歌のコンビニ店員お兄さん。
「不愉快なことがあったからと言って、その後のすべてが苦しいわけではない」
僕が休んでると、コンビニ店員のお兄さんが、僕に言った。
言ったのかな?
僕が振り返ると、今度は僕の顔をしっかりと見つめ、
「そういうことです」
と、言った。
僕が黙っていると、
「あのね、おじさん、これ俺の歌の歌詞なの。不愉快なことがあったからと言って、その後のすべてが苦しいわけではない。俺を見ろ。今は幸せさってさ、」
「……」
「その後、アイオンチュー、アイニーデュー、君は俺になれるって続くんすよ」
「……」
「なれないまでも心は一つ、なったも同然。いつも一緒さベイビー、オウオウオ」
「……」
「いい歌だろ? 聞きたい?」
僕は、乗り掛かった舟だと、頷いた。
コンビニ店員のお兄さんは、ゴミ箱の片づけをいったん止めて、僕のために、その歌を歌ってくれた。
意外にバラードで、曲は悪くなかった。
楽しそうに歌うお兄さんを見ながら、なんて馬鹿な歌詞なんだろ。でも、今、楽しいんだろうし、まあ親切だよな。と、思った。
「どう? 元気出た?」
僕は頷いた。
「良かった。あんたも俺になれるよ」
と、むちゃ笑顔で、ゴミ片付けに戻っていった。
僕はとくに不愉快なことがあったわけではなかったが、一応、元気になった。
素晴らしい。
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