パチンコ依存型から脱却なるか?
~期待高まるアクセル(6730)のAI事業~
私たちの生活には様々な娯楽があります。ゲームやアニメなどの巨大ビジネスは世界的ですがアミューズメント産業の中でも日本特有のビジネスがパチンコやパチスロです。
レジャー白書2023年によると、この市場は14兆円余りの規模となっており、余暇市場全体の23%を占めているとされます。粗利益の規模も2.35兆円と試算されおり、世界には例のない日本特有のビジネスとなっています。
全国のパチンコホールの数は2023年末で7083店舗。店舗数、設置台数(380万台程度)ともに緩やかな減少傾向にあるもののパチンコ、パチスロ機器自体の販売台数は合計で年間165万台程度(24年度パチンコ90万台、パチスロ75万台、矢野経済調べ)でほぼ横ばいで推移しています。
【パチンコ・パチスロ機器の販売台数推移(矢野経済調べ)】
19年度152.5万台⇒20年度149.8万台
⇒21年度180.4万台⇒22年度175.4万台
⇒23年度157.5万台
パチンコ産業の担い手には機器メーカー(平和、SANKYO、セガサミーHD、ユニバーサル、ダイコク電機、マースグループ、オーイズミ、マミヤOP、円谷フィールズHD、ゲームカードジョイコHD、藤商事、サン電子などの上場企業)とホール運営会社(非上場のマルハンなど)があります。
中小ホールの閉店が相次ぐ中でこれらは衰退産業とみなされて市場での評価は低い印象で、これらの企業の株価も概ね頭重い展開が見られます。
ホールと機器メーカーは二人三脚の状態。当局による規制もあり、射幸心をなくし、画像等に工夫を凝らしエンタメ性を高めた機器をホール側は導入して、スマート化の進展、店舗の大型化などで比較的高水準の収益を確保しており、株価的には概ね割安感が出ています。
ホール(すべて未上場)としてはお客さんを呼び込むために一定の新台導入を図っていくことになりますがそのための設備投資資金が必要となります。
この巨大な業界においても資本力がモノを言うことになります。
さて、このパチンコ・パチスロ機器向けに部材を提供しているのがアクセル(6730)です。同社が機器向けに販売(電子部品商社の緑屋電気などを通じて販売)しているのは台の映像表現に欠かせないグラフィックLSIやメモリーで、同社はこの分野で業界シェア50%を有しています。
2019年3月期に次世代パチンコ・パチスロ機器向けの半導体開発のための大規模な研究開発投資の発生で同社の業績は一時的に赤字(営業赤字16.7億円)に転落しましたが、それをボトムに業績は順調に回復。前期の営業利益は24.26億円を計上するに至りました。
ただ、今期は11億円と大きくダウンする見通しを示して株価の急落を招きました。スマート化の進展でよりアミューズメントの要素が求められる中で同社のグラフィックLSI及びメモリーへの需要は高まり、一時半導体が不足する状況の中で仮需も発生。受注が1年分以上にもなって同社の業績は急速に拡大したという経緯があります。
現状は受注も正常化し、前期末の受注残は145.43億円(前々期末受注残241.84億円⇒前期1Q末受注残224.37億円⇒2Q末受注残198.27億円⇒3Q末170.92億円、今期売上予想133億円▲24.3%)となっています。
受注残が減少し今期の業績見通しが大きく減益見通しとなる中で、同社は次の成長のネタをAIにフォーカスし、テレビCMなどで認知度を高めようとしました。同社には90名ほどの従業員の中に10名のアルゴリズム技術者が在籍。少数精鋭のテクノロジー集団としてAI分野での活躍が期待されます。
残念ながら今期の予想売上高133億円のうちAIを中核とした新規事業の売上見通しはまだ7.5億円に留まっていますが、子会社axで展開するaillia SDKはAIのフレームワーク。他社(TI、メディアテック、クアルコム、ルネサスなど)製の最新AIチップ上で動作するため活用されやすいため、今後ハードウェアメーカーとの連携によるロイヤリティ収入の拡大が期待されます。もう間もなくこうした他社との連携がリリースされてくる可能性を秘めています。
これまでの企業イメージはパチンコ・パチスロ機器向け半導体ファブレスメーカーでしたが、今後はAIやWEB3.0の先端テクノロジー企業として世の中を革新しながら成長していく可能性を秘めていると言えます。
(炎)
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