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モノ言う株主登場に反応する株価

 旧村上ファンドに代表されるようなアクティビストと称される投資家がモノ言う株主として活躍する株主総会の季節を迎えようとしています。

 決算発表を終えた各企業の次のイベントは株主総会。
 今年も例年通り6月の後半に開催される予定ですが、既に新聞報道されているように三井松島ホールディングス(1518)などいくつかの企業に株主提案がなされているようです。

 その中の一つがKPPグループホールディングス(9274)という企業です。社名が聞きなれないという読者も多いかと思いますので若干、説明しておくと以前の社名は国際紙パルプ商事。日本紙パルプ商事(8032)と並ぶ
(KPPの方が海外大型M&Aで現状の売上は大きい)2大紙専門商社の一つです。
 同社は個人株主から剰余金処分の件で提案された内容(総還元性向100%)に対して反対を表明したことを5月14日付けでリリース。要するに利益を全部配当金に回して純資産の蓄積を抑制してPBR1倍以下の改善を図れという提案でしたが、会社側としては成長投資、人材投資、財務の健全性維持を理由に反対をしたということになります。

 このリリースがあって株価がどうなったかと言いますと、リリースの前日の終値714円はその翌日から急騰し先週末に844円をつけるに至りました。リリースされ18%の株価上昇に至った訳でこうしたモノ言う株主の登場が株価に影響を及ぼしたとなれば、今後もこうした事例が増えていく可能性があります。低PBRの是正を求められている企業にとってはモノ言う株主の登場がむしろその是正につながるという認識となるのかも知れません。

 株主提案権は総発行済み株式の1%を半年以上前から保有している投資家に付与されているのですが、こうした事例から今後も一般投資家、株主もモノ言う株主の登場に期待する流れが醸成される可能性も出てきました。東証の指導で株価が動いたように今後は低評価で放置され続けてきた企業の株主から具体的な提案の形で示されることで結果として株価が上昇するということになると考えられます。


 ここで折角なのでKPPグループHDと日本紙パルプ商事について市場で現在、どのように評価されているのかを見ておきましょう。


【紙専門2大商社の業績と評価】


1.KPPグループHD(9274)
 時価844円 時価総額581億円(自己株除く)
 23.3売上高6596億円 営業利益204億円 経常利益184億円
 EPS219円
 24.3売上高6444億円 営業利益158億円 経常利益125億円
 EPS149円
 25.3予売上高6550億円 営業利益165億円 経常利益135億円
 EPS155円

 予想PER5.5倍 PBR0.71倍 配当利回り3.31%

 配当金推移
 前々期20円(配当性向9.1%)⇒前期22円(同14.7%)
 ⇒今期28円(同18.1%)

 前期末保有現預金263億円 投資有価証券231億円 有利子負債合計859億円

 株価推移
 22.4安値284円⇒22.11高値1067円(3.75倍)
 ⇒23.6安値566円(▲47%)⇒時価844円(+49%)


2.日本紙パルプ商事(8032)
 時価5970円 時価総額735億円(自己株除く)
 23.3売上高5452億円 営業利益202億円 経常利益212億円
 EPS1851円
 24.3売上高5342億円 営業利益174億円 経常利益167億円
 EPS788円
 25.3予売上高未公表 営業利益180億円 経常利益180億円
 EPS812円

 予想PER7.4倍 PBR0.58倍 配当利回り4.19%

 配当金推移
 前々期120円(配当性向6.5%)⇒前期130円(同16.5%)
 ⇒今期250円(同30.8%)

 前期末保有現預金178億円 投資有価証券399億円 有利子負債合計927億円

 株価推移
 22.6安値3555円⇒23.3高値5740円(+61.5%)
 ⇒23.10安値4465円(▲22.2%)
 ⇒24.5高値6260円(+40.2%


 日本紙パルプ商事もKPPGもPBRが低い点は共通。どちらが割安なのかは微妙。配当をもっと増やせというKPPG株主の要求も理解できる。


(炎)


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