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”運”の正体を暴きたい

まず率直に、私は自分のことを”運の良い人間”だと思っている。

どうにもならなかった時ももちろんあるが、これまでの30年を振り返ってみると困った時の7割くらいは誰かに助けてもらえたり、なんとか乗り越えられるキッカケのようなものがあった気がする。7割そんな感じなのだから、これはもう「私は運が良い人間だ」と言っていいと思う。

先日、集英社クオータリーの季刊誌『kotoba』が面白い特集をやっていた。
それが「運」の研究だ。

運というと、なんとなくスピリチュアルなイメージが先行するが、本誌では占星術、宗教、ギャンブル、将棋、経済学、哲学とさまざまな部門の専門家たちが”運”について書いているのである。
どの文章もとても興味深く、「へー」と「どういう意味?」を繰り返し呟きながらついつい読み進めてしまう。鳥頭の私では理解できない部分も多々あるのだが、何度でも理解しようとしたくなる。

しかし戻ってくるのはいつも同じところ。

で、つまり「運の正体ってなに?」

これは一人で考えてみるのも楽しいのだが、誰かと議論を交わすともっと良い。晩酌のアテにはもってこいだ。ちょっと飲みすぎるかもしれないが、きっと翌朝には残らない良い酒になるから安心してほしい。


▼コントロールできるのか否か


運とは何かを考える時、まずはどんな人も自分の経験を振り返ると思う。
私も友人もまずはそこから始めてみた。人生で起きた運の良かった瞬間、悪かった瞬間を出しあい、考える。

友人と私はふだんから色々なことに対する考えが似ていて気持ちいい。
だからきっと今回も両者似たような結論になるのだろうと予想していたが、結果的には違った。その違いこそ、運の「コントロールの可否」である。

友人の考えを端的にまとめると、運とは”結果”なのだそう。

運は、普段の行動や意識を変えれば良くなるものであると友人は言う。
運の良い人というのは、そうなるべくしてなっている。つまり、運が良い状態を維持するためになんらかの行動を起こしているのではとのこと。

例えば、友人はよくゴミを拾う。
誰かの前だからやるのではなく、落ちているものがあったら拾うようにしているらしい。こういう行動は必ず誰かが見ていてくれるし、その姿勢は仕事にも現れるからというのが大きな理由なんだとか。

確かにあのスーパーヒーロー大谷選手も、ふだんから積極的にゴミを拾っている。
ゴミ拾いは運拾い、なんて言葉もあるくらいだ。そして運が良くなるための行動として、書籍なんかでも紹介されることが多い。この説を唱える友人も、周囲から厚い信頼を集めるベテラン経営者である。一理どころか百里くらいありそうな説得力だ。

では対して私は運とはなんだと考えるか。
これはもう一言、「神の一手」である。

私は一応、漫画家という肩書きを持っている。
ありがたいことに連載もさせてもらっているし、出版社からお声がけしてもらえることもある。きっと私の漫画を見たことのある人は「なんでこの程度の絵のうまさでプロになれるのか?」と一度くらいは思ったことがあると思う。わかる。
しかしこれこそ、私が自分を「運が良い人間だ」と言い切る所以なのだ。

私が漫画家になれたのはラッキー以外のなにものでもない。だって、素人がいきなり60ページの原稿、それも単行本でデビューしたのだから。運以外の要素がゼロなのだ。これを神の一手と言わずしてなんと言おうか。予測すらもできないこの不確定要素をコントロールなどできるはずもない。まさに、神のみぞ知る領域だ。

だが決して努力することや行動することに意味がないと言っているのではない。ほしいと思う結果があるならば、それに向かってどんどん課題をこなしていくべきだ。しかし、結果には努力が全てだと思わない方がいい。努力は必ず報われるという人もいるが、私はそうは思わない。世界中の飲み込まれた涙をぜんぶ集めたら、きっと海になる。報われなかった努力なんぞ、そこらじゅうに転がっている。
だからこそ、結果の良し悪しには自分の努力量とは関係のない要素が関わることも十二分にあり得るのと想定しておくべきなのだ。


▼運を考えてわかったこと


今回運について考えてみて、わかったことがある。
それは、運に対しての考え方は、そのままその人の人生観を反映しているということだ。

友人は少しづつ着実に実績を重ねて結果を出す人生を送っているし、私は実に波の多い人生を送っている。運に対する考え方が、まさに鏡のようになっているのではないだろうか。

運とは一体なんなのだろう。この問いに正解は存在するのだろうか。
いや正解がないからこそ、人は運という言葉に何世紀にもわたって惹かれ続けているのかもしれない。

もし興味のある人がいれば、ぜひ集英社クオータリー『kotoba』の購入をおすすめする。ここはぜひ書店に行って、紙の本を手にとってほしいと思う。
そして運についてぜひ考えてみてほしい。
あなたにとって運とはどんな存在なのだろうか。叶うならぜひ色んな人の話を聞いてみたいものだ。

最後まで読んでくださったあなたに幸運が訪れることを祈って。


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