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上場企業の悩み

 株式会社形態の企業であれば、ビジネスがうまく発展していく過程で次の成長のために思い切って上場しようということになります。

 上場によるメリットは銀行融資に頼らず市場から資金調達ができる点と優秀な人材を集める、取引先への与信力が高まる、知名度が高まり社会性を増すなど様々な利点があります。創業経営者であれば銀行の個人保証から外れることにもなり、上場メリットを受けることにもなります。

 一方では上場のための様々な準備が必要となりますし、上場してからは決算発表や投資家への説明会開催など不慣れなIR活動を定期的に開く必要が出てきます。業績が良くても悪くても、赤字になろうと継続疑義がかかろうとも対外的な説明が求められます。

 現在3900ほどある上場企業も様々でトヨタやNTTなどのビッグカンパニーもあれば時価総額10億円前後に甘んじている小規模な企業もあります。順風満帆で比較的順調な企業活動を行っていて業績も拡大基調にある会社があるかと思えば、業績低迷に悩む企業もあります。

 そうした企業の状況を冷静に眺めながら多くの投資家は投資されているものと推察されます。

 上場企業であっても悩みは尽きず、外から見ていて順風満帆に見えてはいても実はいろいろと悩みを抱えていることになります。

 株主からの付託を受けた経営者の皆さんはまずは業績の向上に邁進する訳ですが、そのために打ち出していく施策に対して投資家が評価していくことで株価が形成されていきます。
 株価には過去、現在、未来の要素が複雑に絡み合いながら形成されるのですが、過去という点では実績を重視する投資家の視点で形成されます。つまり過去の実績から足下や未来においても投資家を裏切らないだろうとなります。

 現在という点では株式市場の需給、為替や原材料価格など含めた市場環境などによって投資家の判断が決まります。企業としては難しい経済環境、変化の激しい経済環境、ビジネス環境の下で今期の見通しを一定程度は示す必要がありますので、これも悩みとなります。


 問題は未来という点です。

 株価の変動や評価の多くは未来がどうなるのかということになります。現在からの1年間程度の未来というよりも、5年、10年、20年と言ったかなり未来のことになりますが、その場合はなかなか見通すのが難しく、悩ましいために基本的には多くの企業が3年程度の中期的なビジョンを投資家に示すことが通常です。
 上場企業にとっての悩みは中期的な成長もさることながら長期的な成長のための布石をどう打つのかになります。

 また、東証からは低PBR是正に向け株価の低迷ないし非効率な経営状況の数多くの企業に対してどのような対応をしていくのかの具体的な施策について開示を求めるようになってきました。
 低PBR是正のための施策としては株価を引き上げる必要がありますので、事業外においても例えば自己株買いを実施したり、配当金を増やすなどの施策が考えられますが、少なくとも中長期での成長が期待できない企業の株価が上がることは考えにくく、事業活動によって成長のベクトルを示していく必要があります。

 保有している経営資源を見直してより成長期待の高い分野にシフトするほか、取り扱い商材ポートフォリオの変更、成長分野への設備投資投資、人材投資の積極化などを図る必要があります。
 また、内部での事業拡大だけでなく、後継者難に悩む外部企業のM&Aによる事業拡大も有効な施策となります。


 また、創業オーナーにとっては後継者をどうするかも悩みとなります。
 単純に創業時の苦労を知らない子息に経営をバトンタッチしてうまくいくケースとうまくいかないケースもあります。優秀な役員の中から人選するのか外部から引っ張ってくるのか、悩みは尽きません。

 様々な悩みを抱えながらも上場企業である以上は対外的なアピールもしていく必要があります。時にはモノ言う株主の登場でその対応に追われたり、製品の不具合が生じたりと様々な問題に直面することになります。
 悩ましい反面ではそうした悩みを克服しながら成長していくことが求められているのが上場企業であるということになります。


(炎)


(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)


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