退屈の贅沢さ【短編小説】
事故らしい。
ということで渋滞。
バスが動かない。
遅刻するのが確定。
その旨、会社へメールで報告。
「……」
いきなり時間ができた。
窓からの景色は、車、車、車。
バスの中は意外と空いている。そういえば祝日だった。なんで仕事あるんだろ。
休みたいな。
ツイッターを眺め、一通り目を通したらうんざりした気持ちになり閉じた。
最近、刺激的なものばかり探していることに飽きていた。興奮するようなものを期待して、少し満たされると、また興奮するものを探す。
昨夜ふと、ネットサーフィンをして、気がつけば夜ふかし、頭の中は騒がしいが満たされていない。他にも、他にもと、なっていて、
「……」
僕はただ座って画面を何時間もずっと眺めている。
と、気づく。
なんか、頭の中は騒がしいが、状態としては、「停止」で、心の中は「満たされなさ」が繰り返される。次は刺激が来るのかもと。期待して寝不足へ。
「退屈」を「期待」で埋める。
それは、たぶん、満たされない。
ヤダな、アレ。
と、思っていた。
いかにして退屈を楽しさへと変えることができるのか?
「退屈」を「充実」で埋めるには?
と、バスの車内を眺める。
乗客は8名。
寄りかかってスマホを眺めている人。
うつむいてスマホを眺めている人。
姿勢正しくスマホを眺めている人。
その他スマホを眺めている人。
それぞれが、それぞれの暇の潰し方をスマホで行っている。ゲームしたり、動画みたり、本読んだり、記事みたり、呟いたり、Lineしたりしてるんだろうなぁ。
「……」
思考停止してみたい。
と、思う。
せっかくの退屈なのだ。
誰かと共有しなくていいし、説明しなくてもいい、僕の個人的で贅沢な退屈。
退屈とは幸せな状態であると、どっかで聞いたことがある。この退屈から心が幸せを感じられるのか知りたい。
ポカンと、目の前を「ここ」にいることで、満たしたい。
できるのだろうか?
と、「感じれる」か、ポカンとしてみる。
日光。今日は穏やかで暖かい。光の加減は柔らかく、この感じの光と思い出を照らし合わせる。
小学生の頃、自然教室で薪になる木を集めている途中、ふと集中が途切れ感じた、間。そこでの光。静けさ。一人。
ああ、あったな。
と、心地良さに包まれる。
「……」
目をつぶる。
最近、あまり喋らなくなったな。
まあ、いいか。
いい。
ふと、ふわぁと、心地良くなる。
なんか、贅沢かも。
「えぇ、ソソシャン、シャア、ササゲぇコデシャボぇください」
と、運転手さんの篭って何言ってるからわからない車内アナウンスが聴こえる。
「……」
ふと、外を見る。
なんか、色々できる気がする。
仕事休みたいな。
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