそう思ったの？」


なんで？
そんなの決まってる

''俺の方があやめのこと好きだから''

だけどそれを口にすることが出来なかった

もしあやめに気持ちを伝えて断られたら
少しでも拒絶する素振りをあやめが見せたら
今の関係が壊れてしまう
もう戻れなくなってしまう

そう考えただけで怖くて
気持ちを伝えることなんて出来なかった

だから必死に探した
正当な理由を
あやめが納得する理由を
あやめが不審に思うまでの短い時間に
脳をフル回転させて記憶をほじくり返した

そして見つけた


○○
「......□□は誰でもいいから彼女が欲しいと言って手当たり次第女子に告白してるんだよ」


□□と同じ小学校のクラスメイトが
そんな話をしていたのを思い出し
そのことをあやめに伝える
そんな奴と付き合っても
あやめは幸せになんかなれない
だからこの答えは間違っていない
そう自分に言い聞かせて……


あやめ
「えっ？ ......それは嫌だなぁ……
......うん、わかった
じゃあ告白は断るね
○○教えてくれてありがとう」


何も疑わず
信じきった瞳で
あやめは俺に感謝の言葉を口にする


○○
((ﾎｯ
((ｽﾞｷｯ


よかった
心の中で安堵すると同時に胸に痛みが走った

あやめに伝えたことに嘘はない
嘘はないけど......

この日、初めて俺はあやめの為ではなく
自分の為の答えをあやめに教えた


その日以降
学校中の男子の情報を集め始めた
この前は□□のことを偶然知っていたから
あやめに告白を断らせることが出来たけど
次も運良く情報を持ってる男子とは限らない
もちろんあやめに嘘の情報を
伝えるなんて以ての外だ
ただの悪口を言ってあやめに嫌われたら
元も子もないから

これはあやめに相応しい相手を
見極める為なんだ

''全てはあやめの為''

そう自分に言い聞かせながら
俺は男子の情報を集め続けた


高校生になった現在までの間に
あやめはたくさんの男子に告白された
その度に俺は自分の気持ちを隠し
あやめに「断った方がいい」と答え続けた


全てはあやめに見合う相応しい男を......
そう自分を正当化して……


そして証明したかった
俺よりもあやめに相応しい男なんて
いないことを

でもずっと思っていたことがあった

もし自分よりあやめに相応しいと
思ってしまう男があやめに告白してきたら？

そしてもしあやめに
「告白を受けた方がいい」と伝えたら
あやめは俺の言った通り
告白を受けてしまうのか？

そんな漠然とした不安をずっと抱えたまま
ついにその日はやってきた




ーーーーーー







あやめ
「○○……今日ね
学校で告白されたんだ......」


高校からの帰り道
人通りの少なくなった道でいつものように
あやめはそう切り出してきた

あやめの態度も口調も今までと
なんら変わらない
けれどほんの少し
ほんの少しだけの違和感
何だか嫌な予感がした


あやめ
「......A組の‪‪‪✕‬‪✕‬くんなんだけどさ
どうすればいいかな？」


その名前を耳にした瞬間
俺の足は無意識に止まった

A組の‪✕‬‪✕‬……
情報を集めていく中で
悪い話が一切出てこなかった男子
そして俺よりもあやめに相応しいと
素直に思ってしまった男子だ

俺はどうすればいい？

今までのような正当な理由も
あやめを納得させる理由も見つからない
もちろん嘘なんかつく訳にはいかない

じゃあ正直に伝えるのか？
‪✕‬‪✕‬の告白なら受けるべきだって

これまでずっと自分の気持ちに蓋をしてきた
あやめに嘘をつき続けた代償が今ここで
返ってきたのかもしれない

もう潮時なのかもしれない
あやめに相応しい男子が出てきてしまった以上
引くしかないのかもしれない

''受けた方がいい''と

けれど言おうとした言葉とは正反対の言葉を
無意識に発していた

○○
「......断った方がいい」


結局
俺はいつもと同じ言葉を口にしていた

もちろん
それ続く返事は......


あやめ
「......やっぱり理由とか
あったりするのかな？」


言ってしまったものは仕方がない


○○
「……」


あやめ
「○○？」


○○
「......嫌だから((ﾎﾞｿｯ」


あやめ
「えっ？」


○○
「嫌だから……」


あやめ
「嫌？」


○○
「あやめが誰かと付き合うのが
俺の隣からいなくなるのが嫌なんだ」


今までのような正当な理由でも
納得させる理由でもない


あやめ
「......じゃあ○○は……どうしたい？」


○○
「......俺は、あやめと付き合いたい
恋人になりたい
......あやめが……好きだから」


正直な気持ちを伝える
ずっと言えなかった本心からの気持ち


そしてそれを聞いたあやめは笑顔で一度頷き


あやめ
「うん……○○
私達……恋人になろ……☺️」


二つ返事で了承した


これで俺達は晴れて恋人同士になった
ずっと秘めていた想いが叶った
嬉しくないはずがない


だけど心から喜ぶことが出来ない
当たり前だ
ずっと嘘をつき続けたのだから
だから俺は
もう一度あやめに問いかける


○○
「あやめ、これは大事な話なんだ
俺に言われたからそうするんじゃなくて
あやめがどうしたいか
あやめ自身で考えて決めて欲しいんだ」


今までみたいに俺に言われたからで
あやめに決めて欲しくない
今まで散々自分がやってきたことだし
今さらどの口がっていうのもわかってる
けどこれだけはここだけは譲れないから

だけどそんな俺の言葉を
聞いたあやめはクスッと小さく笑う


あやめ
「○○
私は今までの告白も
全部ちゃんと自分で決めてきたよ？
だから○○と恋人になりたいっていうのも
私が決めたことなんだよ？」

○○
「え？
だっていつも俺に
どうすればいいかって聞いて......」


俺はその度にあやめが告白を
受けてしまうんじゃないかって
不安になって......

そんな俺の心情が伝わったのか
あやめが少し眉を下げる


あやめ
「ごめんね
実は告白された時にはもう断ってたんだ
だからあれは報告してただけ
あと''答え合わせ''の意味もあったかな......」


○○
「な…何でそんな嘘を？」


自分が言えることじゃないけれど
何か理由があるなら聞かせて欲しい


あやめ
「○○は私が初めて告白された時のこと
覚えてる？」


○○
「あ、ああ
覚えてるよ」


もちろんだ
忘れるわけない


あやめ
「......○○はあの時
私のこと好きだった？」


○○
「え、それは......」


突然の質問に言葉を詰まらせる
しかしそんな俺の返事を待たずに
あやめは言葉を続ける


あやめ
「......私は好きだったよ？
ううん……ずっと前から
もっと昔の小さい頃から
私は○○が好きだったの」


○○
「俺もだよ
あやめが好きだった
ずっと、ずっと前から......」


後出しみたいでかっこ悪いけど
俺もあやめのことを
ずっと想っていた事を伝えたかった


あやめ
「ふふ☺️
嬉しいなぁ
ありがとう」


そんな俺の返事にもあやめは嬉しそうに笑う


あやめ
「......それでね
私が告白されたこと聞いたら
○○何て言うのかな？ とか
それで私のこと意識してくれたら
嬉しいなぁって思って......
それで○○が断った方がいいって
言ってくれたのはよかったんだけど
なんか思ってた言葉と違う
それっぽい理由を言われちゃってさ
しかも私もあー確かにって納得しちゃって
でもやっぱり私のこと意識してもらいたくて
結局こんなに時間かかっちゃった」


あの時あやめに自分の気持ちをちゃんと
伝えていたら
もっと早くあやめと恋人同士になれて
告白される度に不安に襲われることも
なかったってことか


あやめ
「でも○○と付き合えて本当によかったぁ！」


やっと不安が解消されと言わんばかりに
あやめは両手を上げて伸びをする
そんなあやめにずっと気になっていた
もしもの話を聞いてみた


○○
「あのさ
もしも俺が告白を受けた方がいいって
言っていたらあやめはどうしてたんだ？」


絶対に有り得ないことだったけど
あやめがどう答えるのか聞いてみたかった


あやめ
「うーん......どうだろ
そしたら私から○○に好きだって告白して
捨てないでって泣いて縋り付いてかも......
なんてね
そういう話はもう禁止だよ？笑」


最後は冗談ぽく終わらせたあやめだけど
きっと本心なんだろうな


○○
「ごめんごめん......じゃあ改めて
あやめ…これからもよろしく」


あやめ
「ふふ☺️うん！ こちらこそっ！」


そう言ってあやめは思わず
見惚れてしまう笑みを浮かべた




ーーーーー



あやめ
「あ、ねぇ○○…手…繋ごうよ////
私達恋人同士になったんだしさ
普通のじゃなくて……
恋人がする繋ぎ方のやつ////」


思い立ったようにあやめはそう口にしながら
自分の両手の指を絡めて俺に見せてきた
恋人らしい要求に仕方なさを装いつつも
心から喜んでくれているのだとわかり
嬉しい気持ちになる


○○
「わかった」


俺はあやめが見せた通りに自分の指とあやめの指を絡める


あやめ
「えへへ🥰何か照れるね////」


手を握り返すあやめがそんなことを言うから何だかこっちまで恥ずかしくなってきた
だけどふといたずら心が芽生える


○○
「あ、一応なんだけどさ
なんで手を繋ぎたかったのか
理由を聞いてもいい？」


そんな俺の意図に気づいたあやめは


あやめ
「わかってるくせに……
もういじわる......(⑉･̆-･̆⑉)」


そう言って顔を真っ赤にした後
恥ずかしながらも満面の笑みを浮かべた


あやめ
「○○が大好きだからだよ////」

___fin