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奥出雲の農産物〈農業遺産関連〉
奥出雲町は農業の盛んなまちで、たくさんの農産物が生産されています。今回は特に、農業遺産に関連した奥出雲町自慢の農産物についてご紹介します!
仁多米
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奥出雲町で生産されるお米は「仁多米」と呼ばれています。その美味しさは古くから知られており、米・食味鑑定士協会が主催する『米・食味分析鑑定コンクール・国際大会』において、2021度までに計11回の「金賞」を受賞し、全国2例目、西日本では初となる「ワールド・ライス・アワード・ゴールド10(World Rice Award Gold 10)」に認定されています。また、平成28年2月には5年連続で金賞を受賞した団体のみに贈られる最高栄誉“ゴールドプレミアムライスAAA”の称号を与えられるなど、高い評価を受けています。さらに、奥出雲町は山陰地方で最も環境保全型農業に取り組んでいる地域(※1)です。伝統的な循環型農業の知識を発展させながら継承してきたことが評価され、全国環境保全型農業推進コンクールで農林水産大臣表彰(※2)を受賞したこともあります。
奥出雲町の農家さんによって大切に育てられている仁多米は、天皇皇后両陛下が欧州に訪問された際に、天皇陛下主催の晩餐会でご用命いただきました。また、モロッコ王国国王が仁多米を好んで食されているご縁から、2012年にはモロッコ王国のサミール・アルール駐日大使にご来町いただいた(島根県HPへのリンク)こともあります。
仁多米の栽培品種の多くはコシヒカリですが、それ以外に、もち米や酒米も生産されており、お餅や日本酒などの加工品もたくさん生産されています。
※1.2015年農林業センサスにおける「環境保全型農業に取り組んでいる実経営体」の割合
※2.奥出雲町の前身の旧仁多町において
ソバなどの畑作物
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奥出雲町では、いろいろな畑作物が生産されています。代表的な作物の一つがソバで、盛んに生産されています。全国に知られた「出雲そば」の有力産地で、特に、奥出雲だけで栽培される在来種の「横田小ソバ」と「猿政小ソバ」は、小粒ですが風味が良いことで知られています。町内には蕎麦を提供する店舗も多く(奥出雲町そばマップPDF)、全国から奥出雲の蕎麦を求めて多くの方が訪れています。ソバはハチなどの虫が花粉を運ぶことで実をつける虫媒花であるため、農地の周囲の生物多様性が高いと、ソバの収量も多くなるという研究結果があり、森林や草地に囲まれた奥出雲の農地はソバ栽培に適していると言えます。
また、キャベツ、大根、ニンジン、トマト、ホウレンソウ、エゴマ、ぶどうなど、たくさんの野菜や果樹が生産されています。
奥出雲和牛
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奥出雲町で飼養される和牛は「奥出雲和牛」と呼ばれ、肉用牛として高い評価を受けています。奥出雲和牛の起源は、砂鉄や木炭といった製鉄に必要な物資の運搬や農耕を牛馬で行い、使役に適した牛の血統を「つる牛」と呼んで、家族のように大切にしてきたことにあります。そして、たたら製鉄の経営者を中心に多数の牛が飼養され、使役に適した力強くて温厚な性質を持つ牛への改良も盛んに行われてきました。
奥出雲の和牛の名声を特に高めたのが、昭和45年(1970)に奥出雲のつる牛の血統から生まれた雄牛「第7糸桜号」です。全国の畜産農家が第7糸桜号の子を求めて集まり、その産子数は1万9261頭にのぼるなど、日本の和牛改良に大きく貢献した不朽の名牛として知られています。
また、奥出雲和牛の排泄物は、有機質堆肥として再利用され、水田の土づくりに活かされています。奥出雲町は、中国地方で最も堆肥による土作りをしている地域(※3)で、奥出雲和牛は、おいしい仁多米を生産するためにも重要な役割を担っています。
※3.2015年農林業センサスにおける「堆肥による土作り」をしている経営体の割合
シイタケなどの森のめぐみ
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豊富な森林を背景とした様々な森のめぐみも、奥出雲の暮らしにとって欠かすことができません。
たたら製鉄の操業には多量の木炭を必要とするため、たたら製鉄で栄えた時代は、森林は主に木炭生産のために利用されてきました。その後、木材以外の林産物の中心は、木炭からキノコ類に移り変わり、現在の主力はシイタケです。シイタケは、原木に直接植菌する原木栽培と、原木を粉砕したオガコを成形して植菌する菌床栽培の2つの方法で栽培されており、奥出雲はシイタケの一大産地となっています。また、菌床栽培では、マイタケやエリンギなども栽培されています。
このほか、多種多様な山菜の採取や、奥出雲では現在もたたら製鉄の操業が継承されているため、たたら製鉄の燃料となる木炭も小規模ながら生産されています。