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投資家Sの今週の注目銘柄 エムアップホールディングス【3661】 三協フロンテア【9639】

 皆様こんにちは、投資家Sと申します。
 2021年1月から億の近道火曜版に「投資家Sの今週の注目銘柄」を掲載頂いております。

 本連載は、創業(1964年)半世紀を超える投資日報社が、毎週月曜日に発行を行っております、”週刊投資日報 金融版”に掲載しております。


 先週は、日本銀行の金融政策決定会合が行われましたが、注目されていたETFの買い入れ対象変更は、日経平均型を停止して、TOPIX型のみを買い入れ対象とする事が決定しました。今後は、日経平均への寄与度が高い値がさ株から、中・小型株に物色対象が変化してくる可能性が出てきております。


 今回は、2021年3月中旬までに掲載を行った、2銘柄についてご紹介させて頂きます。


■エムアップホールディングス【3661】


 アーティスト・タレント・アニメ関連のファンクラブサイトの運営を行っているエムアップホールディングス(以下、エムアップ)【3661】は、2004年に会社設立、2012年に東証マザーズ市場に上場。2013年に東証1部に市場変更を行っている。

 コロナ禍は外食・旅行業界のみならず、エンタメ業界にも大打撃を与え、各種イベントの中止や人数制限の実施を余儀なくされてきた。日本でも2月からワクチン接種が始まっており、4月以降はイベントの開催も徐々に戻って来る事が予想され、春以降は関連銘柄の業績も回復に向かうと想定される。

 厳しい環境が続いてきた同業界であるが、エムアップはコロナ禍でも売上を伸ばし続けてきた。同社はリアルイベント主体ではなく、ファンサイト運営やクラウド環境を利用したアーティストアプリの提供を行っており、コロナ禍においても好きなアーティストやタレントとの接点が欲しいファンにとっては、絶好のツールとなっている。
 従来、ツアーグッズはライブ会場等で購入するのが主流であったが、イベントの中止・縮小で対面での購入機会が減少を受け、同社のEC事業(Fanplus)は、グッズ購入を希望するファン向けに、各自のファンクラブ会員限定ストアを素早く立ち上げ、販売経路確保と、ファンの購買方法確保を実現。
 今期はこの事業が大幅な伸びを示し、2月発表の第3四半期連結売上高はEC事業が前期比54.0%増、全社売上も13.3%増となっている。

 今期の第3四半期までの利益は、昨年5月に発表した通期の業績予想を既に上回っており、昨年第4四半期並みの業績が達成出来れば、今期の業績は期初予想を2割程度上回る事となり、業績の大幅な上振れが期待出来る。

 注目の来期は、今期はイベントの中止で苦戦した電子チケット事業が回復して行く事が予想される為、同社が掲げる「リアル」と「オンライン」の両軸でのビジネス拡大が期待出来る事となる。

 株価は、昨年9月に3年振りの高値となる3,975円を付けた後は上値が重たくなっているが、3月1日に10万株・2億円上限の自社株買いの決定をリリースしており、ここから4月末までの2ヶ月間は、株価を下支えする事になる。

 3月上旬の株式市場は、米金利の上昇で株価に下落圧力が掛かっているが、成長を続ける個別銘柄については、押し目買いの好機と捉える事も出来る為、春の仕込み時となりそうである。

 エムアップの美藤社長はかつてX Japanのhideの事務所社長に就任していた経歴があり、hideの「インターネットで音楽を聴く世の中になるよ」との言葉でIT業界に転身した。カリスマが残した言葉を胸に秘めて、コロナ禍でのニューノーマル(新常態)を確立した同社は、アフターコロナにおいても成長を持続する事となる―と筆者は考えている。


(投資日報金融版 2021年3月8日号 掲載)

■三協フロンテア【9639】


 ユニットハウス・プレハブ・トランクルームの販売・レンタルを行っている三協フロンテア【9639】は、1969年に会社設立、1993年にJASDAQ市場に上場を行っている。

 同社の主力事業はユニットハウスのレンタル事業であり、今年度は新型コロナウィルスの影響で厳しい状況になるのかと思いきや、昨年9月に業績の上方修正を行い、過去最高益を更新する見通しとなっている。

 パンデミック発生から1年が経過したが、この間に社会に浸透したキーワードは、“ソーシャルディスタンス”や“三密”であり、人と人の間に距離を置く言葉が認知される事となった。
 同社のユニットハウスは、三密回避に効果的に機能。病院の発熱外来を同社のユニットハウスで作成する動きが出てきており、今期は新型コロナウィルス関連の簡易スペース需要が伸びている。また、人の流れは都心から郊外に移ってきており、テレワークスペースを兼ねたユニットハウスや、旺盛なアウトドア需要に対応する為にキャンプ場への納入も行われており、コロナ禍特有のニーズによって同社商品の需要が増えている。

 同社ホームページへの問い合わせ数は、昨年8月には前年比147%に伸びており、来場者数は昨年4月に前年比130%を超える水準となり、引き合いの強さが見受けられる。

 今期の業績は第3四半期までの営業利益累計は、前年同期比8.6%増の56.1億円となっており、第4四半期に前年並みの利益が確保出来れば、通期予想の達成が可能となる。首都圏では緊急事態宣言が発令中であり、宣言の
影響がどの程度出るのか分りかねる部分はあるが、初回の緊急事態宣言時と比べて企業活動の制限は小さく、影響は軽微だと思われる。

 株価は、業績の上方修正を行った昨年9月以降はほぼ横ばいで推移。現在は次の材料待ちの状況となっているが、株価指標はPER約9倍、PBR約1.12倍、配当利回りは3.1%を超える水準となっており、割安感がある。

 今後のポイントは来期の業績となるが、大幅な売上減となっていたイベント関連のレンタル需要が来期は復調を予想。今期伸長が目立ったその他レンタルにプラスされる形で、売上の増加に繋がると考えている。

 三協フロンテアは、9年前の2012年3月期に前期比8.8倍となる49億円の利益を計上した事があった。これは、10年前に発生した東日本大震災からの復興に伴い、仮設住宅向けのユニットハウスが大幅に伸びた事が要因であり、災害大国日本において必要不可欠な存在であるとも言える。
 奇しくも、2021年は新型コロナウィルスからの“復興”の年になる可能性が高い。アフターコロナは、モバイルスペースを主力商品とした、資源循環型のビジネスモデルを持つ三協フロンテアに注目したい。


(投資日報金融版 2021年3月15日号 掲載)


(投資家S)


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  トレース合同会社 社長
  株式会社投資日報社 専務取締役
  大学卒業後、2004年から証券会社にてFXの仕事に従事。
  以後、14年間に渡り、営業・企画・トレーディングの最前線で活躍。
  リーマン・ショック・ユーロ危機・Brexit等々の並居る大相場の中、
  裏方として市場の最前線で指揮を取り、FXの表も裏も知り尽くす。
  2018年秋、11年間勤めたマネックス証券を退社して、
  暗号資産(仮想通貨)の交換業者となる、株式会社ディーカレットの立ち上げメンバーに加わる。
  2020年5月に、相場道を究める為に同社を退職。
  個人投資家として株式投資を行いながら、投資に掛ける時間が限られる兼業投資家の方に有益な情報を届ける為、株式について日夜分析を行っている。
  日本テクニカルアナリスト協会 認定テクニカルアナリスト(CMTA)
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