株価調整中のアドヴァングループについて
~前期は膨大な為替予約評価益を確保したが・・~
何かと為替相場が気になる今日この頃。2011年10月の1ドル=75.66円という円高水準から本年4月の160.03円の円安水準まで12年半という期間で84.37円も安くなったということになりますので、その影響は様々に表れているものと推察されます。
東日本本大震災が起きた2011年3月の後まで円高が続いたのも不思議なことだったのかも知れませんが、その後の円安がこれだけ続くというのも日本国の国力低下の現れとするなら由々しき問題と言えます。
但し、為替相場は投機的な要素も多分に含まれており、75円台も160円台も投機筋による急激な変動が背景になっている可能性もあります。日銀は先般の急激な円安に対して数兆円規模で介入したのではないかとも言われていますが、その真偽はともかく、企業経営や国民生活にとっては物価上昇、コスト上昇にもつながる迷惑な急激な為替変動には何らかの対応を講じてほしいとは願っているでしょうから、一応はリップサービスだけだったとしても、その役目を果たしたとも言えますが、なおもこの先に想定外の円安の可能性があるだけに気が抜けません。いつまた円安に向けた仕掛けを投機筋はしてくるのか気になるところです。
こうした為替相場の円安を数年前より先読みした内需系の企業があります。輸出企業とは反対に海外からモノを仕入れて国内のクライアントに販売する企業にとっては、この円安のトレンドが長期にわたって続くとなれば対応が必要です。
海外(欧州)からの輸入商材を国内で販売するアドヴァングループ(7463)が前期計上した為替予約評価益は95.43億円にも達しました。これだけではなく為替相場が想定以上の円安となったためにリアルな為替差益が20.4億円計上され、営業利益39.39億円に対してこれらを合わせた経常利益は161.94億円(売上は203億円)にもなったということです。
同社がこれまで採ってきた施策は円安トレンドが今後続くという見通しの下で今後輸入するであろうおよそ10年分の仕入れ金額分をドル通貨で予約しておくというもの。決算期内で実際に仕入れた分はリアルな為替差益が得られる一方で、先の分については円安が進めば進むほど予約評価益か洗い替えで円高となれば評価損が生じるという設定です。 本来は営業益に反映されるべきところが、4年前あたりから営業外にて為替評価益が計上され、前期はその評価益が想定以上の円安で異常に膨らんだという結果となりました。評価益は絵にかいた餅のようなもので、実際に現金が手元に生まれる訳ではありませんが、評価益にも課税されるため、前期は法人税等が17.93億円から59.59億円へと膨らんだのも特徴的です。
残念ながら前期は売上が期ずれによって未達となったこともあり、円安による原価上昇の影響もあって営業利益は期初予想の48.5億円から39.39億円に下方修正され株価はこれを嫌気して調整する格好となりました。
今期は4.1%増の営業利益41億円を見込んでいますが、営業利益以下の見通しについては公開しておりません。為替相場の見通しが難しいためではありますが、投資家としてはこの結果、同社を評価しにくい状況になっています。
今期も為替相場は円安傾向が見られますが円高に振れる可能性もあり先行きは見通し難ということになります。前期末のドル=円レートは151円台だったかと思いますが、洗い替えで今期もこの水準より円安となれば為替予約評価益が出ますし、151円台より円高となれば為替予約評価損が出ることになります。
一方で評価損が出れば税金は還付されることになります。仕入れ分に限定された為替予約は輸入主体の企業経営者にとっては評価すべき手法だと考えられますが、その期間が10年となるとやや行き過ぎの感もあります。
同社でも今後は期間を6年程度分までに短縮することも企図しているようですが、為替が円安傾向から円高に転じるか否かが明確に見えない状況下では有効な手法とも言えます。なかなか他社でマネのできない思い切った手法なの
かも知れませんが、輸入主体の企業にとっては参考になる取組手法と考えられます。
同社株はPBR1倍以上を目指して積極的な自己株買いに邁進してきましたが、今後も積極的な自己株買いへの意欲を示しています。また、保有するキャッシュを有効活用して企業価値を高める考えで、ショールーム(沖縄、福岡)投資や岩井流通センターなどへの積極的な減価償却を上回る設備投資(前々期の38.5億円(減価償却7.1億円)⇒前期27.3億円(同7.44億円))、特に高級キッチン、システムバスなどの高級化への流れに対応した生産設備増強に努めていこうと考えています。
残念ながら前期の103億円ものややイレギュラーな利益計上でBPSが1380円と膨らむ一方で期待された増配が実施されずに株価は低迷し始め、時価(1032円)はPBRが0.75倍の水準へと低下してしまいました。
前期は見送られた記念配当が今期は創業50周年ということもあり実施されることになるとすれば時価水準は配当利回りが4.84%の水準となります。
今期は、ずれ込んだ大型案件の計上が予想されるため売上は220億円(+8.4%)を予想。職人不足に対応したカンタンクイックフロアなど投入しリフォーム需要も取り込む計画。
自己株1238.7万株を除く時価総額は371億円に留まっており、営業利益ベースではやや割安感があるものの、中長期ビジョンがまだ明確にされていないため、株価のトレンドが定まっていない状況です。
(炎)
●有料メルマガ「炎の投資情報」
億の近道月曜日担当の人気執筆者、炎のファンドマネージャー(松尾範久氏)が、中小型株情報を中心に、時事の投資テーマやIPO情報、取材やアナリストミーティングの鮮度の高い情報まで、プロの目で見た投資情報をお知らせします。
創刊7年を超える老舗有料メルマガ。
毎週月曜日配信
執筆者:炎のファンドマネージャー(松尾範久氏)
最新号(5/20)配信内容は、
■相場の潮流
■半導体関連銘柄の変動状況チェック(15銘柄)
■注目中小型銘柄取材報告(8銘柄)
■DX系銘柄フォロー(4銘柄)
■前号取り上げた銘柄フォロー
■昨年IPOの低PER銘柄
試し読みはこちらへどうぞ ⇒ https://bit.ly/honoh2023
【お知らせ】
YouTubeにて株式を楽しむ皆さんに週1回の頻度で無料の映像コンテンツ松尾チャンネル配信中。
ぜひご登録、ご視聴、高評価をお願いします。
https://www.youtube.com/@user-oh4hn4kx1r
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)