石川臨太郎の「生涯パートナー銘柄の研究」日本特殊塗料(4619) 2016/08/16
※企業情報や数字等は当時のものです。またリンク先の変更によりリンク切れの場合があります。あらかじめご了承の上お読みください。
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石川臨太郎の「生涯パートナー銘柄の研究」
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◆Contents◆
◇銘柄研究 日本特殊塗料(4619)
◇コラム 短期の株価の動きに惑わされず利益を上げ続ける企業に注目
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◇銘柄研究 日本特殊塗料(4619)
本日は、1929年(昭和4年)創業の日本特殊塗料を研究銘柄として取り
上げます。
日本特殊塗料は、長年航空機用塗料の研究を続けてきた仲西他七氏によって、日本特殊塗料合資会社として設立されました。航空機用塗料は強い紫外線や急激な温度変化、激しい風圧や空気摩擦といった厳しい環境から機体をまもるため、特殊な機能が要求されます。
日本特殊塗料は、1929(昭和4)年にこの航空機用塗料の開発からスタートして87年の間、その技術を基盤に、さまざまな塗料=色を生み出してきました。
日本の航空関係者の夢であった、国産初のジェット旅客機であるMRJ(=
三菱リージョナルジェット)の開発が進んでいます。日本の航空会社によるボーイング社の新鋭機の導入も進んでいます。航空機関連の企業が投資テーマとなる可能性も高いです。
本日、日本特殊塗料を研究銘柄とした最大の理由は、8月10日に発表され
た2017年3月期第1四半期の業績が非常によく、年初の強気の業績予想が、今後さらに上方修正される可能性が高いと期待できるためです。
日本特殊塗料は、2017年3月期の年初の業績予想が良かったために、株
価が上昇し始めましたが、その後円高が進んで業績が悪化すると考えられたからか、株価が大きく下げてしまいました。
日本特殊塗料の株価のチャートです。
http://www.nikkei.com/markets/company/chart/?type=3month&scode=4619&ba=1&n_cid=DSMMAA13
しかし、8月9日の13時に発表された第1四半期の決算短信で、第1四半
期の純利益が前期比91.9%(=一株利益だと77.01円。前年同期は40.13円)の大きな増益であり、年初の通期一株利益業績予想の180.91円に対する進捗率が42.5%と非常に高かったために、株価がリバウンドをスタートしました。
日本特殊塗料は、常に前期比で減益の控えめな年初の業績予想を繰り返して
きた企業なので、2017年3月期の年初予想が一株利益で僅かながらも前期比で増益予想だったために、今年は従来の方針を変えて保守的予想を変更したが、円高で逆に予想にとどかないのではないかという不安があったことが、株価が下げてしまった要因だと思われます。
しかし第1四半期の業績を確認して、今年も保守的予想だったことから、更
に業績が伸びると考えることができるようになりました。
株価は少し上げたとはいえ、まだ株価は業績から考えると非常に安い水準で
す。今後の株価の回復を期待したことが研究銘柄とした一番の理由です。
塗装業界の組合である関東塗装工業組合のホームページを見ると、船舶用、
航空機用、鉄道車両用に使用される塗料メーカーの紹介がなされていますが、航空機用には日本特殊塗料の名前しかありません。鉄道車両用には日本特殊塗料の名前もでています。
http://www.kantoko.com/main/?page_id=318
航空会社の顔ともいえる航空機のデザインは、航空機用の塗料で描かれてい
ます。最近では、さまざまなデザインが施された飛行機が登場し、空港をより華やかにしています。
この航空機の塗装は航空会社の顔以外にも、機体表面を保護するという役割
があります。飛行機は時速約900キロメートルという高速で上空を飛行するので、紫外線や塵(ちり)、雨、雹(ひょう)などによって、常に過酷な状況にさらされています。また、気圧が下がる上空では機体が膨張してしまいますが、機内の気圧は低くならないように与圧しているので、機体の表面は飛行を繰り返すたびに伸縮してしまいます。従って航空機の塗装には、気圧の変化に対応できるような柔軟性があり、しかも、見た目にも美しい光沢がある材料が求められます。
新しいデザインで航空機を塗装することもありますが、同じデザインのまま
でも数年(=4~5年に一度といわれています)に一度は再塗装されます。日本航空の場合は、5年に一度再塗装されているということです。
飛行機の塗装は、アルミ合金の外板に施されるのでそのままでは塗装が付き
にくく、プライマーと呼ばれる下地を塗ってから、表面に光沢ある塗料(トップコート)を塗る2段階の塗り方をします。
使用する塗料の量は、ボーイング747型機で約600リットル=ドラム缶
3本分になると言われています。
日本特殊塗料のホームページを確認すると、日本航空、全日空、エア・ドウ、スカイマークエアラインズ、三菱重工業の「MU-300」、航空自衛隊の「ブルーインパルス」、政府専用機、宇宙開発事業団のロケットなどに日本特殊塗料の塗料が使われていることが分かります。
http://www.nttoryo.co.jp/division/paints/index.html
日本航空機開発協会の航空機需要予想を確認すると、航空機の需要は今後増
え続けることが分かります。
〇日本航空機開発協会が2016年3月に発表した今後の航空機需要予想
http://www.jadc.jp/files/topics/109_ext_01_0.pdf
上記の資料から引用させていただきます。
(以上で引用を終わります。)
また、日本特殊塗料の業績が伸びているのは、航空機用塗料分野の好調ばか
りが理由ではありません。
日本特殊塗料は航空機塗料だけではなく、1953年に画期的な自動車用防
音・防錆塗料「ニットク・アンダーシール」を開発して以来半世紀がたちました。
日本特殊塗料は、防音材=音の世界の研究に力を注ぎ、その製品は日本国内
のすべての自動車メーカーに採用されるに至り、その生産の場を北米やアジアに広げています。現在では、航空機などより圧倒的に生産量が大きい自動車用製品で、業績を伸ばしています。
「色の世界と音の世界」。塗料メーカーとして、未知の分野に挑戦し、社会
に貢献する。これが、日本特殊塗料の社是「創意工夫」が目指すところです。
日本特殊塗料の最初の製品は、航空機用塗料「T・T(テー・テー)金属用
塗料」でした。航空機の機体の金属化にともない、T・T金属用塗料は陸海軍に採用され、その後も次々と新製品を開発しました。
第二次世界大戦の終結により、航空機の製造も全面的に禁止されたため、日
本特殊塗料は一時休業の状況にまで追い込まれました。再建の目処が立ったのは、1951年に発売したセメント瓦用塗料「スレコート」と、1953年の自動車用防音・防錆塗料「ニットク・アンダーシール」が順調な売れ行きをみせてからでした。
日本特殊塗料は、「スレコート」により、一般塗料のメーカー、すなわち、
“色のニットク”として再出発し、航空機用塗料で培った技術をもとに、建築
市場向けのさまざまな塗料の開発を続けました。その技術は、1966(昭和41)年の屋根用塗膜防水材「プルーフロン」をはじめ、1973年の塗り床材・舗装材「ユータック」シリーズ、さらに、塗料における“技術のニットク”を印象づけた、1983年開発の超高弾性壁面防水化粧材「ハイプルーフ」など、防水材や塗り床材、内・外装材といった幅広い分野で実を結びました。これらの塗料は、建造物を美しく彩ると同時に、保護するという機能をもつ特殊な“色”でもありました。
塗料は、塗膜となることで初めて品質を発揮します。その品質の保持を目的
に、1984年、全国各地の有力な施工業者・販売店で責任・施工システムの「全国ハイプルーフ連合会」を結成。1994(平成6)年には「ニットク・アメニティシステム連合会」に改称し、日本特殊塗料の全製品を扱うこととなりました。また、1995年には、日本特殊塗料の特約店組織である各地の「日特会」を総結集した「全国日特会」が発足。“色のニットク”の品質は、技術力だけではなく、これらの多くの会員の協力により支えられ、今日に至っています。
もう一つの日本特殊塗料の成長の柱が、1953年に開発した自動車用防音
・防錆塗料「ニットク・アンダーシール」です。この製品は塗装することで防音効果を発揮する画期的な防音塗料です。日本特殊塗料は、この製品により、防音材メーカーとしての第一歩を踏み出しました。自動車用防音塗料が国産化されていなかった当時、ニットク・アンダーシールは日本国内の各自動車メーカーに急速に認められ、鉄道車両にも採用されました。
それからおよそ10年後。高度経済成長期のまっただ中で、ニットク・アン
ダーシールの開発技術をもとに、まったく新しい防音材を生み出しました。それが、1964年に上市した自動車用制振材「メルシート」です。走行時の車体フロアの振動を抑え、騒音を減少させるメルシートは、製品として画期的なものであったと同時に、日本特殊塗料の業態を大きく変化させました。“色のニットク”とともに、防錆・防音材メーカー、すなわち“音のニットク”としても本格的に歩み始めることになったのです。
塗料メーカーという枠組を超え、未知の分野の技術開発に挑戦する。その成
果がニットク・アンダーシールとメルシートであり、この2つの製品で培われた防音技術は、以後、各種の自動車用吸・遮音材や建築・構築物用防音材「イーディケル」および「防音くん」シリーズ、家電・OA機器用防音材、さらには鉄道車両用防音材を生み出し、今日の“音のニットク”を支えています。
<日本特殊塗料の業績の推移>
日本特殊塗料の経常利益の推移は以下の通りです。
2011年3月期 1643百万円
2012年3月期 1647百万円
2013年3月期 1805百万円
2014年3月期 3328百万円
2015年3月期 4036百万円
2016年3月期 5534百万円
2017年3月期予5300百万円
純利益(カッコ内は一株利益)を続いて確認します。
2011年3月期 1211百万円( 54.78円)
2012年3月期 1389百万円( 62.85円)
2013年3月期 1543百万円( 69.80円)
2014年3月期 2712百万円(122.69円)
2015年3月期 3029百万円(137.00円)
2016年3月期 3966百万円(179.37円)
2017年3月期予 4000百万円(180.91円)
続いて、本日の研究銘柄として日本特殊塗料を選んだ理由を更に詳しく説明
します。
1.日本特殊塗料は、年初に前期比減益の予想を発表して、1年の間に何度も業績上方修正を行う企業でした。
上記で確認したように、日本特殊塗料は着実に収益力を上げてきていますが、年初には常に保守的な、前期より減益の業績予想を発表しますが、ここ数年では、その業績予想は最終的には大きく上方修正されます。
前期の2016年3月期に関しては、2015年5月4日に発表された日本
特殊塗料の当初の業績予想も、次のように前期比減益の予想になっていました。しかし実際は大きな増益を達成しました。
2016年3月期の当初予想
経常利益 3300百万円
純利益 2500百万円
一株利益 113.07円
2016年3月期の実績
経常利益 5534百万円
純利益 3966百万円
一株利益 179.37円
〇日本特殊塗料の過去における年初の業績予想と実績の比較。
2011年3月期
当初予想一株利益 22.6円→実績 54.78円
2012年3月期
当初予想一株利益 東日本大震災のため当初発表せず→実績 62.85円
2013年3月期
当初予想一株利益 45.23円→実績 69.80円
2014年3月期
当初予想一株利益 63.31円→実績 122.69円
2015年3月期
当初予想一株利益 76.88円→実績 137.00円
日本特殊塗料の過去9回(⇔2015年3月期から連続)の、各四半期ごと
の一株利益を確認すると、各期とも安定的に増加していることが分かります。
日本特殊塗料の場合は、保守的予想を出してくるので、四半期ごとの数字から自分で増益率を予想することが有効だと考えています。
2015年3月期の各四半期の一株利益実績
第1四半期 25.41円
第2四半期 37.55円
第3四半期 35.24円
第4四半期 38.80円
2016年3月期の各四半期の一株利益の実績
第1四半期 40.13円
第2四半期 44.09円
第3四半期 53.73円
第4四半期 41.42円
2017年3月期の各四半期の一株利益の実績
第1四半期 77.01円
注)この第1四半期の経常利益の中には、米国関連会社における固定資産売却益9.6億円が含まれています。固定資産売却益は一時的な利益ですが、円高が進んで為替差損が生じることに対する収益の下支え要因になります。
第1四半期だけで2.19億円の為替差損が発生しています。このまま円高状態が続くとすると2.19億円の4倍の8.56億円の為替差損が生じるリスクがあります。為替差損も、その年の為替の動きで生じる一時的な損失です。為替の動きで生じる為替差損は損としてとらえて、固定資産売却益は除外して考えるというのも企業価値を適正に評価する妨げになると考えて、中立要因と判断したいと思います。
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