小説「株仲間のぼやき(その1)」
東京の晴海には株好きな仲間が集まって、ワイワイと賑やかな集まりをする場所があるらしい。
トリトン株同好会というこの集まりには株投資のベテランから初心者まで約20人のメンバーがいて、月1回の懇親会ではお酒を酌み交わしながらお互いに持っている株を披露しているとのこと。
先週もまたこの集まりがあったらしい。
会長「この間、買った株はまた下がったけど、安いよな。でも本当によく下がってくるな。」
この会の会長はいわゆるバリュー銘柄が好きで、延べ40余りの銘柄に投資しているようだが、その多くはバリュー銘柄とのことだ。
与太「会長、下がっているって、何買ったの?」
会長「岡山の建設コンサルタント会社、ウエスコホールディングス(6091)は親しくしているアナリストの意見に従って決算で配当が取れる7月を目標にコツコツ安いところ拾って上がってきた。でもその調子でこのアナリスト
が言う別の中堅ゼネコン株を安いと思ってちょっと買ったら、そこからまだ下がってきたよ。」
与太「会長はいいな、金持ってるから、アナリストとお友達なの?」
「で、会長、その銘柄は何?」
会長「聞きたいの?」「お金かかるよ。(冗)」
「イチケン(1847)だよ。この株は聞いて驚くな、PER4倍だぞ。しかも配当利回りとくりゃ、5%以上だぞ。もちろんPBRも低い。確か0.6倍を切っているからな・・。」
与太「会長はバリュー株好きだな。そういえば会長が好きなあの株はどうなった?」
会長「あの株って、ああ、あれか。テノックス(1905)な。これも塩漬けだよ。」
「うちの大将と一緒にかれこれ30万株は集めたけど、それにしても動かんな・・。」
与太「大将って、今日は来てないけど、あのラーメン屋の大将ね。」
会長「大将はな、そんじょそこらのラーメン屋の大将じゃないぞ。すごいんだぞ。」
「俺の知り合いで子飼いのそのアナリストが強力に推したIT株をしこたま買って四季報に名前が出たなんて冗談のようなホントの話だからな、俺はついていけずにいたらあっと言う間に株価は倍にまでなったから、驚いたよ。」
与太「そのアナリストは今日は来ないの?」
会長「呼んでおいたが、あいつは時間にルーズだから、遅れてくるよ。俺みたいに時間を守ってくれりゃ良いが、あいつはわが道を行くタイプだから、言ってくる銘柄もちょっと変わっているよ。」
与太「変わっているとは言っても面白そうなアナリストだな。会長、そのアナリストとお友達になっても良い?」
会長「ああ、いいぞ。紹介してやる。その代わり、俺に紹介料くれるな?」
与太「???」
会長「まあ、今日はな特別サービスでみんなにも紹介しておくから。与太も名刺交換でもして今日いきなりストップ高したSansanのサービスでも受けて管理しとけ。」
賑やかな賑やかな株仲間の会話が夕闇迫る晴海の事務所に広がった。
(次回に続く・・・)
(炎)
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