満員電車も空く【短編小説】
満員電車が空いてきた。
みんな高齢で亡くなったのだ。
電車に揺られ、昨日と今日の違いがわからないまま。
身体が壊れ、死んでしまう。
「……」
満員電車が空くのはいいとして、そもそも、この電車に乗り続けていいのか?
と、男は思った。
ある日、ふと周りを見回すと電車内が満員だった。
男は少しホッとした。
まだ、満員電車に乗っていて良いのかも。
「?」
が、よく見ると、多くの乗客たちが透けているのがわかる。実態がないのだ。
そして、聞いたこともない駅に停車して、その乗客たちがゾロゾロと虚ろな目をして、礼儀正しく列を守ってホームへと降りていった。
再び電車内が空いた。
男は寒気がして、掌をさすった。
違和感がした。
なんとなく自分が透けている気したのだ。
「……」
次の日、男は満員電車に乗らなかった。
なんとか、身体は透けずにいるらしい。
🔷こちらもよろしくお願いします。
よろしければサポートお願いします。大切に使わせていただきます。