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石川臨太郎の「生涯パートナー銘柄の研究」T&K TOKA(4636) 2009/04/28


※企業情報や数字等は当時のものです。またリンク先の変更によりリンク切れの場合があります。あらかじめご了承の上お読みください。
 なお、T&K TOKAは2024年4月に上場廃止しております。参考としてご参照ください。

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-------------------------2009/04/28号--

        石川臨太郎の「生涯パートナー銘柄の研究」
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 億の近道火曜日の大人気執筆者、石川臨太郎が皆様へお贈りするメールマガジンの第18回目です。週に1回(火曜日)配信いたします。
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 どうぞよろしくお願い申し上げます。

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            ◆Contents◆

 ◇銘柄研究「T&K TOKA(4636)」
 ◇コラム「投資という戦闘を実行する兵士としての自分をいかに鍛えるか」

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◇銘柄研究 T&K TOKA(4636)

 本日は2009年第2集の四季報情報によると紫外線硬化型インクの市場シェア6割を占有するT&K TOKA(ティーアンドケイ東華)を研究対象として取りあげます。(T&K TOKAでは「インキ」という言葉を使用していますが、このレポートでは一般的に使われている「インク」という言葉を使用させていただきます。)

 紫外線(UV)硬化型インクというのは、印刷時に紫外線(UV)を照射することで硬化し、素材の表面に色が定着するインクです。アクリル、ガラス、木材などさまざまな素材に印刷することが可能で、用途が広いです。また、紫外線により瞬時にインクが硬化するために、フィルムなど薄い素材に印刷しても裏移りなどの問題がなく、さらに揮発性有機化合物が発生しないインクとして、環境面、安全面からも高い注目を集めています。質感ある表現、凹凸の表現も可能で、女性のハンドバックなど皮革製品への印刷にも使用されています。

http://www.tk-toka.co.jp/

http://www.tk-toka.co.jp/product/ink/uv/index.html#sec1

 残念ながらT&K TOKAのホームページには印刷物の見本などが見つけられなかったので(IRに確認したら契約上の守秘義務などの問題もあり、最終製品をホームページに開示することは難しいとのことでした)、紫外線(UV)硬化型インク用のインクジェット・プリンターを製造しているローランド・ディー・ジーのホームページをご紹介しておきます。

 ここでも守秘義務の問題があり、ローランド・ディー・ジーがT&K TOKAの紫外線(UV)硬化型インクを使用しているかどうかも確認することは出来ません。しかし紫外線(UV)硬化型インクがどのように使われているかを具体的にイメージしていただくためにご紹介しました。

 T&K TOKAの「紫外線(UV)硬化型インキの市場シェア6割を占有している」と四季報に書いてあるので、IRに確認してみました。紫外線(UV)硬化型インクの原料にはヨーロッパのある企業の特許品を使用することが必要で、そこからしか調達できず、その原料の使用量(←特許保有会社の日本への販売量からT&K TOKAの購入量を比較することで計算するというイメージです)から、紫外線(UV)硬化型インクの市場シェアを推定している。各種メーカーの紫外線(UV)硬化型インクに使用されている、その特定原料の含有量はそれほど違わないから、かなり正確にシェアが推定できるということを教えていただきました。つまり市場占有率6割はかなり確率の高い推定だということが分かりました。
 なお市場というのは国内か国外かが明確ではなかったので、その点も確認しました。この6割というのは日本国内のシェアだとの回答を得ました。
 当社の有価証券報告書を読むと、日本国内ではインク使用量の3%程度しか紫外線(UV)硬化型インクが使用されておらず、今後は普及が進み、売上の拡大が期待できるという話も聞くことができました。

http://www.rolanddg.co.jp/lec300/express1.html

 上記のホームページで紫外線(UV)硬化型インクの性能を確認できたことで、T&K TOKAの過去の業績が良い理由が納得できました。水(液体)や空気(気体)以外には印刷できてしまいそうです。利用方法はまだまだ増えていきそうです。

 ジャスダック市場への上場は1997年ですが、設立は1947年月と古く、不動産など資産背景も充分に持っています。また創業から60年以上インク専業としてノウハウを蓄積してきたこと、小ロット多品種という顧客の要請に応えてきたことにより、高いシェアを確保し、サブプライム問題による急速な景気悪化以前には、高い収益力を持ち、現金性資産も充分に蓄積しています。

 海外進出も早く、インドネシアには1971年に進出しています。2008年3月期にはインドネシア子会社の遊休地(旧工場用地)を売却しました。最終代金は2009年2月に受け取る予定で、物件引渡しは前期となります。売却益は為替の変動により変わるとのことです。

http://www.tk-toka.co.jp/ir/data/h1908_kotei_shisan.pdf

 上記のIRには以下のような注意書きがあります。

「6.今後の見通し
株式会社チマニートオカの決算期は、毎年12月31日であり、上記物件は引渡し時に売却益を認識することから、平成20年3月期及び平成21年3月期連結決算においては本件による影響額は軽微であり、平成22年3月期連結決算に「固定資産売却益」約10億5千万円(譲渡経費控除後)を特別利益に計上する見込であります。
*譲渡価額及び今後の見通しのインドネシア共和国通貨から本邦通貨への換算は、平成19年8月20日の為替レートにより行っておりますが、固定資産売却益の計上は引渡し時のレートにより換算するため、上記の譲渡価額及び固定資産売却益の金額は変動する可能性があります。」

 インドネシア子会社の設備投資のために、当社より子会社に融資した貸付金の為替差損も前期業績悪化の原因になっていますが、インドネシアの借入金利は高く、キャッシュを社外流出させないために(←IRに確認したところインドネシア立てで借入をして払う金利と、為替差損の額を比較すると、為替差損がでても親会社からの融資の方がメリットが高いと判断して行なっているとのことでした。)政策的に行なっているもので、問題はないと判断しました。いちいち為替差損を気にしていたら海外進出などできません。

 韓国や中国ばかりでなく、インドネシア、バングラディッシュ、サウジアラビアにも積極的に展開しています。したがって、今後円高が進んだとしても、充分対応できる企業だと考えます。

http://www.tk-toka.co.jp/corp/interested_comp_asia/index.html

 まず資産価値から確認していきたいと思います。

http://ir.nikkei.co.jp/irftp/data/tdnr1/tdnetg3/20090203/5hco5f/140120090127075523.pdf

 平成21年3月期の第3四半期の決算短信から調べました。必ず自分の眼で確認する癖をつけてください。

 現・預金52.8億円
+投資有価証券19.2億円
+売掛債権(売掛金+受取手形)160.7億円
+在庫65.4億円
+土地簿価58.4億円
-全部の負債(他人資本全部)208.5億円
=148.0億円。

 時価総額は原稿執筆時(4月24日終値)の株価595円で計算すると、
74.3億円になります。決算短信発表時の自己株式は株数に含めず計算しています。

 海外進出が早いので海外に所有する土地や、国内の所在地が特定できない支店などの土地の含み益相応に見込めそうですが、東京本社と埼玉工場だけの土地を前年の近隣公示地の価格を参考に推定すると92.5億円程度の含み益がありそうです。

 土地の含み益を計算しなくても、正味流動資産(流動資産-全部の負債)だけで時価総額の約1.2倍の資産価値があり、土簿価と確認できた土地の含みだけで、時価総額の2倍の資産価値があります。充分に 割安だと判断します。

 土地を除いた固定資産など、上記の資産価値に計上しなかった、資産を見てみます。

(建物138.3億円+設備130.1億円-減価償却累計189.9億円)+その他の資産61.7億円
=140.2億円。

続いて事業価値を定性的に考えてみたいと思います。

http://www.tk-toka.co.jp/

 当社は技術開発力が高く、インク専業として新商品の開発を積極的に進めています。

 研究開発費の推移は06年3月期936百万円、07年3月期934百万円、08年3月期1072百万円、09年3月期予定1285百万円となっています。

 詳しくは09年3月期第2四半期の決算説明会補足資料で確認してください。

http://ir.nikkei.co.jp/irftp/data/tdnr1/tdnetg3/20081112/5csfj4/140120081112012768.pdf

 09年3月期については子会社貸付金などに対する為替差損で15.2億円の特別損失を計上します。

http://ir.nikkei.co.jp/irftp/data/tdnr1/tdnetg3/20090106/5g37b1/140120090106054173.pdf

 そのために経常利益予想は11.2億円の黒字でも、最終損益は2.5億円の赤字予想となります。今後とも円高が進むと予想されますが、政策的に行なっている子会社に対する貸付金によるものであり、当社の資産背景、本業の業績から考えて不安視する必要はないと判断します。

 過去の経常利益の推移を見ると06年3月期37.4億円、07年3月期40.1億円、08年3月期41.5億円、09年3月期予定11.2億円となっています。

 もっと分かり易く一株利益の推移を見てみると06年3月期114.3円、07年3月期183.4円、08年3月期229.4円、09年3月期予定▲20.1円となっています。

 機械装置も作っていますが、販売の主力はインクという消耗品です。しかも用途が広く、環境面、安全面からも高い注目を集めている紫外線硬化型インクの高いシェアを持っています。消耗品を販売するためには、よい商品を生産しているだけでは充分ではありません。専門知識を持った顧客の要求に対応することができる営業の力が不可欠です。その点から考えても、インク専業メーカーであるT&K TOKAの競争力は高く、ユーザー各社の縮小しすぎた在庫圧縮が終われば、業績の回復も早いと考えます。

 このように将来有望な市場で高いシェアを確保している資産背景を充分に持っている高技術企業の株価が、投資環境の悪化で大きく下落している時に購入し、株価の乱高下に惑わされずに、中長期で保有する。すなわち長期の資産形成のためのパートナーとして投資の対象として検討するに相応しい、充分期待できる企業だと判断します。

 先週も書いたようにT&K TOKAの決算短信の発表は5月8日の午後1時から行なうようなので、その前に充分検討し、決算短信を確認した上で投資すべきかどうかを判断した方がよいと考えました。

 会社四季報の今期2010年3月期業績予想は売上が09年3月期の第3四半期までの9ヶ月間の売上と同じ程度の金額と予想しているのに、営業利益や経常利益は第3四半期と同程度とはせずに、急速に世界中の製造業が在庫圧縮のために生産を圧縮した、異例の第4四半期を含めた通期業績予想の営業利益や経常利益を売上高で割り算して利益率を出し、鉛筆を舐めて修正して形をつけたような金額になっています。トヨタのような企業でさえ、業績修正を連続で出したような状況ですから、誰にも今期(2010年3月期)の予想など正確にできないことは理解できます。しかし四季報の予想はあまりにも荒っぽいと感じます。
 もちろん私にも業績が予想出来るわけではありませんが、T&K TOKAの販売するのは消耗品のインクだということを考えるなら、もう少し良い数字が会社から発表されるのではないかと推定しています。もちろんもっと厳しく悪い数字が出てくる可能性もあるので、注意は必要です。

【過去研究銘柄ショートコメント】

 第15回目の研究銘柄パナソニック電工インフォメーションシステムズは23日に前期の決算短信が発表され、今期もわずかながら増収増益を維持することが分かったので、発表翌日の24日は前日比106円高になりました。

http://ir.nikkei.co.jp/irftp/data/tdnr2/tdnetg3/20090423/5mejl4/140120090422061000.pdf

 先週17回の研究銘柄である東映アニメーションは本業が好調で、予定より更なる営業増益、経常増益になったので増配を発表しました。

http://ir.nikkei.co.jp/irftp/data/tdnr2/tdnetg3/20090424/5miwz7/140120090424064979.pdf

 まだアメリカ株式市場の乱高下のために、踏み上げ相場はクライマックスをむかえていないようにも思えますが、このような経済環境下でも本業で業績を伸ばせる企業には冷静な投資家の資金がすでに流れ込み始めたようにも感じます。東映アニメーションも前期決算発表の前に株価が動き出してしてくれるかもしれませんね。

(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)

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◇コラム:投資という戦闘を実行する兵士としての自分をいかに鍛えるか(第1回)

 株式投資に必要な能力にもいろいろありますが、投資を実行する(=株式市場という戦場で戦闘行動を行なう)兵士としての自分をどのように鍛えていくかを、本日からは考えていきたいと思います。

 国家間の戦争も、ビジネス戦争も、スポーツも株式投資も勝利を目指す闘いと言う視点でとらえると、闘いであり、戦争遂行に必要な能力と同じようなものが必要になります。

 戦争を考える場合、戦争をするためには、その戦争の目的が必要です。その目的を達成するために「戦略」が大事で、次に「戦術」が必要。そして一番レベルの低いところにあるものとして戦闘力(=兵士の力)が語られます。

 株式投資で言えば、テクニカル分析とか、投資のタイミング、損切りなどというのは戦闘レベルの話と、言われることが多いです。戦略が一番大事で、戦術が戦略の次に大事。そして戦闘は一番ランクが下位のレベルといわれることが多いです。しかし、いくら戦略論に優れ、戦術論に長けていても、兵が弱ければ戦争に勝つことは出来ません。戦略も戦術も絵に書いた餅となり、無用の長物を化してしまいます。国を富ます時に「富国強兵」といわれるように、兵を強くすることもとても大事なことなのです。

 国際関係における世界の戦略の大家たちは、まずは外交力を駆使して、戦争をしないで自国の目的を達成することを考えます。そして戦争が必要になったときに、やむを得ず戦争という手段を使いました。

 私も、多くの読者の皆さんも資産運用の大きな目的の中に「所有している資金を運用することにより、資産を形成し、その資産が生み出すキャッシュで生活費を賄う。そして豊かな生活を維持していく」という項目が入っていると思います。

 ここでは、議論を進めていくために、一時的に株式投資を戦争として考えたいと思います。豊かな生活をするために、株式投資をする必要がないならば、いいかえると、株式投資をしなくても豊かな生活を送るための資金が充分にあるならば、あえて株式投資という戦争を選ぶことはないと考えます。

 2年前までは個人投資家が信用取引を利用して、瞬く間に10億円近くの資産を築く人も出てきました。数百億円の資産を築いた人も出ています。数百億円の資産を築いた人はビルを所有して、安定収入を確保したようです。流石だと思います。

 数億円程度稼いだ投資家にも、一部の資金を株式から分離して安定収入を生む資産に切り替えた人もいると思います。でも増やした資産を株式投資を続けることで失ってしまった投資家も沢山いるようです。

 そのような投資家が、株式投資(という戦争)の目的をどのように設定していたか、私には分かりませんが、もし「一生安心して生活できる資金を手に入れる」という目的で株式投資を行なっていたとするならば、2~3億円もあれば、家賃利回り6%~10%程度回る賃貸不動産が沢山あったので、資金を一部賃貸不動産に移して、当初の目的を充分達成できたはずです。その時点で全面戦争を終結する。(←一部の資金で小競り合いは続けたとしても…)必要のない戦争はすべきではないのです。そして戦争の目的を達成した時は戦争を終わらせるか、戦線を縮小すべきです。
 資産運用の世界では、アセット・アロケーションで株式から、元本保証の定期預金や、金や賃貸不動産に資金をシフトすることが、戦争の終結にあたると考えたら良いと思います。

 しかし、私もそうですが、多くの読者の皆さんも、経済環境が激変する社会において、将来的にも豊かな生活を維持するに充分な資金を確保するために、株式投資という戦争を選ばなければならない状態にある人々(=私や読者の皆さん)であると考えて話を進めたいと思います。つまり私にも読者の皆さんにも株式投資という戦争が必要だと言う前提に立って話を進めていきたいと思います。

 戦略は、決まっています。「株を安いときに買い高くなれば売る。」これが、ほとんどの個人投資家の戦略だと思います。生涯パートナー銘柄の研究でいえば「企業の株価が、その企業の内在的価値(=資産価値+事業価値=本当の価値)より安いときに買って、高くなったら売る。」ということです。

 戦術は資金(=武器・弾薬)を二分して「世界から必要とされる高い技術を持ち、財務内容も良い企業の株を中長期で所有する」という戦術をとる部隊と「高技術力は持っていないけれど、安定的な事業基盤を確立しており、過去の利益ですでにバランスシートに資産を豊富に蓄積している財務内容が良く、高いインカムゲイン(配当+優待)を継続的にはらってくれる確率の高い企業の株を高利回りのときに買って所有する」という戦術をとる部隊。この二つの戦術を駆使して、株式投資戦争に勝利を得ようとするわけです。
 そして戦争の勝利とは→戦争の目的である「所有している資金を運用することにより、資産を形成し、その資産が生み出すキャッシュで生活費を賄う。そして豊かな生活を維持していく」を達成する、ということです。

 戦略と戦術は決まっています。でも私や読者の皆さんの戦闘力が弱ければ、戦略も戦術も机上の空論で無意味になり、愚かな弱兵(=自分)が無駄弾を撃ち続け部隊は自滅敗北してしまいます。次回からは戦闘場面での戦闘力を高める方法論などを考えていきたいと考えています。

(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)

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発行者:NPO法人イノベーターズ・フォーラム
 email:magazine@iforum.jp
 http://www.iforum.jp/
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