見出し画像

#1 大学を辞めた日

はじめに

この投稿は僕が人生で体験したことについて感じたこと、考えたことを綴るちょっとしたエッセイのようなものです。人生の参考になるものではありませんので、娯楽として、ちょっとした空き時間などに楽しんで読んでいただけたら幸いです。




僕は大学を辞めることにした。そう決心したのは大学三年生の春、いつも歩く散歩道で音楽を聴きながら夜空と住宅街を眺めている時だった。午前4時を回っていた。

元々寝つきは悪い方なのだが、今夜は特に寝付けない日だったので僕は気晴らしに散歩をすることにした。午前3時、この時期の夜はまだ冷えるので上着を羽織り家を出た。イヤホンを耳に付け、いつもの音楽を流し、巡る思考と共に慣れた散歩道に歩を進める。眠れない日に歩く決まった散歩道がいくつかあるのだ。
独りでいる時はいつも何か考え事をしてしまう。おそらく寝つきが悪い原因の大半もこの習慣のせいだろう。寝れない日というのは決まって大きな悩み事や考え事がある時であり、今日も例に漏れず思考だけグルグルと巡っていた。

僕はこの時点で一度大学を留年しており、休学と春休みが続いた長期連休が丁度明けた頃であった。将来について考える時間は沢山あったわけだが、この長期休みをもってしても考えが纏まることはなく、こうして現在も夜道を徘徊してるというわけである。

気持ちの昂りが抑えられない。
人生、自分が納得できる何かを成し得ないと価値がないと考えてしまう僕は、こういう時いつも何かしなければという気持ちでいっぱいになる。果たしてこのままやりたくもない大学を続けてやりたくもない仕事をお金の為にこなす人生でいいのかと。自分がやりたいことに忠実に従ってよいのだろうか、ましてそれはただの一時の感情かもしれない。かといって、やりたくないことを続けられるほど僕は優秀な人間ではない。将来の不安と期待が入り混じる不思議な感情に日々襲われているのである。

ふと足を止めて景色に目をやる。聴いている音楽は盛り上がりの佳境に入る。心が騒いだ。こうしてはいられないという感情でいっぱいになった。そんな一瞬の出来事。そんな些細なきっかけで人は大事なことを決定してしまうんだなと今になって思う。だが、突き動かされた心を止めることができなかった。
僕は自分の心の向く方向のままに生きようと決めた。



いいなと思ったら応援しよう!