
建国記念日を前に
ニデック(6594)による牧野フライス(6135)への同意無きTOB提案は衝撃的でした。カナダ企業によるセブン&アイHD(3382)への買収提案や、ホンダ(7267)と日産(7201)の統合交渉に続いて国内の上場企業、及び市場関係者に動揺が走ったのではないでしょうか。
昨日の報道では日産が統合交渉離脱とありましたが、日産はこの後どうなることやら。果たして立て直しが出来るのか?縮小して消滅するか、何処かに買収されるのか?株価は将来を悲観しているようです。
ニデックからのTOBでは、寝惚けていた牧野フライスの役員陣は急遽弁護士に相談し返答したようですが、リリースされた書面を見る限り何とも具体性に乏しく、且つ感情的とも思える記述が気になりました。このような件について事前準備など無さそうな雰囲気で、慌てている様子が伺えましたから。
ニデックの提案は(事前相談が無かっただけで)特殊なものではありません。どちらかと言えば「永守会長はやるなぁ~!」と感じました。
企業評価(TOB価格)も比較的高価格で、一般投資家から見てもTOB価格で売却すれば利益も出ますし、現経営陣よりニデック傘下の方が株価も配当も上がると考える人もいることでしょう。
TOBともなれば真剣勝負ですから買収する側も必死です。今や会食しながら事前に相談するなどと言う悠長な時代ではなく、海外では事前相談が無いものは多々あります。
そもそも今回のTOBが発表されるまで、業績好調な中で同社株のPBRは1倍を割り続けていました。還元率も3割弱で配当利回りも1%台と低く、とても株価を意識しているとは言えない状態であったのは明白です。低株価を放置していた牧野フライス役員陣が寝惚けていたという事です。
加えて、同社の社外取締役には最大手自動車メーカー(主要取引先)OB、メインバンク&大株主OB、主幹事証券会社OB、大学教授と・・・錚々たるメンバー(モロにお仲間?笑)を揃えています。彼ら社外役員の報酬は月一の取締役会出席の対価として4名で年額計7,400万円(令和6年3月期有報)になりますが、これらお友達に投資家本位の判断など出来るのでしょうか。
先日は日本製鉄(5401)が山陽特殊鋼(5481)へのTOBを発表しました。日鉄が50%超の株式を保有し、役員の過半を日鉄からの天下りが占めている会社故に注視していましたが、想定より早いTOBの発表となりました。このような例はこれからも増えると思います。
一昨年から増配や自社株買いなど前向きな株主還元策を採る企業は増えてきました。が・・・、ソニーやトヨタ、日立と言った幾つかの著名企業による株主還元策(いわゆる株価対策)には緊張感を感じ取ることが出来るものの、大半の上場企業においては本気の株価対策は依然として少ないままです。財務が自慢の京セラもやっと重い腰を上げたようですが・・・。
前回も書きましたが、横並び的に増益の範囲(それこそ余裕の範囲)で数%の自社株買いをする程度のものが多く、結果として株価が反応しないケースが増えました。
一言でいえば「必死さが足りない」という事でしょうか。
14年以上も前の話になりますが、最大手電力会社は2000年代から原発立地の危険性を指摘されていながら設備投資を怠る一方、利益最大化を目指して不動産子会社と共同で「オール電化住宅」の膨大な広告を流していました。電力会社の仕事(使命)は電力の安定供給であり、利益至上主義で広告宣伝費(電力料金に転嫁)をかけて使用量を増やすのが仕事じゃないだろ?と感じましたが・・・、案の定、震災直後に原発事故が起き、この広告は消えました。
同社経営陣には必死さが足りないどころでは無く、公益事業を担っているとの使命感も緊張感の欠片も無かったのでしょう。驕りの成せる業です。
原発廃止論から一転して、今では政官財を挙げて原発推進に舵を切りました。10数年の雌伏を経て、「電力が足りない」「資源が高騰している」との宣伝が奏功し、産業界と経産省(ついでに族議員)の悲願である原発利権を復活させました。原子力発電はトータルで後処理も含めれば安くありませんが、発電時のコストの低さや環境を理由に邁進しています。それら利権を膨らませる費用は全て消費者への電気料金に転嫁されます。
困っている人への支援と見せかけて、ガソリン補助金をばら撒き大手石油元売りに過去最高益を稼がせるなど、様々な場面で産業界に恩を売りつつ、その見返りに献金やパー券で回収してネコババしていました。必要なところではなく、自民党が広範囲にばら撒く目的は常に票と金のためであり、選挙用資金獲得しか頭にありません。行政=霞が関はこれに便乗して利権を獲得し、天下り予算や特別会計予算を獲得します。
先日来、与野党間で企業・団体献金の可否を議論していますが、金額云々の議論は必要無く、献金が必要なら全額開示を義務として、管理や使途などで違反があった場合の厳罰(議員辞職など)を組み合わせれば良いだけです。対峙する立憲民主は腹を括っていないから話が進みません。支持率が上がらない理由の一つと思います。
本来なら資源の乏しい日本こそ、この10数年間で海外資源への依存を減らすため再生可能エネルギーや脱炭素を全力で推進しなければいけなかったはずが、巨額のガソリン補助金や電力料金への補填などを多用し、国民の危機感を逆手にとって利権再開に漕ぎつけました。
国民(=景気)支援ならガソリン暫定税を無くせば良いだけです。わざわざ石油元売りにミルク補給する必要は無く、地方税は国税と調整すれば良いはずです。この期に及んでもネコババ資金や天下り予算を手放そうとしません。
政府と一蓮托生のマスメディアも節操なく情報操作に加担しています。
因みに、これらの資金も全て将来世代からの借金で賄うことになります。
これらにはシロアリ(=役所OB)の天下り費用も含まれますが、ここ数年は露骨な天下りは難しくなり、管轄業界の社外役員に就任するなど多様な手段を駆使しています。石油元売りなど資源関連会社にも多数の天下りが見られますが、そんな天下り会社ほどガバナンスの欠如が表面化しています(呆)。
政官財の癒着=いわゆる日本版DS(ディープステイト)に騙されないよう気を付けねばいけません。このDSの悪行が数十年に渡り経済に悪影響を及ぼすことで国民を貧困化させ、市場を活性化させない主要因になっています。
自民党大敗を経て今年こそ政財界の浄化に期待したいし、今回の牧野フライスへのTOB提案などによっても、経済界から浮かれ気分が抜け、緊張感のある経営が成されることで活発な相場展開になることを期待します。
恐らく上場企業は昨年以上の危機感を持って株価対策に臨むでしょう。
今年も相当額の自社株買いが続くと予想され、持ち合い解消で売られる株式が徐々に減っていく中で、需給面では期待が持てると考えています。
1月は外国株投資信託(大半が米株)に約2兆円の資金が流れたようで、年間では昨年を超え20兆円にもなりそうな勢いです。リターンが少ない国内株より米株が選好されている訳で、NISAをいじくって日本株を買わせようなどと言う小手先の議論をしている場合ではありませんね。
資金流出によっても円安が続けば海外企業による買収も増えそうです。日本企業が本気で株価対策をせねばならないよう誘導するしかありません。
建国記念日を前に、失われた30余年を経て、大袈裟ですが、新しい日本の建国記念を感じる年になることを願っています。
(街のコンサルタント)
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)