歌舞伎ヲタが滝沢歌舞伎ZERO FINALを観てきたよ(前編)-歌舞伎パートといくつかの感想-
※この記事はネタバレを含みます。
※私はただの歴の浅いスノ担(箱推し)で、歌舞伎が大好きな一般人です。
※書いてある内容は個人の感想です。
2023年4月11日(火)、TBSが誇る朝のバラエティ番組「ラヴィット!」にて宮舘さんがわんこ蕎麦186杯を召し上がり自身の最高記録を塗り替えたその日の夜、滝沢歌舞伎ZERO FINALを観てまいりました。
そんなわけですから観劇してる間中ずっと「蕎麦が出てきはしないだろうか」「あのお腹には186杯の蕎麦が」「蕎麦が」ということで頭の中が一杯になっておりました。
もちろん嘘です。・・・いやちょっとほんと。だってすごくないですか、1.5kgぐらいのそ・・(もうええねん)。
さて私の席は松竹歌舞伎会ゴールド会員の資格を持っていてもこの席なの?っていう1階席のほぼ最後列上手側。そして大変失礼ですが前の方の座高がとっても高かったので、舞台中央の詳細は把握できないという悪条件でございました。が、できる範囲で私が感じたことをお伝えしようと思います。
先に歌舞伎パートについて述べ、後からその他の部分で印象深かったことを書き、最後に全体についてまとめます。
と思ったのですが、全体についてのまとめがかなり長く気持ち悪いものになったので、分割して後編に回します〜。
歌舞伎パート
端的に言うと超高速回転走馬灯という感じでした。いやこれは歌舞伎パートだけでなく全体的になんですけど、歌舞伎パートが一番顕著だったように思います。
全体構成
どのような演目だったたかは他の方もレポしてらっしゃるのですが、後々自分が見返した時のために一応書いておきましょうかね。
「五右衛門」岩本、深澤、ラウール、宮舘、向井
「男と女の舞」阿部、佐久間、渡辺、目黒
「氷」宮舘
「蝶々」深澤、向井、ラウール
「櫓のお七」佐久間
「道成寺」阿部
「蛇」渡辺、目黒
「蜘蛛」岩本
「五右衛門」はほぼ2019どおりの内容。よく考えたらこれだけがZEROからの演目なんですよね(「男と女の舞」は滝沢さん・三宅さんもやっておられたので)(2023/04/30修正・追記:ご指摘いただきましたが、「五右衛門」は滝沢さんもされてました!すみません!!)。岩本さん的に大事にしたい演目なんだろうなというのが伝わってきました。恒例の刀投げも気合い十分。直接観るのは初めてでしたので、大丈夫だと分かっていてもハラハラしますね。「男と女の舞」も2019どおり?「五右衛門」と、このパートは時間を使ってゆっくり見せていたように思います。
で、次からがそれぞれ体感2分ずつぐらい。いやー、何かに浸る暇もないぐらい高速だった。初見の人は着いていけないんじゃないでしょうか。
道成寺
ゲネプロの映像を見て一番不安だったのは阿部さんの「道成寺」ですね。「道成寺(京鹿子娘道成寺)」といえば女方の舞踊の大曲なわけで、あらゆる役者さんがこの舞踊で板に立ちたいと思っている演目です。したがって、歌舞伎ヲタとしては生半可な気持ちや変なアレンジでやってほしくないなと思ってたんです。
旧歌舞伎座閉場のさよなら公演(2010年ですかね)の時、玉三郎さんが舞台上で道成寺を踊っているのを聞きながら、この歌舞伎座で踊れなかったことが悲しくて奈落でひとりで踊ったんだって勘九郎さんがお話しされていたことがあって、いつか勘九郎さんの道成寺を歌舞伎座で観るぞって決意してるんですが、まあそれぐらい大事な舞踊です。
というわけでどんな感じになるんだろうと思ってたんですが、ほんとに超短縮版であっという間に終わって、それが返って良かったです。振り鼓から鐘入の部分ですけど、ぶっかえり(衣装を引き抜いて役の本性を顕すこと)もなく片肌を脱ぐぐらいで。あれ以上やると「もっとちゃんとやってくれ」になりますから(私が)、いや良かった良かった。以前は三宅健さんが道成寺をされたことがあるそうですね。どんなだったんだろう。見たいような見たくないような。
櫓のお七
そして前からやりたいと伺っていた佐久間さんの「櫓のお七」、これも一瞬でしたが可愛らしくて良かったですね。櫓からばっと赤い布が広がる演出、とても素敵だと思いました。以前にも書きましたが、佐久間さんには人形振りでやっていただきたいなあ。
本来の舞踊ですとお七は人形振りと言って文楽人形を模した振りで黒子に操られるように踊る場面があり、そこから息を吹き返したように人に戻って半鐘を打ち鳴らすんですね。思いのままにならない自分の身の上を人形の姿で表し、そこから脱して解放されて鐘を打つというのが不思議に心に迫る演出です。ちなみに佐久間さんも一瞬やっていましたが、髪を振る動き、あれも人形振りの一部です。この時はまばたきもできませんし身体も不自由ですから、とっても大変な踊りなんですけど、佐久間さんならできると思うんですよね。いつかお願いしたい、いつか。
参考までに児太郎さんがお七をやったときの記事を貼っておきます。
そういえば阿部さんは鐘の上、佐久間さんは櫓の上にのったままの引っ込みでなんだか運ばれていく感じが面白かったです。
その他の演目、そして一番驚いたこと
「蛇」では渡辺さんと目黒さんが長袴での舞踊で、まあこれも一瞬でしたけどちょっと心が湧きました。できるんじゃーん!もっとやってよーー!という(結局それなんよ)。
宮舘さんは「氷」の演目に限らず全てにおいて所作が身についていて、さすがだなと思わせるものでした。ひとり歌舞伎役者がいるな?という感じ。この人ももっと長い舞踊をやってほしいです。見たいです。
さて一番びっくりしたのが岩本さんなんですけど、何に驚いたかというと顔ですね。「五右衛門」では紅の筋隈なのですが、「蜘蛛」で出てきた時は青い藍隈に変わっていたことです!隈取は紅が正義側で(石川五右衛門は大泥棒ですがヒーロー的な意味合いで紅なんだと思います)青が悪者というように、色によって意味があるというのはよく知られたところですが、あの短時間で変えてきた??ということで目を疑ってしまいました。上書きなどできないよね?実は顔に貼るシール的なものだったとか(滝沢さんも「蝶々」の演目ではシールでしたが)?秘密を教えていただける日が来るといいなあ。
ちなみに歌舞伎では人外のもの(妖怪とか鬼とか)を演じる時は茶色の隈を用いるので、本来的には茶色で隈取をするところなのかなと思います。例えば歌舞伎の演目「土蜘」などでは後シテは茶隈で出てきます。ここももし意図があるなら知りたい。
それにしてもあの虫嫌いのひーくんが、あんな大きい蜘蛛に乗るのには抵抗なかったんだろうか。私はオペラグラスを通して見るのも嫌でしたが(汗)。
まとめ
そんなわけで歌舞伎パートは物凄い勢いで流れていったのでそれほど感傷に浸る間もなく。私が観たことがあるのは2016年以降の円盤が出ているものと昨年のものだけというのが影響しているのかもしれません。昔からご覧になっている方だったら、また感じ方も違うのだと思います。
いやー、そう考えると昨年の「九人連獅子」が無いのは惜しいなと思ってきました。「氷」から「蜘蛛」までは偉大な先輩を振り返ることをしていますから、「連獅子」こそSnow Manとしての滝沢歌舞伎を総括する意味で重要な演目だったのではないかと。あとラウールの宇宙一長い毛はどこにいったのだろうか。2021年の滝沢歌舞伎ZEROが円盤に残らないのであれば何とも残念です。
歌舞伎以外のパート
個別に印象深かった場面のみ書いていきます(だいたいもうレポ上がってるから誰がどうしたとかいいよね、と思ってる)。
オープニング
「春の踊り」と「いにしえ」に関してはこれまで映像で見るだけでしたので、なるほどこれが例の・・・と思いながら見てました。普段のスノさんたちの楽曲と比べてめちゃくちゃ手数が少ない振付なのですが、それって難しいんだよねぇ、かっこよく見せるの。ということで際立っていたのはラウールでしたね。振りの空いたところに自身のグルーヴ入れてくるのでニヤニヤしてしまいました。これが受け入れられない人もいるだろうけど、私には好物です。
空いたところを自分のグルーヴで埋めるのは、腹筋太鼓とかでもそうなんですよね。ほっとくと好きなことやっちゃう、無邪気な子どもみたいだな。ちなみに佐久間さんは演技で埋めるし、宮舘さんはオーラで埋めるタイプだと思ってます(なんの話?)。
今回、生地は同じだけど細部はそれぞれに合った衣装を着ていて、すごく好みでした。遠目で見るからか、よりスタイルが良く見えたな、みんな。席が遠すぎてめちゃくちゃ客観的に眺めることができたのですが、「ミリオンの男達がこんな狭い会場で歌い踊っている・・・」と思いました。
仇討ち
格好よかったです!好き!!袴の股立を取っての立廻りが個人的に好みなんですよね。そしてこの三人(深澤さん、宮舘さん、阿部さん)は、もっと演技のお仕事をするべきと思った(時代劇じゃなくてもいいので!)。
シナリオとしては相変わらず意味が分からないし、そもそも意味を求めてないのですが、忠臣蔵をベースにしているようだったので困惑はしました。最初の映像で一方が一方を滅多打ちにしていて、「殿中でござる、殿中でござる」みたいなセリフがあってその後激しい立廻りなので、どっちかっていうと切られた吉良上野介側が怒ってるやつ・・?っていうか見てる若い人で忠臣蔵知ってる人は少ないような気がするので、まあ気にしないでもいいのかもしれない。
戸板倒しが今回は深澤さんお一人だったのはサポートできるJr.がいないからなのだろうかなーんてことを思いながら、最後の宮舘さんの落下では「蕎麦が・・」という心配をしていました(しつこい)。
月と星のディスタンス
ラウールがラウールしてた。のですが、私の席では中央で踊られると上半身しか見えなくて残念でした。素足に赤い塗料が塗られていて、踊るとその色で軌跡が描かれるというような噂を聞いたのですが確認できず・・・。最後紙を撤収する前に見せてくれればいいのに。(2023/04/30追記:軌跡が描かれるというような演出ではなかったようです。ライブビューイングでも確認できず。)
途中で何回か叫びとも呻きともつかない声を出していて、ゾクゾクしました。こういうのを見たかったんだよねぇ(あんまり見えなかったけど)。この一瞬一瞬を記録してくれるカメラがあるといいなと思うと同時に、この場限りで何も残さないでほしいとも思いました。今の今が、そこにはあったので。
さて渡辺さんですが、こちらもいつもとは違う印象を持ちました。歌はもちろん良かったんですけど(渡辺さんが歌うならもっとメロディアスな曲の方がいいとは思うけど)、花道からはけて星に見立てた電球を掴もうとするところ、すごく思い詰めたような顔をしていてちょっと胸を突かれるような気がしたのを覚えています。
Memories
盆があんなに高速で回転するとは思わず、しかも本水で、演舞場の機構は1ヶ月弱耐えられるのかなという心配をしてしまいました。ぐらい、回っていました。そんなに回っている橋(っていうか階段なんだよね、実際は)の上で9人が激しく踊るわけなので、本当に最後まで無事でいてくださいよと祈らずにはいられません。
「エモかろう」と用意されたエモ演出にはあまり興味はないので割愛しますが、全員が橋に乗った後で目黒さんとラウールが一瞬手を握り合っていたのにはぐっときました。
組曲・花鳥風月・Memoriesの流れは、超高速回転走馬灯の真骨頂(そんなものはない)という感じでしたし、スノさんたちの身体能力を見せつけていてとっても良かったんですけど、見ている側としては疲労困憊でした。五条大橋に振り落とされることになるとは・・・いや、落ちてはない、落ちてはないと思うのだけど。
その他
思いついたことを順不同で。
「変面」での岩本さんの立ち姿がやっぱり本当に美しかったです。岩本さんには早くボールルームダンス(スタンダード)をやってほしいと思いました。背中のラインが綺麗なので。
実のところオープニングの後の本庄さんのバトンパフォーマンスが一番泣きそうになったかも。
「四季」はスノさんたちの化粧落としをするための時間稼ぎとしてこの演目をするぐらいなら、ちゃんと一部と二部を分けて、他のそれぞれの演目もじっくり見せた方が良かったのではと思いました。寄せ集め感があった。
Jr.さんたちの新曲とかもあれば良かったのになと思う。
やっぱり一幕ものにした意味が分かりかねるな・・・。
去年と比べて岩本さんの組長兼トップスター兼エトワール感が減少していいたのが残念でした。
「DA BOMB」格好よかった!ダンス動画待ってます。
「WITH LOVE」から「LOVE」はもう疲れ果てていたのであまり記憶が無いです。
今年も「歌舞伎の化粧は2時間かかる」と言っていて、イラっとしました笑。かかりませんて。
はい、今回はここまででーす!
5,000文字を超えてしまった・・・。
後編に続きます。