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今夜はブギーバック【小説】
退屈の原因が僕自身にある気がしていた。
なにかしら、積極的に、「楽しさ」を求めないと、このままずっと、満たされないままなのではないかと、怖かった。
僕は街へ出て、お酒が飲めて、人と出会える場所へと行ってみた。
薄明かりのなか、比較的静かな店内で、何組かの男女が会話をしていて、何人かのシングルの男女がいた。
僕は隅っこの暗がりに座り、来なければ良かったと、後悔する。
そういうことなのかもしれないと思ったのだけれど、こういうことではないようだ。
僕は飲めないお酒のメニューを眺め、ビールを頼んだ。
あとは店を出るタイミングのことばかり考えていた。
ビールが届いた頃に、店内のBGMで「今夜はブギーバック」が流れ始めた。
古い曲。
でも、知ってる。
僕は耳をすませ、この曲を何故知っているのか思い出そうとした。
そして、所々の歌詞を頭の中でリフレインした。
昔の歌。
口説いたり、駆け引きしたり、ラップだったり。オシャレな雰囲気を演じたり。
なんか、色々めんどくさいと思って、だけど、めんどくさいを言い訳にそのまま時間が流れていく怖さに怯えている。誰と出会えれば、僕は救われるのか考えている。
昔の歌。
でも、昔も今に流れている。
けれど、昔として、今にいる。
今の僕も、また昔になる。
ビールを一口、美味しくない。
僕は店を出た。
そして人通りの少ない場所を探し、静けさに身を委ねた。
頭の中で、「今夜はブギーバック」が流れている。
寂しい。
僕はもう一度、ちゃんと聴きたいなと思い、iTunes Storeで、「今夜はブギーバック」をダウンロードした。
そして、リピート再生しながら、少しだけゆっくりと歩いた。
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