飛躍の入口に立つ銘柄探し
日本の株式市場では3800余りの企業が上場し発行した株式が日々取引されていることは誰しもわかる現実である。それら銘柄の時価総額(発行済み株式数×株価)の合計は750兆円もの規模となりGDPを上回る水準となっている。
大から小まで、莫大な利益を上げている企業から赤字に甘んじている企業まで様々な銘柄が株式市場には上場して多かれ少なかれ皆さんの関心を集めている点も理解できるかと思う。
そうした株式市場ではいよいよ東証による市場改革が進められようとしている。簡単に言えば6月末のデータを基準にした線引きが行われようとしており、いよいよその基準日が目前に迫っている。
時価総額250億円以上で流通時価総額100億円以上がプライム市場、それに及ばない東証1部、東証2部、JASDAQスタンダード銘柄はスタンダード市場、更にはマザーズ銘柄やJASDAQグロース銘柄はグロース市場に移行することなるが、微妙なのはその3つの区分のボーダーラインに位置している銘柄である。
市場改革によって東証は外国人投資家を呼び込もうとしているようだが、ボーダーラインの企業にとっては上の市場に残れるかどうかで評価が分かれることとなり、それに対する準備や努力が必要となる。
先日開催された時価総額が210億円前後に位置している東証1部上場のIT企業の株主総会ではプライム市場に残るのか否かが株主から問われたが、即座にプライムに向かうための準備をしているとの回答が担当の役員から返ってきた。
この結果なのかどうかは不明だが、その後やや低迷気味だった株価は上昇傾向に入ってきた。
また時価総額120億円の東証1部企業で開催された決算説明会でもアナリストからプライム市場への移行を考えているかどうか問われた経営トップから「当然考えている。でないとグローバルな展開を図っている意味がない。」とずばりの回答が返ってきた。この場合、時価総額を250億円とするには相当の株価上昇が求められるのだが、現状の成長シナリオ、DXへの取り組み等から単純な業績への評価に加えて今後の成長へのプレミアムがつく必要がある。
また、一定期間内において成長資金を取り込むための新たな株式発行なども含めたより実践的な成長への取り組みが求められることは言うまでもない。
企業にとっては市場改革をチャンスとして捉えてポジティブな取り組みを行うかどうかがポイントと言える。
プライムを指向するマザーズ銘柄にも今後2年程度の一定期間内においてプレミアムがつくような事業活動をダイナミックな展開を実行しようとする企業も存在する。熊本を拠点に全国展開を図ろうとしているLib Work(1431)はその典型だろう。
住宅×ITを実践しWEBによる集客や、YouTubeの活用、様々な関連サイト構築など極めてアグレッシブな取り組みを図っており、その結果としての時価総額の目標もここから2年ほどの期間で500億円に置いている。
一方で、上場廃止基準に抵触する企業も何らかの対応が求められている。
例えば東証1部銘柄では株主数が400人未満で時価総額10億円未満、流通時価総額5億円未満の企業で2期連続の債務超過となっている企業には上場廃止が待ち受けている。
これらをクリアしても指定替えされる可能性もあり、より一層の厳しい線引きが予想される。
それぞれの3市場ごとに新たな区分をめぐる企業努力が求められ、結果として株式市場に上場する企業をめぐって様?々な思惑が浮上する可能性が出てくる。
切り捨てられる企業の受け皿となるのは東証が運営する特定投資家向け東京プロマーケットとなるが、ここには地方の有力企業も含めて、数多くの企業が門前列をなし始めていると推察される。
もう間もなく始まる東証市場改革の流れは株式市場にとって吉と出るか凶と出るか、投資家の皆さんにはどう映っているのだろうか。
少なくともこうした市場改革をバネに飛躍を図ろうとする企業も登場し活性化するのであれば大いに歓迎すべきであろう。これからの株式相場にとって決してネガティブな要因とはならないと考えておきたい。
(炎)
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