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ハダカデバネズミ

 パソコンのデスクトップ画像を変えようと、疲れた頭の保養になる画像を探していたら、われこそはと私の心を掴んだものがありました。

ハダカデバネズミ。

名前の通り、裸で出っ歯なネズミであります。誇張も虚飾もなく、見た目の通りのありのままを掲げる名前の潔さもよし。「おっしゃる通り、私は裸で出っ歯です!」と、シワシワでくすんだ皮膚を堂々と晒し、収納できない長すぎる前歯を誇らしげに見せびらかす大胆さも素晴らしい。

興味を持って調べてみると、ますます驚嘆しました。

https://www.businessinsider.jp/post-205058

東アフリカで100匹もの群れをなして生活している彼らは、実に秩序正しい社会生活を送っているのです。群れの中で赤ちゃんを産むことができる女王様はたった1匹。彼女と交尾をゆるされるオスは1-3匹で、残りは外敵が侵入してきたときに真っ先に駆けつけて自ら命をささげる(食べられる)兵隊と、その他の雑用をこなす働きデバたちで構成されています。そしてなんと、女王に赤ちゃんが生まれると、働きデバの一部が床に寝そべって「肉布団」になると言うのです。寄り添って、お腹をベロンチョと出して仰向けになり重なり合って、少しでも快適なベッドになるべくひたむきな姿は感動的で、私はその滑稽さを笑うことができませんでした。階級社会の底辺にあって、新しく生まれてくる命を守るために懸命に身を捧げる働きデバたちの、なんと健気なことでしょう。気になった方はぜひ画像検索してみてください!キーワードは「ハダカデバネズミ・布団」。


感動しすぎて、夜布団に入るとますますハダカデバネズミで心がいっぱいになり、あれこれ想像が膨らみました。

どうせ布団になるならば、生まれたての赤ちゃんの息を感じ、温もりに触れられる場所がいいな……なんて思ってしまう時点で、自己中な私には布団係は失格だなとか。

はたまた女王様は彼らの上にで〜んと横たわって一体どんな気持ちなんだろう??いつライバルに地位を奪われるか、不安な夜を過ごしてはいないかなとか。トップに立つものとして、重責と孤独に苛まれてはいないかなとか。仲間がいっぱいの働きデバがやっぱり羨ましいのかなとか……。


 ハダカデバネズミの素晴らしさを語りたいばかりに脈絡のない文章になりました。彼らの姿に感動するのは見かけとのギャップというか、見えていない部分の実態を知ったからこそだと思います。

私たちも同じことが言えるように思うのです。いつも明るい人の中に悲しみがないかというとそんなことはないし、いつも暗い印象の人に楽しみがないかといったらとんでもない。いつも強い人の中に弱さがないかというとそうではないし、いつも優しい人の中に厳しさがないかというとそうじゃない。

私も、いつも見えている(見せている)自分とは正反対の自分を、もっと気にかけてあげたいなと思います。同時に人と接するときも、相手に見えるいつもの「その人」とは正反対のその人を心で見て受け止めることができる人でありたいと思います。ちなみに、いつもは弱虫ののび太くんが映画の中では勇敢に立ち上がる姿も感動的ですが、いつも強い人が時々かいま見せる弱さや脆さに、私はむしろ心がホロっとするものです。


私のパソコンのデスクトップには、インディカ種の米粒みたいな長い歯をニュィッと出した、愛くるしいピンク色のハダカデバネズミがいます。誰にどう思われようと、しばらくはこれを愛用する所存です。
 

 

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