72の法則
資産運用の世界には『72の法則』という教えがあります。
15世紀のイタリアで発見された法則ですが、資産運用において元本(=投資の元金)が2倍になるために必要な『利回り』と『年数』が簡単に計算できる法則です。
72を『1年間の金利』で割ると、その金利を複利で投資し続けると何年で最初に預けた元金が2倍になるかが計算できます。
いまでは夢のような金利ですが、私が社会人になったころの1年定期預金の金利は5%もありました。
72を5で割ると14.4です。すなわち14.4年たつと元金が2倍になります。100万円を預けて、利息を預けたままで複利で預けっぱなしにしていると14.4年で200万円になるわけです。ただ税金は無視しての数字です。
さて、いま現在の1年定期預金や定期貯金の利息の金利は0.025%です。
この利息で預け続けて元金が2倍になるには何年かかるのでしょうか。
72÷0.025=2880
2880年もかかります。
聖母マリア様からキリスト様が生まれた西暦1年に0.025%の金利で定期預金をしたとしても、2016年のいまになっても元金は2倍にはなりません。
元本が保証されているからということで定期預金や定期貯金に預けていたのではインフレがきてしまうと、瞬く間に購買力が目減りしてしまいます。
いま日本銀行が目指しているのは年間2%のインフレです。この達成はなかなか難しくて達成できるかどうか分からない状態です。しかし1%のインフレなら十分に可能です。
1%のインフレだとお金の購買力がどれほど減ってしまうのかも『72の法則』で簡単に計算できます。
72を1で割ると72年になります。つまり72年間でお金の購買力は2分の1に減ってしまいます。
もし日銀のインフレ目標である2%が達成できると36年でお金の価値が半分に減ってしまいます。ただこれくらいならそれほど大きくは感じません。
しかし私が社会人になったころの定期預金の金利は5%ありましたが、インフレ率はもっと大きかったのです。
もしも私が社会人になったころの5%のインフレが襲ってきたら、
72÷5=14.4年でお金の価値が半分に減ってしまうことになります。これはかなり怖いことだと思います。
じゃあどうするかということで、私は30年間のあいだ株式投資を行ってきました。アベノミクス相場がスタートして、ここ数年は良い思いが出来たのですが2016年に入ってから暴落相場がやってきて、みるみる株価は下げていきました。
そのおかげで日本の企業の配当利回りは大きく上昇しました。日本では優待が人気になっており100株だけ投資すると配当と優待の合計利回りで軽く5%を超えるような高配当優待利回り株が、いくらでも見つかるようになりました。
いまから株式投資をスタートする人は、本当にラッキーな状態だと考えることもできると思います。
私のような何十年も株式投資を続けてきた人は、株価の暴落で酷い目にあっていますが、それでも根性を入れて株式投資を続けているのは、東日本大震災直後の福島第一原発の大事故のあとの暴落から、日本株は大きく戻していることを経験してきたからです。
過去において起こった多くの大暴落のあとでも、世界中の株価は復活して戻していることも知っておくべき知識だと思います。
しかしやみくもに株式投資をスタートすると、直ぐに挫折して、損をして株式投資から逃げ出す可能性も高くなります。そこで株式投資をスタートする前に知っておくべきことを、私は最近まとめ直しています。
これは有料メルマガのコラムに書いてきたようなことを整理して書き直しているものです。
今回はそのさわりをご紹介します。
〇株式投資を理解するために、いくつかの例をあげて説明してきましたがその一例です。
<株式投資は玉乗りに似ている>
株式投資は玉乗りと似ています。いい玉(=企業の株=銘柄)を捜して、その上に乗り、うまく転がしていくと雪だるまのようにどんどん膨らんでいきます。
ひびが入っていたり、爆弾が仕掛けられているような玉(=粉飾決算をして財務内容をごまかしているような企業)を選んでしまうと、玉の乗り手が大けがをします。これも大切です。
でも一番大切なのは、玉の乗り方、転がし方だと考えています。どんないい玉(=企業)を見つけても、転がし方を知らないと、乗り手がこけて玉はコロコロどこかに転がっていってしまいます。
その結果大けがをした投資家が残ることになるのです。株式投資で儲けるためにはこの玉の乗り方(欲と恐怖のコントロール方法や損切りのルールとか)を学ぶ必要があります。
株式投資という玉乗りは単に玉に乗るということではなく、欲と恐怖の錘を両端につけた長いさおでバランスを取りながら玉を転がしていくようなものです。
『欲』という錘と、『恐怖』という錘のバランスが取れていると玉に乗りやすいのですが、どちらかの錘が大きくなりすぎてしまうと、途端にバランスがくるって玉からコケて落ちてしまいケガをする可能性が高くなります。
「どちらの錘が大きすぎてもバランスがとりにくい」ことは一目瞭然です。
昔も今も、株価を動かす一番の要因は人間の『欲』と『恐怖』(=人間の心理)だと思うのです。
専業投資家は、このような重圧の上に毎月ごとに絶対に株で稼がないと生活できないという難しい課題を背負って投資をしているので、サラリーマン投資家より、よほど厳しい精神的負担を負うているわけですから、うらやましいと感じる対象ではありません。
このような重圧を受けて玉乗りをしていると、玉から落ちてしまう可能性が高まります。そう思っただけで相場観がくるったりします。だから株式投資をするならば、投資行動に負担になる重石は、なるべく無くしていくことも大事なことです。
だからこそ生活費は株式以外の方法で確保する必要があると考えています。
もちろん心の強い人はそんなことを考える必要は無いのでしょうが、普通に人は株式投資だけで生活していくという選択は難しいと考えています。
私も賃貸不動産や年金など、株式投資以外の生活費を稼ぐ手段を作り上げてきました。サラリーマンのほうがお給料という安定収入があるので株式投資という玉ころがしをする点では、専業投資家として株だけで生活していこうという人より圧倒的に有利です。
『サラリーマンを辞めて専業投資家になります。』というのは『体が弱いのでサラリーマンを辞めてプロボクサーになります。』というのと同じくらい無謀で危険な事だと考えています。
〇最後に、おまけのポジショントークです。
私が最近考えて実行している投資作戦を取り上げますね。
いま私は加賀電子の株を3月の配当35円を取るために買い増しています。
その理由です。
UKCホールディングスと加賀電子は今年の10月に企業統合をすると発表しています。どちらも非常に割安な企業ですが、今の時点でUKCホールディングスと加賀電子の事業統合について、いま時点ではどちらが割安で、どっちに投資したほうが得かということで考えて加賀電子を買い増すことに決めました。
http://www.nikkei.com/markets/ir/irftp/data/tdnr/tdnetg3/20151118/9lchaz/140120151118449819.pdf
どちらの企業も資産価値だけで考えても超のつくほどのバーゲン価格になってしまいました。
どちらを買っておいても、もうそろそろ戻りはじめるとは思うのですが、より得な方を買い増しておきたいと考えて比較を行いました。
UKCホールディングスと加賀電子の企業価値をいつものパターンで推測しました。
〇UKCホールディングスです。
UKCホールディングスの2016年3月期の第3四半期の決算短信
http://www.nikkei.com/markets/ir/irftp/data/tdnr/tdnetg3/20160129/9pnv3k/140120160129499376.pdf
現・預金212.3億円
+投資有価証券45.2億円
+受取手形及び売掛金811.1億円
+在庫205.4億円
―全部の負債790.9億円
=483.1億円。
土地は簿価0.8億円なのでここではゼロで評価しました。
<事業価値の推計>
2012年3月期からの4年間の経常利益の合計では266.1億円でした。
50.0億円⇒81.6億円⇒72.3億円⇒62.3億円
この平均額66.5億円(=266.1億円÷4)の5倍 332.5億円が事業価値と推計しました。
UKCホールディングスの企業価値は
資産価値483.1億円+事業価値332.5億円=815.6億円
3月4日時点のUKCホールディングスの株価2156円×(発行済み株式総数15,700,021株―自己株式2,838株)=338.4億円
時価総額338.4億円は、資産価値以下で、これから将来にかけて稼いでいく収益力をマイナス評価しているような数字です。
【参考】
〇2016年3月期の一株利益予想 267.55円
(9月までの実績199.59円)
〇9月末の一株純資産3666円。
加賀電子は4半期の決算短信に一株純資産を開示していないので比較のために9月末の一株純資産を使いました。
〇加賀電子
加賀電子の2016年3月期の第3四半期の決算短信
http://www.nikkei.com/markets/ir/irftp/data/tdnr/tdnetg3/20160202/9ps7ng/140120160201402268.pdf
現・預金227.9億円
+短期有価証券1.4億円
+投資有価証券67.9億円
+受取手形及び売掛金551.8億円
+在庫239.4億円
+土地簿価40.4億円
―全部の負債678.0億円
=450.8億円
土地の含み益は場所を特定できた加賀ハイテック(株)の大阪市中央区の大阪事務所と、マイクロソリューション(株)の山形事務所の土地を、近隣の公示地・基準地価格を時価として推計すると42億弱はありそうです。ここでは土地の含み益は加算しないでおきます。
加賀電子の本社は平成22年より以前から取得していますが、いつ取得したか分からなかったので土地の含み益は計算しませんでした。
<事業価値の推計>
2012年3月期からの経常利益の合計では179.9億円でした。
25.6億円⇒19.3億円⇒58.4億円⇒76.6億円
(加賀電子のほうが経常利益の伸び率が著しく高いです。2016年3月期の予想数字も77億円と伸びる予想です。
第3四半期時点の経常利益の実績は64.42億円なので進捗率は83.66%と高く、業績上方修正の可能性は高いと思います。)
この平均額45.0億円(=179.9億円÷4)の5倍 224.8億円を事業価値と推計しました。
加賀電子の企業価値は
資産価値450.8億円+事業価値224.8億円=675.6億円
加賀電子の時価総額は3月4日の株価1389円×(発行済み株式総数28,702,118株―自己株式446,681株)=392.5億円です。
加賀電子の時価総額392.5億円も資産価値以下で将来の収益をマイナス評価されたような数字です。
【参考】
〇2016年3月期の一株利益予想 176.96円
(9月までの実績154.73円)
〇9月末の一株純資産2155円。
今の時点では、企業統合がないとすると単純計算ではUKCホールディングスのほうが割安な感じです。
ただ経常利益の伸びは加賀電子のほうが明確に高いので、そう考えると加賀電子の事業価値のほうが高く評価してもよさそうです。
土地の含み益を勘案しても、加賀電子のほうを高く評価してもよさそうです。
加賀電子とUKCホールディングスの統合比率が土地の含み益を勘案しないで単純に現在の一株純資産で決定ならばUKCホールディングス『1』、加賀電子『0.6』程度になります。
この統合比率ではUKCホールディングスの株価2156円×0.6=1293.6円で、UKCホールディングスのほうが割安ということになります。
しかし土地の含み益や、経常利益の伸び率を勘案してUKCホールディングス『1』、加賀電子『0.7』の統合比率でも充分に納得性のある比率です。
この統合比率だとUKCホールディングスの2156円×0.7=1509.2円で、加賀電子のほうが割安ということになります。
私の結論としては2月2日に期末配当を20円から35円に増配するIRをだした加賀電子のほうが圧倒的に配当利回りが高いので加賀電子を買っておいた方が得だと判断しました。(⇔UKCホールディングスの3月末配当は25円です)
http://www.nikkei.com/markets/ir/irftp/data/tdnr/tdnetg3/20160202/9pjivv/140120160127496923.pdf
統合によって加賀電子の株価が現在程度で推移すると統合会社には200億円前後、土地の含み益を評価しなおすと240億円くらいの負ののれん代が加算さます。
UKCホールディングスの2016年9月期の決算説明資料を見ると先進運転支援システム(ADAS)というテーマがあります。
・2016年9月期の決算説明資料
http://www.ukcgroup.com/ir/wmv/201511/ukchd_2016_2q_setsumeikai.pdf
『〇京セラ製レシーバー/スピーカーは中国スマホメーカーやTVメーカーと商談中
〇nADAS向けのソニー製イメージセンサーは、日本においてTier1/2メーカー等数社と、また韓国においても商談中。17年度以降の大型商談決定。リア、全方位、車内監視用等に商談拡大中。
〇イメージセンサー、液晶パネル以外の自動車向けの商材の発掘、プレマーケティングを加速中
〇パワーマネジメント系で採用等、進捗あり
〇産業/通信機器向け光通信デバイス、産業用レーザーを製品群に追加 nTransphorm社GaNパワー半導体はパワーコンディショナー向けに販売中
〇その他、インバーター、サーバー/TV/白物電源向け等に紹介・拡販活動中(日本、アジア)
〇ウェアラブルビジネスは、スポーツ用途、業務用途向けに商談推進中(16年度より売上寄与)』
(以上で引用を終わります。)
統合後の新生UKCホールディングスの株価が業績や相場テーマの支援でリバウンドしていけば、たとえ『1対0.6』の統合比率になったとしても旧加賀電子の株価もかなり上げていくと考えて皮算用しました。
最近はさくらインターネットやマネーパートナーズのようなIT銘柄の一角で暴騰するような企業がでています。
UKCホールディングスも隠れたIT銘柄(またはモノのインターネット銘柄)の一種です。
UKCホールディングスは2014年に暴騰したDMPに暴騰直前に出資しました。
DMPの2年間の株価のチャートです。
http://www.nikkei.com/markets/company/chart/chart.aspx?scode=3652&ba=1&type=2year
DMPの2015年10月29日のIRです。
『当社は、このたび平成24年度より開始した次世代LSIの開発を完了し、平成27年10月9日開催の取締役会において、2D/3DグラフィックスLSI「VF2」として製品化を行うことを決定いたしましたので、お知らせいたします。』
(以上で引用を終わります。)
DMPは、まだ赤字です。
UKCホールディングスの2014年5月9日のIRです。
http://www.ukcgroup.com/news/1404-1503/140509_gyomushihonteikei.pdf
株価586円で40万株(出資比率15.33%)
その直後のDMPの株価の暴騰の9000円で売り抜けられたら大儲けでしたが、そんなことはできないですよね(爆笑)。
いまでもUKCホールディングスはDMPの筆頭株主です。まあ、いまでも増資に応じた価格の4倍近い価格でDMPの株価は推移していますから、利益が出ていることは間違いないです。
これから自動運転支援システムを売っていく時に、DMPの製品は大きな支援材料になると考えています。
UKCホールディングスと合併する加賀電子は、製造子会社を多く持っているので、更に有利なシナジー効果も期待できそうです。私は無配で赤字のDMPに投資する気持ちにはなれませんが、配当利回りの高い加賀電子に投資して、夢を共有したいと考えています。
図々しいかもしれませんが、一番高配当利回りの加賀電子を買って、配当をもらいつつ大きな夢を見たいと考えています。
DMPのIRを確認していると2016年1月にもルネサステクノロジーの製品に採用されたようです。
http://www.dmprof.com/news/category/customer_success/
『DMPの2DベクターグラフィックスIPコア「SMAPH-F」が ルネサスのOA機器向けLSIに採用
株式会社ディジタルメディアプロフェッショナル(本社:東京都中野区、東証マザーズ:証券コード3652、代表取締役CEO山本達夫、以下DMP)は、グラフィックスIPコア「SMAPH-F」が、ルネサスエレクトロニクス株式会社(本社:東京都江東区、東証1部:証券コード6723、代表取締役会長兼CEO鶴丸哲哉)のOA機器向けLSIに採用されたことを発表します。
DMPのSMAPH-Fは、グラフィックスAPIの仕様策定を行うKhronosグループが規格化した2Dベクターグラフィックス「OpenVG1.1」をサポートしたIPコアです。シリコンサイズが小さく且つ業界最高最高クラスのサイズあたりの描画性能を誇り、民生用途から産業用途まで様々なアプリケーションで採用実績がございます。』
(以上で引用を終わります)
http://www.dmprof.com/news/2016/5768/
経済的独立ワクワク!サポーター 石川臨太郎
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