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短期投資家の投げをどっしり構えた中長期投資家が受ける

 今年も決算発表の季節が到来。中には既に発表を終えた3月期決算企業もありますが、大半は今週から始まります。
 そうした中で3月22日をピークにした日経平均やTOPIXなどの株価指数はようやく調整色を強め、4月19日に日経平均で10.6%、TOPIXで7.9%の調整を入れた形となりました。過去半年にわたり上昇傾向を辿ってきた株式相場がようやく一旦の調整局面を迎えたということになります。

 一般的には日経平均やTOPIXを引き合いにして語られる株式相場ですが、コロナショック後の株式相場は日銀や年金資金、機関投資家、外国人投資家等による積極的な買いにより、この2つの指数上昇にコロナショック以降はフォーカスされてきました。

 一方で蚊帳の外状態となったのが、もう一つの株価指数であるグロース250(旧マザーズ指数)です。日経平均がコロナショック時の安値から2.5倍、TOPIXが同様に2.35倍に上昇したのに対してグロース250がまだコロナショック時の安値から20%余りしか上昇していないという状況です。
 但し現状の株価の位置を細かく見ると、2020年のコロナ禍の下でグロース250はボトムからわずか半年で2.6倍にもなったということがわかります。その咎めがその後の株価低迷をもたらしたとも言えます。

 グロース指数の低迷はこのところのIPO市場にも影響しており、今年のIPO銘柄24銘柄のうち11の銘柄が公開価格を一時的にしろ、下回る状態となりました。上場前に公開価格が決定され、限られた公開株の需給の良さで初値が上昇するとの期待からIPO銘柄を獲得して初値かその後の株高を狙っての短期投資家が集まってくるパターンが見られます。今年は例年になく短期で売却しようとする傾向が強いとの印象です。

 つまりIPO後の中長期成長に期待する投資家ではなく、短期投資家によるキャピタルゲイン狙いが横行している証左でもあります。これにはIPOした企業側にも問題がありますし公開をサポートした主幹事証券にも多少の問題が感じられます。


 問題は企業内容の情報が十分に理解されないままIPOを迎えている点、アナリストや市場関係者、メディアによる評価が不十分であるほか、公開価格の決定についても妥当性が問われているとも言えます。
 今年になって上限価格を上回って決まるケースがいくつか見られましたが、その後の株価がそれを下回って推移するなど公開価格決定プロセスへの不信感が出てきそうです。

 最初に公開ありき、株価は二の次と主幹事証券のビジネスライク的な行動は長期的なIPO市場への信頼性を失いかねません。


 企業の内容などお構いなしに短期投資家が勢い良く投げの行動に出て直近IPO銘柄の株価は上場後の高値から大きく下落し、その資金は半導体や生成AI関連、インデックスに連動して上昇が期待される主力銘柄へと流れていったというのがこのところのIPO銘柄の値動きかと推察されます。
 一方で、短期投資家の投げをコツコツと買う主体が中長期投資家の中には芽生え始めている可能性もあります。既に指標面で割安感の出てきた銘柄もあり、次第に積極的なIR活動を通じて企業内容が広く投資家に認知され評価を高められる銘柄が登場することを期待したいと思います。


【参考:今年IPO後に公開価格割れした銘柄一覧】
(2月から4月16日IPOまで)

 銘柄/上場日/公開価格/初値(公開価格比)

1.Cocolive(137A)
 /2.18/1780円/3990円(+124%)
 高値4080円 安値1377円(高値比▲66%)
 時価1583円

2.STG(5858)
 /3.21/1920円/3215円(+67%)
 高値3910円 安値1825円(高値比▲53%)
 時価2108円

3.ハッチワーク(148A)
 /3.26/2160円/2815円(+30%)
 高値4015円 安値1891円(高値比▲53%)
 時価2589円

4.LisB(145A)
 /3.26/1188円/1553円(+31%)
 高値1690円 安値 817円(高値比▲52%)
 時価1091円

5.シンカ(149A)
 /3.27/1320円/1671円(+27%)
 高値1912円 安値 919円(高値比▲52%)
 時価1144円

6.グリーンモンスタ(157A)
 /3.29/980円/1700円(+73%)
 高値1990円 安値 961円(高値比▲52%)
 時価1061円

7.マテリアルG(156A)
 /3.29/1180円/1085円(▲8%)
 高値1180円 安値 862円(高値比▲27%)
 時価975円

8.アズパートナーズ(160A)
 /4.4/1920円/2923円(+52%)
 高値2947円 安値1740円(高値比▲41%)
 時価1932円

9.イタミアート(168A)
 /4.8/1600円/2000円(+25%)
 高値2153円 安値1332円(高値比▲38%)
 時価1399円

10.ハンモック(173A)
 /4.11/2060円/2160円(+5%)
 高値2331円 安値1639円(高値比▲30%)
 時価1698円

11.ウィルスマート(175A)
 /4.16/1656円/1580円(▲5%)
 高値1872円 安値1400円(高値比▲25%)
 時価1612円


(本コラムは東京IPOコラムに4月24日付で掲載された特別コラムより転載しております。)


(炎)


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(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)

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