「しろいろの街のその骨の体温の」は役に立つのか
この小説めちゃくちゃめちゃくちゃ面白かった。
歪んだ初恋と性の芽生えとスクールカーストの青春小説だ。
何が良いって主人公の初恋の相手、サッカー部の伊吹くんだ!
かっこよすぎる!伊吹くんの言葉はストレート。そしていつでも誠実、正論しか言わない。正論は人を傷つける節があるが伊吹くんは器がでかいから大丈夫。
主人公同様に、わたしも伊吹くんの一挙手一投足を追いかけてしまった。伊吹くんには世界がどう見えてるんだろう?と気になった。
さまざまクラスの恋愛模様が描かれていた。
例えば学校での文具の貸し借り、こんなことが今まで意識してなかった相手とのエピソードになるとのこと。そしてエピソードは宗教になって、やがて恋になるといっていた、わかる気がする。
恋とは違うけど、何気なく人と交わした言葉とか、何気なく行った場所が、のちのち自分の中で肥大化して、信仰となることあるもの。
江ノ島の恋人の丘にフナムシみたいに付いてる南京錠や板橋のパワースポット、縁切り榎の禍々しさ。やっぱり人はエピソードに支えられていると思う。
村田沙耶香さん、この本以外は「コンビニ人間」しか読んだことなかったけど、劣等感だとか周りと自分は違うんだ!という自意識の境界線。普遍的に誰でも標準装備されているバッドバイブスを丁寧に立体化させる内面世界が凄いな、と思った。