M&A戦略は日本株を押し上げる?
日本には数多くの企業が存在し、日々ビジネス活動を行っております。企業は設立されて以降、歴史を重ねていきます。創業からの社歴は企業によって様々ですが、立ち上げたばかりのスタートアップの時期を経て、発展期を迎えて一つの選択肢として上場、つまり自社が発行した取引所お墨付きの株式を不特定多数の個人、法人に金融商品として投資して貰い、自らはIPO時に新株発行で資金調達を行うことで銀行からの借入を減少させたり低コストの成長資金を得たりして更なる成長を目指します。
上場にはクリアしないとならない一定の基準がありますので全ての企業がそうした上場に至ることにはならないので、現在はおよそ3800程度の企業に対して許されているという現状があります。
企業はそれぞれに事業スケールが異なりますので、上場段階での売上規模や利益規模が上場する時の評価、時価総額などに影響します。
市場には先日IPOした東京メトロのような時価総額が1兆円にもなる大型企業もあれば時価総額が30億円以下の規模の小さな企業、赤字の企業もあります。投資家はIPOした後の企業の成長を基本的には温かく見守ることになりますが、短期的な売買に徹する投資家が圧倒的で、多くは上場した後に大きく下げることが多いのも現実です。
めでたく上場した後の企業は先行的に設備投資や人財投資、研究開発投資などを実行しながら売上拡大、利益拡大に邁進することになりますが、時には経営資源を外部に求めたりします。つまり他社のM&Aの実行で売上規模や利益規模を拡大させるのも有力な経営手法となっています。
但しM&Aには企業ごとに巧拙があり、経験を重ねて上手にグループ化が図れてシナジー効果を生むようになると利益は飛躍的に大きくなります。
自社の経営資源を伸ばす方が安定した収益拡大につながる訳なのでまだM&Aを成長のコアにしている企業はそう多くはないかと思われます。それでも中にはM&Aを成長の柱にして業績を伸ばしていこうとする企業もあり、それらの企業は投資家の関心を集めています。
本日はその典型的な企業3社を取り上げてみたいと思います。
1.ヨシムラフードHD(2884)
時価1380円 2016年3月IPO
公開価格880円(時価総額38.2億円)
複数の中小食品企業をM&Aして相互補完しながら成長していくビジネスモデル。8年前にIPOして現在は製造系23社、販売系4社をグループ化し売上規模を15.2期の114億円から今期予想で582億円(2Q288億円)にまで5倍化。営業利益も15.2期の2.2億円から今期27億円から30億円余りへと10倍以上に拡大を見込む。
大和証券OBならではのM&A戦略で高株価を醸成しての成長です。
時価総額は現在324億円でIPO時の8.5倍。
16年4月の安値178.4円(上場後に5分割実施)から18年1月に2418円まで13.6倍まで上昇。
典型的なテンバガー銘柄となりました。
その後18年12月の安値414円(その後の高値1299円)、22年9月の安値447円を経て本年9月の高値1914円とダイナミックな展開を見せてきました。
2.セレンディップ(7318)
時価1540円 2021年6月IPO
公開初値1656円(時価総額72億円)
事業承継を契機に中小モノづくりメーカー等を買収し長期保有しながら成長を図るビジネスを展開。ファンドを活用した買収と自己資金によるM&Aを駆使して成長を図る。
10月23日に連結売上高111億円、営業利益8億円規模の樹脂成型モノづくり企業、エクセルグループの株式取得を発表。事業シナジーの発揮を見込んでおり、事業スケールが一段と拡大する見通し。
同社の22年3月期売上高は138億円、営業利益1.9億円でしたが、前期は売上高198億円、営業利益4.8億円に急拡大。
今期は更に売上高218億円、営業利益8億円を見込んでいましたが、このM&Aによって更に年商300億円に事業規模が拡大すると見られます。
同社の中計では複数の企業を今後もM&Aしながら27年3月期売上高500億円、営業利益25億円を目標にしており、今後も株価上昇の可能性を秘めています。
株価は21年6月のIPO時に1753円の高値を付けた後、22年6月に一旦655円まで下落しましたがその後本年3月の高値2414円まで3.7倍になりました。本年8月にはまた1043円まで調整していますが今回のM&Aによって再び株価の上昇傾向が見られ、直近は1625円まで戻っています。
時価総額は70億円と公開時の72億円を依然として下回っており、再浮上の兆しが出ています。
3.日創プロニティ(3440)
時価858円 19年7月に東証スタンダード(2部)上場。
2013年から3年間にFIT制度で生まれたソーラー架台販売によって得られた利益50億円を用いてM&A型の成長にシフト。自社工場設備と後継者難のモノづくり企業を対象にM&A投資で中長期で業績を拡大させていくとしています。
2016年8月期から始まった中計では第1次で売上規3社をM&A。売上規模は43億円から85億円になりましたが、2次ではM&Aがゼロで売上が75億円に停滞しましたが、前期までの第3次中計では7件のM&Aを実施。
過去最大規模の年商50億円のタイルメーカー、ニッタイ工業のM&Aもあり、売上規模が73億円から177億円、営業利益規模が3.6億円から12.8億円へと大きく伸びてきました。
9月からスタートした第4次でもすでに年商27億円の優良企業をM&Aでグループ化。初年度は売上高202億円を見込んでいます。
上記の2社に比べるとまだ穏健な印象がありますが過去のM&Aによってノウハウを蓄積しており、PMIによる経営の見える化を図るとしています。
前2社が無配なのに対し、同社は今期30円(前期は35円)配当を実施の予定。利益を還元しながら着実にM&Aによる事業拡大を図っていく考えです。
グループ内のモノづくり企業同士の交流で新たな製品も開発されており、シナジー効果による事業規模拡大も期待されます。
こうしたM&A型の成長期待から株価は一定のリズムで右肩上がりを続けており、時価は858円。時価総額は56億円余りですのでまだ今後の成長性を織り込んでいない水準と言えます。
(炎)
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