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背徳感とともに

サ道。

近年のサウナブームの火付け役となったテレビ番組。
原田泰造演じるナカちゃんさんが主人公。
ホームサウナ「北欧」の常連さんたちと、
実際に巡った日本各地のサウナの感想を話しあう物語。

サウナに入り、水風呂に入り、休憩して整う。
基本的にそんなシーンが映し出されるだけなのだが、心が癒される。
毎週の楽しみだった。

そんなサ道の9話。

ラブホテルに併設されたサウナが取り上げられていた。
ほとんどのサウナはカプセルホテルの大浴場や、銭湯に併設されている。
プライベートサウナも都市部では最近増えてきているがかなり高額。

比較的安価でプライベートサウナが体験できる方法を知り、
目から鱗だった。

放送後、銭湯の常連のおっちゃんとラブホサウナの話題で持ちきりに。
周りでは誰も行ったことがないらしく、
みんなで行こうという馬鹿馬鹿しい話をした。

行こうとは言うが実際に行くはずもなく、
特に行く予定もないので、徐々に記憶から薄れていった。

数ヶ月後、翌日仕事休みでやることもなく、
なにをしようかと考えていると、ラブホサウナがふと頭によぎる。

そしてついに禁断の領域に一歩踏み出してみることに。

休日、準備は万端。
下調べもしっかり行い、一人で入れることも確認済み。

駅を降り、ホテルが並んでいるエリアへ。
一人でホテルに入るのは、なんだか気恥ずかしさがある。

人目を避け、マスクを深くつけながら早足で歩く。
赤の他人に見られたところで、今後の人生に何の影響も及ぼさないのだが。
気分は週刊誌を避ける芸能人。

ホテルの近くまで来ると、十字路の横からおっちゃんが歩いてくる。
目の前で進路を変え、同じ方向に歩き出した。
もしかしておっちゃんもラブホサウナに?と一瞬考えたが、
そんなはずもなく、おっちゃんは近くの会社の事務所へ入っていった。

あたりを見回し、誰もいないことを確認し、すぐにホテル内へ。

フロントにつき、空いている部屋を探す。
サウナ室がほとんど埋まっているようだった。
もしかして、サウナのために皆朝から来ている?(多分違う)

なかなかサウナ付きの部屋が見つからない。
探しているうちに後ろからカップルが後ろ来たらどうしようと焦りつつ、
一つだけ残っていたサウナ付きルームを見つける。

発券し、そそくさと部屋へ。

アメニティにロウリュ用のアロマが置いてありテンションが上がる。

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サウナはこじんまりとしており、一人しか入れないような狭さ。
電源を入れてから温まるまで1時間ほどかかるとのことで、
待っている間は漫才をみて過ごす。

Aマッソのコント。バスを待っている小学生の元に、お尻の摩擦で火を起こす老婆がやってくる設定。
ベンチに火をつけてしまうが、小学生がバケツの水で火を消す。
火に水をかける動作に、水風呂を想起してしまったので、サウナへ早く入りたい気持ちが止まらないのだろう。

ラジオからは、イナズマイレブンの歌が流れてくる。
小学校高学年の時に、弟がよく歌っていた曲。

ラブホテルだから防音も強いだろうと思い、歌ってみた。
歌うだけでは物足りなくなり、踊る。

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サウナへの期待度が高まり、どうかしてきたようだ。

そうこうしていると、サウナ室の温度は急上昇。

バスタブに水を溜め、シャワーで体を洗い流す。
そして携帯から音楽を流し、サウナ室へ。
ランダム再生でDef Techの『My Way』が流れる。

温度は95度まであがっていた、
ホテル併設のサウナということもあり、
正直それほど質が高いわけではないとたかを括ってたのでびっくり。

一人用のサウナ室なので、水をかけるとかなり湿度が上がる。
サウナストーンの距離が近いので、石の近くで水を注ぐと火傷しそうになる。

1曲目の『My Way』が終わり、
ランダム再生でウルフルズの『ええねん』が流れる。

1曲がだいたい4分ぐらいなので、2曲聴いたら出ようと決める。
大音量で音楽を流しながら汗をかく。

水をかけすぎて、かなり苦しくなってくる。
サウナ室の外からは「それでええねん。それでええねん。」
と、トータス松本が語りかけてくる。

サウナ室を出てもいいんだと諭されるように感じる。
早く出たい気持ちも募るが、耐えれば耐えるだけ、整いは深くなる。
トータス松本の熱い誘惑に耐え、『ええねん』がおわる。

トータス松本との死闘に勝ち、サウナ室を後にし、水風呂へ向かう。
汗も流さずに、水風呂へダイブ。

サウナ界隈では一般的に汗を流さずに水風呂に入ることを「かけず小僧」と呼び、忌み嫌われている。

そんな行為も、誰にも言われない。自由にサウナを楽しむことができる。

体を拭き、ベッドに横になる。
ラブホテルでなにしてるんだろうなという気持ち。
背徳感と整いが同時に襲ってくる。あとたまにトータス松本の顔も浮かぶ。

3セットして、休憩してさらに2セット。計5セット。
そのあとは漫才をみたり、ゴロゴロして過ごした、

フリータイムの時間も終わりになったので、部屋を後にする。

ホテルを出るとあたりは真っ暗になっていた。
窓がなくて時間感覚が分からなくなっていたので、なんだか変な気持ち。
夕方から映画館に行ったあとのような、別世界から引き戻された感じ。

帰り、なか卯でカツ丼を食べてやっと現実に引き戻された。
そういや、「ええねん』をサウナで聴いていたけど、「男は汗かいてベソかいてgo」と歌っている『ガッツだぜ』のほうが良かったな。

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