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引っ越しバイトのあのジジイ【小説】

通りがかりに引っ越し。

トラックから荷物が続々。
それを眺めながら、引っ越しバイトをしたときのことが過る。

うるさい重鎮の爺さんがいて、バイトを馬鹿にしまくる。
そんなものも持てないのかとか、最近の奴らは根性ないとか、全然ダメだとか。
ずっと言いながら、なんかトラックの中で、あんま動かない作業してる。

周りの若い人たちは、ちゃんと距離をとりつつ、出来るだけ相手にしないようにしている。
僕はなんか腹が立って、逆に重いものを持ちまくる。
で、爺さんご機嫌になって、褒めてくれる。
「お前は違う」
と、
けど、このキャラ設定にも限界がある。

荷物を積むときはよかったけれど、今度降ろす番になった時、握力がなくなっている。
「だからダメなんだ」
と、また言いまくる。

で、他の社員さんが少し慰めてくれた。
「気にしなくていいから。あれでしょ、三階から一人で運んでたんでしょ?」

バイト代が入った封筒をもらって帰りながら落ち込んだ。

そういう人がいて、成り立っている場所ってのもあるんだろうなぁと思いつつ、すげー恨みかってるんだろうなぁと。
悔しくて、胸が苦しくなった。

そんなことが、色々な場所で起きてるんだろうなぁ。
と、今でも思う。

思い返しても、あのジジイ嫌い。
実際、ジジイは動けなくて、でも、お金は必要で、ああでも言ってないと、自分が攻撃されるかもという不安からの行動だったとしても、嫌い。
一生会わない、数時間だけしか過ごしていない誰かに、ずっと嫌われているという、ジジイ。
と、そんな人にならないようにしようと考えたり。

みんな頑張れ。僕も頑張る。
と、思う。


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奥田庵 okuda-an
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