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ウキワー。

「ウキワー……」
と、呟き、溜息を吐いた。

海辺。
ポカンと海を眺めながらの休憩。
サーフィンを楽しむ人がチラホラ。
サーファー……。

波がバシャーンっと来て、ボードの上に立って、ふゅーって。
楽しそうだなぁ。
きっと、楽しいのだろうなぁ。

たぶん、競争とか、売り上げとか、名誉とか、承認とか、そんなんではなしに、「楽しい」んだろうなぁ。
そこから這い上がって、勝ち上がって、一攫千金を手に入れるのさとか、そんなん思ってるとかないんだろうなぁ。

海に入ると気持ちいいもんな。
ああ、気持ちいい。ああ、楽しい。

そんな純粋な、「喜び」みたいなものに見えて、羨ましくもあったり。

ただただ、「楽しい」を感じたい。
サーファーを眺めながら、まだ幼稚園の頃、近所の宮代くんちの組み立て式すべり台を、戦隊ものの主題歌をガンガンかけながらただただ、すべり続けた、ひたすら楽しかった記憶が蘇る。
なんで、あれが楽しかったのか今では分からないけれど、それに通じるものを感じるサーファー。

そういや、前にも似たようなこと書いてたなぁ。

でも、やっぱり、サーファーにはなれない。
なんか、ちょっと、「そこまで」じゃないのだ。

僕は、なんつーか、浮輪でぷかぷか海辺に浮いていたい。
浮輪で浮く人。そう、ウキワ―。

人がいない海辺で、浮輪でただ浮いている。
「週末は、浮輪です。ウキワ―ですから」
と、サーファーぐらいの地位がウキワ―にあれば。

ウエットスーツ着こんで、黒い大きめの浮輪を片手に颯爽と歩き、海に入り優雅に浮く。

いやいや、ウキワ―は、サーファー的な位置づけにする必要はないのだ。
これが、僕の求めている喜びであり、余計な装飾はいらない。
ただ、浮けばいい。卑屈になることはないのさ。

そんなことをサーファー達を眺めながら、あそこで、浮くと、サーファーに轢かれそうだなぁ。と思い、少し寂しくなる。

「ウキワ―……」

いつの日かウキワ―。


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